将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2016年2月 8日 (月)

田丸が現役最後の竜王戦の吉本悠太・アマ竜王との対局で強烈な攻めを放って勝利

田丸が現役最後の竜王戦の吉本悠太・アマ竜王との対局で強烈な攻めを放って勝利

私こと田丸昇九段は2月5日に竜王戦・6組ランキング戦の2回戦で吉本悠太アマ(21歳)と対局しました。昨年のアマ竜王戦で最年少記録で優勝した吉本アマは、特別出場した竜王戦の1回戦で若手棋士の石井健太郎四段に勝ちました。

振り飛車を得意とする吉本アマ(上側の後手)は四間飛車に振り、8手目に△8八角成として角交換振り飛車の戦型を採りました。アマ竜王戦ではほぼ全局を四間飛車穴熊で戦い抜いたそうです。私はそれを予想して作戦を考えていたので、少し意表を突かれました。

私は序盤の17手目の局面で、▲5六角と中段に打って相手の3四の歩を取りました。あまり考えずにその場の思い付きで指したものです。実戦経験はなく研究したこともありません。たぶん同一の実戦例はないでしょう。予想した戦型にならなかったので、定形から離れて自由に指してみようと思ったのです。

私が打った▲5六角は、▲3四角~▲1六角~▲3八角と移動しました。3筋にいる筋違い角の利きと、後に▲8九飛と左側に転換した一段飛車を連係させて、相手の美濃囲いの玉をじかに攻める構想でした。実戦では吉本アマにうまく対応されてその狙いは外されました。やがて歩得の有利も消えて苦しくなりました。しかし作戦勝ちになったと意識した吉本アマに思わぬ油断と見落としがあったのです。

写真の図面・上は中盤の局面(△8四同歩)。私の8筋の飛車と2筋の角を有効に活用する絶好の攻め筋が生じました。

実戦は▲7五銀△同歩▲8四飛△8三歩▲6四飛△6三銀打▲同角成△同銀▲同飛成△同飛▲7四金と進みました。

私は▲7五銀と捨てる強烈な攻めの一手を放ち、△同歩▲8四飛と出て王手金取りをかけました。さらに飛車角を切り、▲7四金と飛車取りに打って迫りました。そして実戦は△7六歩▲6三金△7七歩成▲同金△8五桂打と進み、激しい寄せ合いの展開となりました。

田丸が現役最後の竜王戦の吉本悠太・アマ竜王との対局で強烈な攻めを放って勝利

写真の図面・下は終盤の局面(△8五桂打)で、私は自玉の詰みを防ぎながら相手玉に詰めろをかける攻防の妙手を指しました。

実戦は▲7六飛△7七桂成▲同飛△7六歩▲同飛△6九角▲同玉△8七角▲7八銀△7六角成▲7四桂△9三玉▲8二角△8四玉▲7三角成△8五玉▲7七桂△同馬▲同銀と進み、まもなく田丸が勝ちました。

私が中段に打った▲7六飛が攻防の妙手で、勝ち筋となりました。実際には曲線的な順で粘られる難しい変化がありましたが、▲7五銀の一手を見落とした吉本アマは形勢を悲観したようで、本譜は直線的な順で負け筋となりました。本局は攻め将棋の私の持ち味がよく出た内容で、すべての駒が有効に働きました。

吉本アマは以前に桜井昇九段の門下で奨励会に在籍し、1級で退会しました。奨励会で修業しただけに対局中は礼儀正しい態度でした。正座を崩さず、席を立つときは「失礼します」と声を出しました。局後の検討が終わると「現役最後の竜王戦で頑張ってください」と私を激励してくれました。現在は中央大学の4年生。アマ竜王戦での優勝によって奨励会三段の編入試験を受けることは可能ですが、そのつもりはないそうです。

竜王戦の3回戦の対戦相手は、三段リーグの順位1位によって竜王戦に特別出場して浦野真彦八段と島本亮五段を連破した奨励会の石井泰三段(21歳)です。

今年3月で引退が内定している65歳の私が、44歳の年齢差がある強豪アマと奨励会三段と対局するというのは複雑な心境です。まあ自然体で指しながら、引退間際の馬鹿力が出たらまた勝てるかもしれません。今後は現役棋士として対局できるのは竜王戦、王将戦、NHK杯戦の3棋戦です。なるべく長持ちできるように頑張りたいと思っています。

 

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コメント

大ゴマを切り飛ばして敵玉に迫る突っ張り流!
将棋の面白さを見せてもらいました。
昨日のNHK杯もそうですが、飛車切りで勝つのは「上」ですね。
次の相手は大阪大学4年生だそうで、いろんな奨励会員がいるものです。
竜王戦、本戦入りしても引退なんですよね(笑)
本戦優勝ならどうなるんでしょう?

投稿: K島 | 2016年2月 8日 (月) 08時40分

[44歳の年齢差がある強豪アマと奨励会三段と対局するというのは複雑な心境です][今後は現役棋士として対局できるのは竜王戦、王将戦、NHK杯戦の3棋戦]
田丸先生は楽しんでいるようですね。自然体ですね!頑張ってください。

投稿: 千葉霞 | 2016年2月10日 (水) 10時55分

都成竜馬三段がついに四段に上がりました。おめでとうございます。9年程奨励会にいたようですね。なんといっても新人王戦で優勝しているのですから、次点のご褒美だけでやきもきしていました。年齢制限もありと、本当によかったです。知り合いに同じ姓の者がいるので気にはなっていました。いや!先生の有終の美を応援しなくてはなりませんでした。棋王戦、王将戦とタイトル戦が拮抗状態で面白くなってきました。田丸先生の対局も面白くなりそうですね。頑張ってください。

投稿: 田舎棋士 | 2016年2月23日 (火) 12時39分

ほっとしました。奨励会員は、特に三段クラスは強いとはいわれていましたが、プロではないんです。朝日新聞で取り上げられました記事です。田丸先生のこの欄でもコメントが出ていたお方です。実力で四段に上がられました。本当に新人王でした。 
【将棋の棋士養成機関「奨励会」の三段リーグが21日、東京と大阪の将棋会館であり、都成竜馬(となりりゅうま)三段(26)=大阪市福島区=が四段昇段(プロ入り)を決めた。2013年にプロを連破して新人王戦で優勝したホープが、ようやく棋士の座をつかんだ。都成三段は宮崎市出身で、現在日本将棋連盟の会長を務めている谷川浩司九段(53)に2000年に弟子入り。谷川九段の弟子は都成三段ただ一人だ。奨励会には年齢制限があるため、今リーグで勝ち越さないと退会しなければならなかった。「10代のころはそのうちプロになれると考えていたが、最近はもしかしたらなれないかもと思っていた。ホッとしている」と話した】
年齢制限ギリでしたね。おめでとうございます。

投稿: 古代子孫 | 2016年2月28日 (日) 11時43分

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