将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2016年9月28日 (水)

竜王戦の対局に勝って現役期間がもう少し延びました

私こと田丸昇九段は9月27日に竜王戦・昇級者決定戦で近藤誠也四段と対戦しました。

近藤四段は20歳の若手精鋭です。C級2組順位戦で4連勝していて、王将戦でリーグ入りしました(1989年の屋敷伸之四段以来、新四段として27年ぶり)。今期の勝率は8割を超えています。

一方の私は今年の4月で引退が内定していて、本局に敗れると引退が正式に決まります。誰が見ても、私が勝てる見込みはありません。それは自分自身がよくわかっています。ただ同じ負けるにしても、悔いのない将棋を指そうと心がけました。

私は矢倉模様から急戦調の指し方を採りました。1980年代に兄弟子の米長邦雄永世棋聖が用いて武器にした手法です。現代では「絶滅危惧種」の戦法で、用いる棋士はほとんどいません。私は20年ほど前から、自分なりの工夫を取り入れてよく指しています。引退がかかる本局はその戦法を用いました。

とにかく勝負は二の次です。華々しく散ろうと思って強気に攻め合いました。それが功を奏して中盤では互角に戦えました。そして終盤で鋭く踏み込んで一手勝ちを収めました。久しぶりに「突っ張り流」の技が冴えました。

本局に勝って現役期間がもう少し延びました。それにしても引退の内定から半年たったのに、いまだに現役棋士でいるのは不思議な感じです。将棋連盟のホームページに載っている公式戦記録の勝率部門では、トップの10割(2勝)です。

次の竜王戦の対局は、牧野光則五段―門倉啓太四段の勝者で、さらに勝つと竹内雄悟四段と5組昇級をかけて対局します。

いずれにしても、10月中には残る対局をすべて終えて引退となります。願わくば勝率10割で有終の美を飾れば、これ以上の喜びはありません。弟子の井出隼平四段の活躍(C級2組順位戦で3連勝、加古川青流戦で決勝進出)にあやかって、師匠も最後の踏ん張りを発揮したいと思っています。

9月から10月にかけて、執筆の仕事が立て込んでいます。そんなわけで、本格的なブログ記事の更新はもう少しお待ちください。

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コメント

田丸先生、会心の勝利ですね。携帯中継で応援しておりました。
有望若手に勝って、現役に未練を感じているのではないかと思いますが、残りの対局も頑張ってください。

投稿: ソフトバンクファン | 2016年9月28日 (水) 11時47分

田丸先生が昨日の竜王戦・近藤誠也四段戦で白星を挙げた対局を、携帯中継で拝見致しました。

20歳の若さで王将リーグに参戦する成績を上げた有望株の近藤四段を、僅か72手で撃破した棋譜は、拝見して心が晴れ晴れと致しました。

田丸昇・獅子丸・ロン毛丸・ライオン丸先生は、プロ棋士の鑑であり、将棋界の財産であり、貴重な知恵袋役でもあります。
そして、それは竜王戦を完了して引退してからも、ずっと変わらないままです。

次戦も若手との対局となりますが、田丸先生らしい棋譜を拝見できることが待ち遠しいばかりです。

投稿: 柳 | 2016年9月28日 (水) 18時31分

棋譜を拝見し若々しい激しい将棋に驚くとともに7月の上野五段戦に続く勝利、ベテランの活躍に嬉しく思います。
私が学生時代は急戦矢倉は流行し、タイトル戦のたびに「また矢倉か」と思ったものでしたが絶滅危惧種になっているとは驚きです。
残りの対局も是非今の若手がみたこともないような戦法で勝利して下さい。

投稿: こうめい | 2016年9月28日 (水) 21時52分

田丸先生!パチパチです。最新流行型よりは先生の最盛期の型を存分に使うべきですね。いいお手本を披露してください。連戦連勝で優勝でしょうか?決勝まで行くと最高ですね!

投稿: 千葉霞 | 2016年9月29日 (木) 16時01分

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