6月8日に開かれた日本将棋連盟の通常総会
公益社団法人・日本将棋連盟の通常総会が6月8日に「けんぽプラザ」(東京・将棋会館の隣)3階で開かれ、東西の正会員(現役棋士・引退棋士・女流棋士)が出席しました。人数は委任状を含めて約180人でした。
冒頭で連盟会長の佐藤康光九段が挨拶した後、塚田泰明九段を議長、畠山鎮七段を副議長に指名し、拍手をもって承認されました。
恒例の新会員紹介では、斎藤明日斗四段、長谷部浩平四段、池永天志四段の3人(古森悠太四段は所用で欠席)が出席者たちの前に立ち並び、簡単に自己紹介しました。最後に何か一言を語ったのですが、今年はそれぞれがとてもユニークでした。
斎藤四段は「私がアマ三段の頃、師匠(宮田利男八段)と六枚落ちの手合いで指すことになったとき、負けるわけがないと思って《負けたら1億円あげます》と言ったら、師匠の目の色が変わってボコボコに負かされました(場内爆笑)」と語りました。
私は、若手棋士時代から同世代の宮田八段を知っていますが、駒落ちの上手はかなり強かったです。まあ斎藤四段は、1億円は何十年後かの「出世払い」にするといいでしょう。
長谷部四段は「私は《新手一生》の言葉で知られる升田幸三先生(実力制第四代名人)の直系の弟子であることを誇りに思っています。私には新しい手は指せませんが、自分の信じる一手で頑張ります」と語りました。
長谷部四段の師匠は大平武洋六段。その師匠は、升田門下の桐谷広人七段。それにしても、「新手一生」を語呂合わせで「信手一生」と言ったのは面白かったです。
池永四段は「奨励会に長くおりましたが(11年半)、これからは天使の跳躍で、歩の餌食にならないように頑張ります」と語りました。
中原誠十六世名人は桂を跳ねて攻めに使うのが巧みで、それは「天使の跳躍」と形容されました。池永四段は、自分の名前の「天志」を語呂合わせで「天使」と言いました。なお、実際の呼び名は「たかし」です。
昨年の通常総会は、「スマホ不正使用疑惑」の問題が尾を引いていて、重苦しい雰囲気が漂っていました。しかし今年の総会は、藤井聡太七段が昨年から大活躍したことで将棋ブームが巻き起こり、その好影響によって各部門の業績が好調でした。そんなわけで、穏やかな雰囲気で議事が進みました。
最後に、理事会から「会館建設準備会」が発足することが報告されました。そして、委員長に羽生善治竜王、委員に久保利明王将、糸谷哲郎八段、中村太地王座が就きました。
現在の東京の将棋会館は42年前の1976年(昭和51年)、関西将棋会館は37年前の1981年(昭和56年)に建設されました。両会館ともメンテナンスに努めているので、築年数の割りにはしっかりしています。しかし、いずれ建て直す時期がきます。それには多額の建設資金が必要です。そんな難題にどのように取り組むのか…。次回のテーマにします。
| 固定リンク
「裏話」カテゴリの記事
- 6月8日に開かれた日本将棋連盟の通常総会(2018.06.19)
- 5月29日の日本将棋連盟の通常総会で報告された三浦九段の冤罪問題の後始末(2017.06.06)
- 4月27日の連盟理事予備選挙で佐藤九段、森内九段、清水女流六段など7人が内定(2017.04.28)
- 田丸が三浦九段と半年ぶりに再会。将棋連盟の理事選挙での立候補者たちの公約(2017.04.21)
- 将棋連盟の理事制度と理事選挙について(2017.03.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
田丸先生。お久しぶりです!
ブログの更新有難うございます。
今の新人は面白いですね(^-^)
挨拶は前々から準備していらっしゃるのでしょうか?
