将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2016年5月23日 (月)

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

ブログの記事を2ヵ月ぶりに更新します。将棋界ではその間にいろいろなことがありました。順に追ってテーマにしていきます。

私は3月24日に竜王戦の6組ランキング戦3回戦で、関西奨励会の石川泰三段と関西将棋会館で対局しました。私が初めて見た21歳の大学生でもある石川三段は、理数系というよりも体育会系のようながっちりした体型が印象的でした。なお本局の記録係を務めたのは里見香奈・奨励会三段で、私は初めてのことでした。

石川三段の中飛車に対して、私(先手)は角筋を開けずに9筋に角が出る手法を採りました。昨年の竜王戦で近藤正和六段との対局で用いた経験がありました(結果は田丸が勝ち)。

上の図は石川三段が△6四歩と突いた中盤の局面で、お互いの角が利いて動きにくい状況です。相手は次の△6三金で高美濃に組むと十分な形になります。そこで私は▲9五歩△同歩▲9三歩△同香と9筋に細工をしてから、▲2四歩△同歩▲5五歩△同角▲6五桂△同桂と銀を取りました。指せると思って踏み込んだ攻め手順でした。

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

下の図の△6五同桂の局面で、▲5六銀と角取りに出る読み筋でした。しかし△7七角成▲同金△5六飛で銀を取られる返し技で、不利になるのを見落としたのです。そこで▲6六歩と突いて受けに回りました。△5七歩成は▲同角△同桂成▲同金直と応じれば、金銀4枚の守りが厚くて悪くないと思っていました。しかし石川三段が△1一角と引いたのが落ち着いた好手で、私は有効な手がないのに愕然としました。そして負けを覚悟して29分の長考で▲6五歩で桂を取ると、△6六桂の王手金取りをかけられ、数手後に私は投了しました。

本局は中盤まで難しい形勢が続きました。正直なところ、急転直下で敗局となる展開は予想外でした。しかし指せると思って踏み込んだ攻め手順で不利になったので、仕方ないと思っています。石川三段の将棋は、師匠の淡路仁茂九段に似て強靭でした。

感想戦が終わった後、私は石川三段と記録係を務めた里見三段に「2人とも次の三段リーグで頑張ってね」と声をかけました。すると石川三段は「明日に奨励会の退会届を出します」と、思いも寄らないことを語ったのです。

後日に聞いた話によると、石川三段は2年前から将来の進路について師匠や親族と話し合ってきたそうです。そして2年間の限定で三段リーグを戦い、四段昇段を果たせなかったので奨励会退会を決めたのでした。以前にも18歳の三段が、医学の道に進むために奨励会を退会した例がありました。石川三段は国際的な仕事に就く志望があるそうで、私は新たな世界で活躍することを期待しています。

なお石川三段は奨励会の枠で公式戦に出場したので、勝ち残っていた竜王戦と新人王戦の対局は不戦敗となりました。

私は今年の4月で引退が内定していて、残る対局は竜王戦の6組昇級者決定戦だけとなりました。6月に上野裕和五段と対局する予定です。自分らしい内容の将棋を指して、有終の美を飾りたいと思っています。

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

私の弟子の井出隼平四段は、前期の三段リーグ最終日に奇跡的な確率で四段に昇段しました。4月15日に行われた免状授与式では、将棋連盟会長の谷川浩司九段(左)から四段の免状を受け取りました。

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

師匠の私とのツーショットです。息子の入社式に同席したような気持ちでした。その井出四段は5月25日に棋士デビュー戦として、加古川青流戦で香川愛生女流三段と対局します。

田丸が竜王戦で対局した関西の奨励会員が退会、免状授与式での井出隼平新四段

免状授与式で初段の免状を受け取る竹俣紅女流初段。美少女棋士としてタレント活動をして人気を呼んでいますが、今年の4月から公式戦を休場しています。竹俣さんが通う東京・渋谷の中高一貫校は数多くの東大合格者を出している進学校です。昨年は対局などのために授業の出席日数が足りなくなり、高校卒業のために学業に専念するそうです。

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コメント

昨日は地元福山で名人戦第4局佐藤天彦
-羽生観戦に行きました。結果は終盤羽生名人の88
歩を境にどちらが勝ちかわからない、大変スリリンク
終盤になりましたが、佐藤八段が勝ち名人に王手をかけました。
大盤解説は地元福山の今泉四段、片上六段、山崎八段
室谷・・

田丸九段の弟子の出井四段昇段、46年ぶり関西に出向いて、引退する石川3段
との対局記録の里見倉敷藤花・・いやーすごい話ばっかりですね!
私はこの記事を読んで里見三段は女流初のプロに成ること確信しました。
奨励会にはいるのも大変な世界、ましてや、三段リーグからプロになる、
紙一重の差は何だろう!

かつて三段リーグで二度の次点で苦しんでいた佐藤天彦八段が名人に王手
またそれを解説する三度のプロ挑戦でプロ入りした今泉四段

終盤羽生名人の88歩の一手に対して、山崎八段、糸谷竜王、片上六段そうそうたる
メーバーの中で、19手必至の佐藤八段勝の結論だした、今泉四段

私は将棋で三段と四段の天と地ほど違う世界を見てきたので、
激しい出版業界の中で2001年英語長文読解力 文英堂 出版できました。
全国の高等学校で学校採用されるまでになりました。
現在2020年東京オリンピックにむけて、第三刷原稿執筆中

投稿: オンラインブログ検定 | 2016年5月27日 (金) 19時56分

田丸先生「にっこり」、幸せ感がにじみ出ていますね。
そんな中、羽生さん名人奪取されそうです。カッコ付けの佐藤さんが名人なのかな?羽生さん何か変な将棋指している感じ。素人目にもこれは差が付いていると感じた第4局初日、案の定粘ったが敗けました。どうしたのやら、自信があって何かを試しているのか?大山、中原といった名人としての強さが感じられない最近の名人獲得者らです。羽生さんもそう連続しての防衛ができてはいません。通算で歴代何位というくらいですね。今期はどうなるのやら??
オンラインブログ検定さん「面白そう」なブログですね。氏のようにリンクを張って「どうぞ」という方出てきました。この場を借りて?なのかな?
最後の4行は?ですね。

投稿: 千葉霞 | 2016年5月30日 (月) 10時29分

田丸先生の竜王戦6組昇級者決定戦における対局相手が、上野裕和五段に決まりました。

上野五段は序盤の知識に特化し、指導普及にも非常に誠実に取り組む棋士であると伺います。

そのような棋士が残す棋譜は、並べるとすがすがしい気持ちになれます。

田丸昇・獅子丸・ロン毛丸・ライオン丸先生が現役最終年度の最終棋戦で我々愛棋家に素晴らしい闘いの証を残してくださることを、心より待ち望んでやみません。

投稿: 柳 | 2016年5月31日 (火) 08時19分

石川泰元三段はお会いしたことはないのですが大学の後輩なので、陰ながら応援をしておりました。進路についての希望を図らずも田丸先生を介して知ることができ、嬉しいです。石川君はアラビア語専攻と記憶しておりますが、アラブ世界はとりわけ情勢の厳しいところと思います。将棋で養った精神力で道を切り開いてほしいですね。

投稿: Britty | 2016年6月 5日 (日) 13時37分

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