将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2015年6月26日 (金)

新しいプロ公式戦の「叡王戦」は優勝者が最強将棋ソフトと2番勝負で決戦

「電王戦」の主催者のドワンゴが6月18日、新しいプロ公式戦を新設することをを発表しました。その棋戦の名称は公募が実施されました。そして3422件の応募総数の中から9件が最終候補に残り、ニコニコ生放送のユーザー投票によって「叡王戦」に決まりました。命名者(男性・30代)の方は「知恵や叡智を争う将棋の頂点にふさわしい名称」と考えたそうです。

「叡」という単語で連想するのは、天台宗の総本山の延暦寺がある京都の比叡山です。ただあまりなじみがないので漢和辞典で調べてみました。①賢い②深く事理に通じる③天子(天皇の特称)の行為や状態に添える語、という意味です。①は叡哲、②は叡敏、③は叡慮などの熟語があります。最先端のIT企業が主催する新棋戦の名称で、このような深みのある単語が用いられたのは何とも対照的で面白いです。

最終候補に残ったほかの名称は、覇王戦・賢王戦、仁王戦、棋帝戦、棋神戦などです。いずれも同じ名称の応募者がいましたが、叡王戦は1人だけでした。なお28年前に竜王戦が新設されたときも、棋神戦は名称の候補になりましたが、「神」の単語は宗教にからむという理由で外されたようです。

それにしてもプロ公式戦の名称は「王」という単語が多いですね。タイトル戦は竜王戦、棋王戦、王将戦、王位戦、王座戦があり、ほかに新人王戦、女王(マイナビ女子オープンのタイトル名)、天王戦(現在は棋王戦に合流)があります。

叡王戦の棋戦方式は将棋連盟のホームページなどですでに発表されましたが、改めてお伝えします。まず段位別の予選トーナメントを行って16人の本戦出場者を選び、本戦で決勝に進出した2人が3番勝負を戦います。その勝者で叡王戦の優勝者が、第3回「将棋電王トーナメント」で優勝した最強将棋ソフトと2番勝負を戦います。それが第1期「電王戦」です。5人の棋士と5種の将棋ソフトが団体戦で戦った今年の「電王戦」と同じ名称ですが、プロ公式戦の優勝者と最強将棋ソフトが決戦するところに大きな違いがあります。その2番勝負(先後1局ずつ)の持ち時間は各8時間で、来年の春に2日制で行われます。

段位別の予選トーナメントの本戦枠は、九段4人・八段2人・七段2人・六段2人・五段2人・四段1人の計13人が基本です。さらに九段のタイトル保持者(羽生善治名人、渡辺明棋王、郷田真隆王将)と八段のタイトル保持者(糸谷哲郎竜王)の存在を加味して、本戦枠は九段2人・八段1人が追加されました。

通常の棋戦は全棋士参加が原則ですが、叡王戦では各棋士が任意で参加を申し込む「エントリー制」が初めて導入されました。それは個人競技のスポーツでは一般的なことです。将棋界でも女流棋戦で実施されています。叡王戦で注目されたのは前記のタイトル保持者などの意向でしたが、羽生名人、渡辺棋王らの5人の棋士が参加しませんでした。

羽生名人、渡辺棋王の不参加については、当人たちが何も表明していないので理由は不明です。いずれ何かの機会に語ると思います。

来年の春に引退を迎える私は、現役最後の年に新棋戦に参加できました。しかも通常の棋戦の私の予選対局料はフリークラスなので一番下のランクですが、叡王戦の予選対局料は九段として一番上のランクとなります。私の対戦相手は井上慶太九段です。

|

対局」カテゴリの記事

コメント

ニコニコ生放送を見ています。
持ち時間が短いこともあり、スリリングな展開が面白いです。

ところで。
公式戦か否かはどういった線引きがあるのですか?
私の推測では、全員棋戦(エントリー制も全員が出場資格がありますね)か、それ以外でも明確に出場者を決めているか。
新人王戦、加古川青流戦、の出場者も分かりやすく四段まで、五段までとか。
またJT杯は全員棋戦ではないですが、獲得賞金額上位12名と明確に決まっていますよね。
ご回答いただけたら、嬉しいです。

投稿: popoo | 2015年6月27日 (土) 05時31分

早速「叡王戦」について分かりやすいコメントがありました。ありがとうございます。やはり、ソフトの選手権者に人の叡王戦選手権者が2番手合いとなるわけですね。前回あたりに、棋戦になにやら違和感ありのコメントを見ました。がさらに2番勝負も?ですね。アマチュアや女流枠が無いのご説明をいただければと思います。エントリー制の例で、はからずも女流棋戦では「あるんだ」といわれましたが「今回の叡王戦ではアマと女流はカットでしたが…公式戦というとどこまででしょうか?ソフト対決終了まででしょうか?ソフトとの戦績も生涯成績になるのでしょうか。ならないでしょうね??ふと「不思議な」棋戦という気がしています。「賞金」(連盟運営資金)が入ればいいとしましょう。フアイト九段陣!