将棋会館の建設は大変そうです、将棋界に順風が吹いている今こその決断なのだと思います。
一ファンとして楽しみにしております。
投稿: フライドポテト | 2018年6月20日 (水) 14時24分
田丸先生いつもお疲れ様です。
報道では分からない連盟の空気など、情報だけでなく様々なことをお伝えいただけるのはファンとして大変嬉しく思います。
投稿: ずん子 | 2018年6月22日 (金) 19時37分
新会館は、将棋ブームが続いているうちに、寄付金集めるだけ集めたほうがいいですね。建設はあとになっても。
前回は大山15世が頑張りましたが、今回は羽生19世大変でしょうけど頑張ってください。
投稿: Lemon | 2018年7月 6日 (金) 23時30分
新会館建設資金調達ですね。羽生さんが委員長ですか?佐藤会長はどうしたのですか?会長さんが総責任者から逃げていてはダメですね。羽生さん人気だよりでしょうが、佐藤さんも勲章貰っているのですから頑張らないとね。あとは免状の乱売(これは助かります!)でしょう。イベントに力を入れて少しづつでもという精神が必要ですね。企業頼みも恒例ですね。企業の会長らには六段、七段、八段をガンガン発行してください。共通として連署欄に一名追加か8人のタイトルホルダーの署名を入れることもいいのではないでしょうか。特別記念免状ですね。寄付金が沢山集まりますように!渡辺棋王、久保王将と何名か尻馬に乗ったとんでも棋士が二度と過ちやごたごたがおきませんように、連盟ご一同様、藤井壮太先生に感謝してください。
投稿: 千葉霞 | 2018年8月13日 (月) 14時33分
田丸先生!ブログの更新やや遅いな?頑張ってください。
投稿: 田舎棋士 | 2018年8月13日 (月) 14時35分
私の世代で(60代)で将棋会館の建て替えがまた見られるとは思ってもみなかったです。大山先生の奮闘で(連盟の皆さんも)建て替えがあったのがついこの間のようです。コンクリート建物は意外と持たないものですね。もともと一般的には50年といわれてきましたから仕方がありません。耐震基準もより厳しくなって大変です。鉄骨を組んで、パネルを組んでいく方が頑強にできるのではないでしょうか。コンクリートパネルは工場生産でしょうからコンクリの乾燥具合もよさそうです。今の会館より高層階を増やしてはどうでしょう。いずれにしても資金の問題ですね。スポンサーも8大タイトルと称しているので10社はあるでしょうし、将棋関連企業(大小)もあり、ご相談ですね。あとはどなたかのご意見のように将棋イベントを地道に行い資金集め、次には奥の手の免状の発行を精力的に行うことでしょうか。その他将棋ファンからの寄付金も商品付きで募集することもいいのではないでしょうか?あと様々いいアイデアが出てくるといいですね。
投稿: 東京散歩人 | 2018年8月22日 (水) 18時19分
平成最後の暮れも迫ってきました。田丸先生にはいかが過ごされているのでしょうか?更新がありませんので気になりました。お忙しいのでしょう。
さて、将棋界も藤井7段の到来を待つかのように、かつての羽生さん到来の時もそうだったといわれています。8代タイトルを7人で持つという戦国時代さながら!羽生さんの時代が終わったわけではないのですが、一つ不満なことはあれだけ将棋界に貢献度大の羽生さんの一時的とはいえ「肩書」を九段とは?本人と相談の上とはいいますが?気の利かない佐藤会長ですね。あの大山名人も15世名人を名乗り現役としていました。なんとかならないのでしょうか?またもう一点ありました。名誉NHK杯選手権者は将棋手帳に載っていません。永世称号に準ずる形で連盟も表記するべきではないでしょうか?他のどの棋士も10期は確保していないのです。NHKを軽んじているのでしょうか?もっと言えば「国民のお金」でなっているNHKと認識すると疎かにはできないことになります。少額の賞金も国民(棋士も含)からのものなのです。ご一考ください。
投稿: 千葉霞 | 2018年12月30日 (日) 19時03分
田丸先生!更新してください!と一応書いておこう。さて、しばらく更新がないのでどうしておられるのか気になっています。執筆でお忙しいのでしょう。ところで、将棋界も大きく様変わりしてしまいました。羽生先生が九段の肩書になりました。自分からの希望だという話、佐藤会長や幹部連の中には「粋な」方が居られないのですね。といいますのも、大山先生は15世名人を現役で名乗っていました。恐らく自分からは肩書選びはできないでしょう。連盟の総意で当面は永世〇〇を名乗ってください。それで捲土重来を図ってもらうくらいはなさっていただきたかった!NHKさんあたりから頂いている名誉NHK杯選手権者なら現役のタイトル保持者と被らないように思えます。他の永世称号も被らないといえば被らないのですが、何とかならないものでしょうか???”先生、ご病気ではないでしょうね!”元気なブログをお願いします。
投稿: 田舎棋士 | 2019年1月 5日 (土) 19時22分