将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2016年3月18日 (金)

田丸の現役引退までの残る対局、弟子の井出隼平三段の四段昇段

私こと田丸昇九段は、3月16日に王将戦の対局で三枚堂達也四段に敗れ、現役を引退するまでの残る対局は竜王戦だけになりました。その竜王戦・6組ランキング戦の3回戦の対局は来週の3月24日に行われます。相手は関西奨励会の石川泰三段。本来は東京で対局するところですが、私の希望で関西将棋会館での対局となりました。

私が順位戦に在籍していた2008年度までは、毎年2~3局は関西の棋士との順位戦などの対局で大阪に出向きました。09年にフリークラスに転出してからは、ほかの棋戦で関西で対局する機会がありませんでした。今年の3月で引退が内定している私は、その前に関西で対局したいとかねてから思っていたのです。

私が旧関西本部(大阪・阿倍野区)で初めて対局したのは三段時代の46年前でした。奨励会の「東西決戦」(勝者が四段に昇段)で坪内利幸三段(現八段)と対戦して敗れた苦い思い出があります。それ以来、関西本部(現在は大阪・福島区)で多くの対局を重ねてきました。そんな過去の対局を振り返りながら、現役最後の棋戦に臨みたいと思っています。対局の後は、桜が開花して華やいだ雰囲気の京都や奈良を観光して「三都物語」を楽しむつもりです。

田丸の弟子の井出隼平三段(24歳)が3月5日の三段リーグ最終日で、確率が1%に満たない厳しい状況で奇跡の四段昇段を果たしました。そのことを前回のブログで書くと、「私が指導対局をしていただいた井出三段の奇跡的な四段昇段が決まり、自分のことのようにうれしかったです」「諦めずにきちんと指したことへのご褒美でしょう」「四段はゴールではなくスタートです。これからが大切ですね」「兄弟子の櫛田陽一六段もうれしかったと思います」など、多くの方から祝福コメントが寄せられました。別のあるサイトにも、「いい話だった。おめでとう田丸九段」「師匠の田丸九段の引退に花を持たせたね」「田丸九段の笑顔が無上の喜びを表現していて胸が熱くなった」などのコメントが寄せられました。

井出は四段に昇段した日、取材に応えて「年齢制限も近いので、諦めの気持ちもありました」と語りました。それは率直な感想だと思います。三段リーグ最終戦に勝った時点で3位の「次点」が確定し、その30分後に四段昇段が決定しました。しかし次点で終わった場合、25歳の年齢制限が迫っている状況で、再度の次点(四段に昇段してフリークラス編入の権利が生じます)を獲得するのは容易ではありません。井出が計13期の三段リーグで昇段争いに加わったことは、今回を含めてわずかだったからです。

東京・荻窪「将棋サロン荻窪」の経営者の新井敏男さんは、勉強のために毎日のように通っている井出の父親みたいな存在です。もし棋士になれなかったら、将棋サロンの手合係にさせると冗談で言っていましたが、後継者を失ったのはうれしい誤算になりました。新井さんは井出に「しょぽい棋士になってほしい」と以前から言っていました。ほかの若手棋士に比べて地味であまり活躍しないけど、たまに大物棋士を破って注目されることがある、という意味だと私は解釈しています。

井出は今後について、「穴熊に組ませて勝てる四間飛車党をめざします。鈴木大介八段が指すような四間飛車が目標です」と語りました。それは言い換えれば、少年時代から指導を受けていた兄弟子の櫛田六段の将棋を引き継ぐことでもあります。現代では少数派になっている「ノーマル四間飛車」を標榜する井出の将棋にどうか注目してください。

私の引退と入れ替わるように、井出が棋士になりました。公式戦で師弟が対局する可能性はありませんが、師弟がともに現役棋士だった時期が一時的でもあるのはうれしいです。なお私が引退する正式な時期は、今後の竜王戦の対局の勝敗によって決まります。早ければ5月頃でしょう。ランキング戦で勝ち続ければもっと先になります。9年前にランキング戦で5回戦に進出したときは、昇級決定戦の対局は10月でした。とにかく現役棋士生活を少しでも長く送れるように、最後の頑張りを発揮したいと思っています。

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コメント

東西決戦を思い出しての大阪対局
いいですね。
原点に戻り、澄んだ気持ちでの好局を期待しております。

お弟子さんの井出四段のプロ入り
誠におめでとうございます。
数少なくなったノーマル四間飛車の棋譜を楽しみに拝見します。

投稿: フライドポテト | 2016年3月20日 (日) 09時06分

弟子の井出隼平三段、奇跡の四段昇段とは・・・
神様がくれた現役最後のご褒美ですね。
現役最終局の明日は悔いのない棋譜を残してください。

投稿: 高田直江 | 2016年3月23日 (水) 21時10分

田丸先生の最終対局はどうなったのでしょうか。いずれであってもご苦労様ですね。そんなこんなの時、名人戦は羽生名人が先ずは先勝、貫禄ですね。さて残念なのは山崎叡王の電王戦、全く勝てません!なぜなのでしょう?戦前予想もこの結果をつぶやいたプロもいたようです。そんなに強いのだろうか。プロは情けなくなることはないのでしょうか。敗け慣れではないですが、私一人愚痴っています。名人は出ていなかったものの、一応全プロ参加棋戦とウタイ、その最強者が対戦したはずなのに???ソフトは大名人なのだろうか?2局目はソフトに手抜かれたりされる恐れも無きにしも非ず、残念!十段を進呈した方がいいかもしれない。

投稿: 東京散歩人 | 2016年4月11日 (月) 16時52分

こちらのブログに問題コメントを連発して、大変失礼致しました。
私への批判コメントが殺到して荒らしてしまったのではないか、と心配しています。
田丸氏やこのブログの読者の気分を害することが私の目的でなかったことは理解してもらえると嬉しいです。

プロ棋士とコンピューターの問題は、これからコンピューターに浸食されるであろう多くの仕事を考える上で、示唆に富むと私は考えています。
この問題の本質を見極めて、それにどう対処すべきかを真剣に考えていらっしゃる方は私のブログまで来てもらえると幸いです。
こちらに記録されていない3月28日のコメントも載せてあります。

投稿: アルファ碁が人間に勝った後の投稿 | 2016年4月11日 (月) 18時26分

アルフア碁…氏はご自分の世界(ブログ)があるようですね。医師を目指す学生さん。ITの知識を生かして大学病院で診断ソフトを導入すべく頑張っているとのブログでした。また、プロ棋士や将棋ファンと知り合いになりたいともコメントされていました。頑張ってください。私は田丸先生のブログで将棋閑話などをを楽しんでいきたいと思います。高田直江氏も独自の将棋ブログをされているようです。これも頑張ってください。お二方ともリンクを張られているのですが、多くに(田丸先生にも)拡散を希望されているのでしょうね。できればない方がいいのですが(コメントだけにしてほしい)。

投稿: 田舎棋士 | 2016年4月14日 (木) 10時36分

高田直江氏がリンクを張られているので田丸先生の直近棋譜を見られるのかと期待したのですが2年前のでした。残念でした。田丸先生の感想入りの棋譜を楽しみにしています。

投稿: 千葉霞 | 2016年4月16日 (土) 14時31分

名人戦の季節になりました。今期はなにやら波乱がありそうです。羽生名人先勝、二局目は名人の詰みの見落としで1勝1敗、羽生名人が気落ちしていないといいのですが。ガタガタと新名人誕生か?気お取り直して防衛か?羽生名人が崩れるとは思えないが、佐藤八段が乗ってくると怖そう!田丸先生の近況と、名人戦の講評をお願いしたいと思います。

投稿: 将棋観戦者 | 2016年4月26日 (火) 15時38分

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