投稿: 田舎棋士 | 2015年6月28日 (日) 12時44分

叡王戦スタート、よかったですね。運営内容にいささか?ですが将棋連盟の方々が良しとしているのであればいいのでしょう。ただ、最後に将棋ソフトと最終決戦をされるのはどうでしょうか?そこがねらいといわれればこれもそれまでですが、正々堂々と戦うのだろうか?また欠陥狙いを?ではつまりません。2番勝負も?です。一つ残念なのは「女流やアマ」枠がないことです。やはり正会員となった女流もいるのにおかしいですね。アマの活躍の場でもありましょうに?疑問が多い棋戦です。この疑問も連盟の棋士先生方が最善と決められたのですからせんないことです。羽生先生、渡辺先生他不参加の先生は勇気ありますね。エントリー制は自由参加ですからOKです!さて結末はどうなりますやら。

投稿: 千葉霞 | 2015年6月29日 (月) 11時34分

叡王戦はいいのではないですか。将棋連盟としてはイベント性もあり、資金面でも潤うのですから「良しと」しましょう。案外資金調達をしっかりする役員がおり、うまく支えていますね。ただ、名人戦のみ棋譜閲覧は有料を譲らないですね。がっちりしています。叡王戦も有料半分ですか、ニコニコさんもがっちりしています。最後にソフト相手に負けは許されません。でも、うまくいけば1-1で引き分けです。やや私もあまり歓迎していないようにとられるコメントになってきました。千葉さん同様、連盟が大歓迎して始めたものは良しとしましょう派です。異論はいけません。頑張ってください。

投稿: 囲碁人 | 2015年6月29日 (月) 20時20分

こんにちわhappy01notepaper。関西人の私からして、『叡』という字は比叡山しか思い浮かびませんでしたが、漢字の意味はそうした内容があったんですね・・・命名者の方は、さぞかし博識のある方なのでしょう。脱帽ですcoldsweats01。私が目を奪われたのはその予選方法です・・・『段位別予選』・・・確か昔『天王戦』というので、用いられていたはずで、昭和最終時期に、羽生五段と森下五段(ともに当時)が2年連続、予選から勝ち上がっての決勝で、羽生先生が2連覇した・・・はずです(間違っていたらすみません)。以後棋王戦に吸収合併されたと聞いていますが、実に四半世紀の時を経ての、予選方法ですね。今の若手棋士は『天王戦』は知らないでしょうねcoldsweats01。こうしたところも河口先生に書いてほしかったcrying。田丸先生、これを機に『終了棋戦の思い出』などの文章はいかがでしょうか?皆さんも『昔、こうした棋戦あったよ』というのがあれば教えてくださいsmilenotepaper

投稿: S.H | 2015年7月 2日 (木) 17時20分

オジサン達ばかりで、阪田名人や王将のことばかり、と嘆いていたSHさん登場ですね。明治・大正・昭和初期の話は沢山だといわれていたお方でした。四半世紀前はいいか?倍の半世紀はだめか?SHさんは自己中かな?揶揄しているのではないが、いってみればあれだめ、これだめ、わたしはこれ!といっているようですね。猛反撃くらいそうだからこの辺でよしましょう。これで反撃してきたら自己中そのものですね。おじさんはあきれてしまいます。また刺激してしまいました。田丸先生には申し訳ありません。将棋の歴史エピソードは私も好きです。数年前ではエピぐらいにしかなりません。NHKで2歩指、ソフトがプロを制覇は大分先の語り草ねたでしょう。羽生さんでも20年ぐらいでやっとねたになります。名人経験者を連覇、竜王位とまだでしょうか。やはりまだ谷川さんあたりくらいが思い出話ぎりぎりでしょうか。大山、升田、内藤、加藤、有吉、中原、米長あたりが思い出話やエピソードの中心でしょう。「名人になれなかった男…確か大内さん」も記憶には残るかたです。全くの私見、感想です。SHさんごめんなさい(o^-^o)

投稿: 将棋九段 | 2015年7月 4日 (土) 09時41分

>S.H さん

 終了棋戦の思い出、ですか。いい話題ですね。

 「若獅子戦」というのをご存じでしょうか?
 わたしが将棋を始める前年辺りまであったようなのですが、どういう棋士が出場できたのか、気になります。若手登竜門といった感じだったのでしょうかね。

 

投稿: スズキ | 2015年7月 5日 (日) 22時46分

スズキさん、投稿ありがとうございました。さっそく『将棋年鑑』で平成初期のものを引っ張り出したところ、近代将棋社主宰で、第14回まで続き、平成4年版で終わっていますね。ちなみに叡王戦と同様の予選を用いた『天王戦』は、その翌年に終わっています。両棋戦とも昭和後期から平成初期の棋戦で、昭和30年世代(谷川世代)と40年世代(羽生世代)が10、20代のころ、各自の同世代と競い合った棋戦ともいえます。いつの世も若い世代が競い合うのはいいものです。叡王戦もベテランに混じって、四、五段の若手棋士たちが競い合ってほしいものです。・・・これ以上書くときりがないので、これで『締め』といたします。後は田丸先生が、『終了棋戦の思い出』を書いてくださるのを待ちましょうsmilenote。スズキさん、ありがとうございましたhappy01paper

投稿: S.H | 2015年7月 6日 (月) 17時26分

はじめまして。叡王戦スタートして1月経ちましたね。9段戦初戦の3回戦。森内先生南先生の対局から目が離せず、やっぱり将棋って面白いと思いました。17日の叡王戦の先生の対局楽しみにしております。
新棋戦楽しんで、そして頑張って下さい。
応援しております。

投稿: さえ | 2015年7月14日 (火) 07時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/545452/61796505

この記事へのトラックバック一覧です: 新しいプロ公式戦の「叡王戦」は優勝者が最強将棋ソフトと2番勝負で決戦: