将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2016年8月 5日 (金)

引退が内定している田丸が竜王戦の対局で勝って現役棋士にとどまる

今年の春で引退が内定している私こと田丸昇九段は、ただひとつ勝ち残っている棋戦の竜王戦・6組昇級者決定戦において、7月29日に行われた3回戦の対局で上野裕和五段に勝ちました。その結果、現役棋士にもう少しとどまることができました。次の4回戦の対戦相手は新人の近藤誠也四段で、8月下旬に行われる予定です。

私は現役最後になりかねない上野五段との対局で、相居飛車系の5筋位取りの作戦を採りました。公式戦で何局も用いてきた「田丸オリジナル」の手法です。ほかの棋士が誰も指さないのは、内容的にまったく評価していないか、私が敗れてばかりだからでしょう。

私との対局で5筋位取りに2連敗していた上野五段(対戦成績は田丸の2勝1敗)は、銀を前線に進める積極的な指し方を採りました。事前に研究してきたようです。私が攻め合いに応じると、一転してお互いの攻め手を封じ合う展開となり、序盤の駒組手順に戻りました。その後、戦いが始まると一気に終盤の寄せ合いに突入しました。私は負け筋かと思っていましたが、上野五段に重大な見落としがあり、私が一手勝ちを収めました。

それにしても現役棋士としてすでに「死に体」なのに、まだ「存在」しているのは不思議な心境です。竜王戦で勝ち続けると(最多で3局)、最後の対局は10月頃になりそうです。田丸と今春に棋士になった井出隼平四段の師弟は同じ現役棋士だった、という期間を少しでも延ばしたいと思っています。

棋士の引退には、制度上の引退、本人の意思による任意引退、病気や死亡による引退のケースがあります。その中で制度上の引退は、順位戦でC級2組から降級したり、年齢制限に該当する例です。将棋界は4月を起点とする「年度」が基準になっていて、3月末日の時点で前記の事由に該当すると引退となります。5月生まれの私は昨年の3月末日の時点で64歳だったので、引退の内定が今年に延びました(フリークラス棋士は原則として65歳で引退)。

引退した棋士の最後の対局日を調べてみました。以前は大半の棋士が年度末の3月を区切りにして引退しました。その時点で勝ち残っている棋戦があった場合、引退棋士の対局は「不戦敗」としないで無勝負とし、将棋連盟は対局したとみなしてその相当額を支払ったようです。一方の対戦相手には「不戦勝」の記録が残ります。

1990年代後半の頃からは、引退が内定しても勝ち残っている棋戦の対局をすべて終えてから正式に引退する、現行の制度が定着しました。したがって正式な引退日は、棋士によって違います。

さらに数年前には、順位戦以外の棋戦の実績を反映した引退規定が新たに設けられました。竜王戦で5組以上に在籍しているなど、一定の実績を挙げている棋戦だけに出場できる規定です。それは順位戦でC級2組から降級した棋士が対象です。引退に該当していても、竜王戦だけは延々と出場している、という棋士がいずれ現れるかもしれません。なおその規定は、私のように自分の意思でフリークラスに転出した棋士には適用されません。

じつは今年の5月、佐瀬一門(田丸の師匠の一門)の棋士、私の家族、知り合いの将棋ファンなど、50人ほどが集まって私の「引退慰労会」を開いてくれました。結果的に棋士としての「生前葬」になった慰労会の模様は、引退が正式に決まったら、このブログでお伝えします。

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コメント

田丸先生勝利おめでとうございます!
現役生活が伸びたこと、嬉しく思います。
相手の見落としがあったかもしれませんが、勝ちきる力があるのなら
死に体などではないと思います。
これまでフリクラを宣言せずに順位戦で降級しそのまま引退なされた方も多い中、田丸先生は定年を迎えそれでも尚現役で指せるのは先生が
頑張って積み上げてきた実力があってこそで
今もなお立派なプロ棋士で格好良いです。
一日でも長い現役生活を送れるよう願っております。
次も頑張ってください

投稿: 流 | 2016年8月 7日 (日) 19時03分

私は、81Dojoでネット将棋を楽しむ将棋ファンです。(棋士は、羽生3冠、内藤ファン)
何十年振りかに指す将棋ですが、マナーの悪さに唖然とさせられます。
負けていても投了ができないのです。
(詰駒を取り、ガチンコ玉、2重連2歩、時間切れ、接続切り等の故意反則技を駆使します)
対局以外では、公開チャットへの汚い言葉や下品な書き込みがあり、情けないです。
※連盟HPで学校教育レポートに「日本の伝統的礼儀・作法やおもてなしの学習」とありますが、ネット将棋で有段者諸兄が、示している実情は、将棋が教育に役立つとは思えません。
現在の有段者に対し、マナー教育を最優先する必要性を感じています。

先の井山7冠の記事について、シリウス氏が挙げた井山7冠の実績を考慮すると「世界一」に至っていないとの表現は疑問であり、「それが羽生七冠と決定的に違うことです」という表現も変です。
(羽生3冠は、井山7冠を高く評価していました。流石にタイトルを奪取し、維持することの難儀さを熟知する名棋士と感服します)

囲碁ファンのシリウス氏VS田丸ファンの反論を読んでいますと、シリウス氏のコメントが的を得ており、論理的です。
シリウス氏は、諸々の罵倒に反論していませんが、3氏の方は感情的なだけで理性に欠けています。

日本固有の文化であり、礼節を重んじるのであれば「日本の伝統的礼儀・作法やおもてなしの学習」の手本となるべきコメントを期待します。
現役プロの管理者は、冷静で公平なジャッジが求められると考えるのですが、間違いでしょうか?

投稿: kasai | 2016年8月14日 (日) 09時05分

kasai某さんの「公開チャットへの汚い言葉や下品な書き込みがあり」は頷けます。タイトル戦でニコニコを見ているとうんざりすることばがおおいですね。囲碁もだったような気がしますが、何とかならないのかと思います。さて、それとは切り離してとお願いしたいのですが「連盟HPで学校教育レポートに「日本の伝統的礼儀・作法やおもてなしの学習」」は将棋での共通はあるもののここでのチャット問題とは少し違うように思え、いっしょくたにするべきではないのでは?コメント自体は将棋ファンを強調していますが、囲碁ファンが見え見えなところがちらほらしています。田丸先生も囲碁ファン氏へ反論はされていないのですから、忘れた頃に管理者は公平云々は「某氏」は何をいいたいのか、と思わざるをえません。中立ブルというのはどうも囲碁ファンだと主張しているように思えてかえって可笑しなコメントになっています。私も囲碁のファンでもあり、どちらが正しいかと気にはなりますが、所詮ファンなのです。究極を結論を求めるのはどうでしょうか。それぞれがそれが世界一、日本一と思うのはそれでいいのではないでしょうか。贔屓のコメントを批判するのはどうか、ここは田丸先生のブログなのだから、先生に賛同するのは大変結構と見ているのが大人でしょう。あえて理屈がどうのこうの、あれが正しいと決めつけはナンセンスです。他のファンからは何も言ってこないのだから、皆それはそれなりの意見と楽しまれているようですね。こういったブログでは勝ち負けを決めつけるのはやめたいものです。

投稿: 千葉霞 | 2016年8月17日 (水) 16時43分

kasaiさんはとびきりの囲碁ファンですな。井山さんを世界一ではないというのはどうか、シリウスさんがいうことが正論なり、こちらのブログファン3氏は感情的コメント過ぎている。さて、どうでしょうか?羽生さんは大人の対応でしょう。インタビューを受けて、称えるのは当然な対応です。kasai氏が喜んでいるくらいだから良かったのではないでしょうか。将棋ファン(アマ)は囲碁ファンも結構多いといわれています。どちらも「指す、打つ」も多いといわれています。ですから、誰が世界一とかは人それぞれでしょうが、あまりいいません。現実的には囲碁世界一は韓国か中国のプロの方でしょう。井山さんはそのレベルには近いでいいのではないでしょうか。囲碁も将棋も世界ゲームにまだ至っていないのも事実ではないでしょうか。プロが両者とも日本周辺に限られています。レドモンド九段くらいでしょうか、ヨーロッパ、アメリカ系は。囲碁、将棋、どちらも日本一でいいのではないでしょうか。ちなみに私は囲碁4段、将棋5段、当然アマです。強くはありません。将棋ブログ、田丸先生のブログを楽しみましょう。

投稿: 東京散歩人 | 2016年8月18日 (木) 16時05分

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