1月5日の東京の将棋会館での指し初め式、田丸が現役最後の新年の対局で勝利
謹賀新年。半月遅れの挨拶となりましたが、今年もこのブログのご愛読をよろしくお願いします。
1月5日に恒例の「指し初め式」が東京の将棋会館5階の特別対局室で行われ、棋士、将棋関係者、将棋ファンなど、多くの人たちが参加しました。会館の子ども将棋スクールで習っている男の子が▲7八飛と意外な初手を指すと、盤側の渡辺明竜王、郷田真隆王将、佐藤康光九段、森内俊之九段らの棋士は笑顔を見せました。将棋連盟会長の谷川浩司九段(右)は△8四歩と指しました。指し初め式ならではの対局光景です。
先手側の2人目は同じく子どもスクールの女の子で、谷川九段が続いて指しました。
その後は棋士とアマの組み合わせで1手ずつ指しました。右は渡辺竜王。
塚田泰明九段(右)と塚田恵梨花女流2級の親子棋士が揃って指しました。
私こと田丸昇九段は中盤で△7六歩と歩を取りました。現役棋士として最後の指し初め式なので、盤側の人に記念に写真を撮ってもらいました。
指し初め式に先だって、会館の向かいの鳩森神社の境内で「将棋堂祈願祭」が執り行われました。宮司が祝詞をあげた後、連盟の理事や棋士らが将棋堂に榊を奉じ、今年の将棋界の隆盛を祈願しました。
将棋堂の大きな駒に彫られた「王将」は、大山康晴十五世名人の書です。
指し初め式で参加者が1手ずつ指すと、途中で指し掛けとします。勝負をつけないのが習いです。その後は別室で新年の酒宴となりました。冒頭で谷川会長は「今年は村山聖九段の評伝『聖の青春』の映画化、漫画『3月のライオン』のアニメ化など、将棋界にとって明るい話題が多いです。良い年になりそうです」と挨拶しました。
私は今年の3月で44年間にわたる現役棋士生活を終えます。現役最後の新年の対局は、1月12日の竜王戦で相手は小林宏七段でした。中盤で少し苦しい形勢となりましたが、開き直って指すと相手に疑問手が出ました。そして厳しく攻め込み、終盤で一手勝ちを収めました。何と1年ぶりの勝利でした。
竜王戦の次の相手は、昨年のアマ竜王戦で優勝して竜王戦に出場し、1回戦で若手棋士の石井健太郎四段に勝った吉本悠太アマ。私が公式戦でアマと対局するのは、9年前に竜王戦で加藤幸男アマ(元アマ竜王)と対局して以来です(結果は田丸の勝ち)。引退を前にしてやや複雑な心境ですが、自然体で指したいと思います。
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コメント
田丸先生の勝利の報せを受けて、ブログを拝読致しました。
小林宏七段は、本格的な登山愛好家で将棋界でも有名ですが、
さぞかし、相当な根性や意志の強さを持った方なのでしょうね。
そんな小林宏七段に中盤で不利になりながらも勢いよく攻めて逆転するとは、流石です。
田丸昇・獅子丸・ロン毛丸・ライオン丸先生は、愛棋家目線に立った格好いい棋風を持った先生です。
残す対局は竜王戦・棋王戦・王将戦・NHK杯のわずか4つとなってしまいましたが、最後まで素晴らしい棋譜を残してくださることを信じております。
投稿: 柳 | 2016年1月17日 (日) 02時50分