永世称号、シニア棋戦、俳優の高倉健さん、小池重明さんに関するコメントについて
「永世称号は規定の条件が必要ですが、名誉称号は将棋界に貢献した棋士に贈られるとファンとしてうれしいです。加藤一二三名誉十段、内藤国雄名誉棋聖、有吉道夫名誉棋聖などはと思う次第です」という内容のコメント(9月25日)は《田舎棋士》さん。
この3人の棋士はいずれもタイトル経験者で、九段に昇段してから年数がかなりたっています(加藤九段は42年、内藤九段は41年、有吉九段は36年)。新米九段の私としては、そんな実績がある3人の棋士と同じ段位というのは、正直なところ面映ゆい気持ちです。その意味で名誉称号の肩書を付ける考えに賛成です。加藤九段は十段戦(竜王戦の前身棋戦)で計7期もタイトル戦に登場しました(十段を1期獲得)。内藤九段は棋聖を2期、有吉九段は1期、それぞれ獲得しました。将棋連盟が何かの節目のとき(今年は連盟発足90周年という記念の年でした)、名誉称号の制度を作るといいのですが…。
「ゴルフのシニアトーナメントのように、引退した棋士の対局を見たいと思うファンは大勢いると思います。中原―大内、神吉―桐谷の対局は絶対に受けると思います」というコメント(10月21日)は《こうめい》さん。
ベテラン棋士の私にとって、シニア棋戦ができたらうれしいですね。中原誠十六世名人―大内延介九段の対局は、約40年前の名人戦の死闘を思い出します。神吉宏充七段―桐谷広人七段は新旧のタレント棋士の対局です。そのほかに連盟会長経験者同士の丸田祐三九段―二上達也九段、詰将棋作家同士の勝浦修九段―伊藤果七段の対局など、面白い組み合わせがありそうです。棋戦でなくても、単発の企画でもいいです。私は音楽・映画・小説では、現代よりも昔の作品のほうが好きです。将棋の対局者も戦法も、同じように昔のほうがいいと思う人は少なくないかもしれませんね。
「俳優の高倉健さんは将棋界と交流があったのでしょうか。もし将棋を指したら対局姿が似合うと思います。丹波哲郎さんがそうでした」というコメント(11月19日)は《S.H》さん。「田丸九段は34年前に映画『宮本武蔵』の5部作を新宿東映で夜の8時から徹夜で見たそうですが、私も春休みの土曜日に同館していたことになります。スクリーンに中村錦之助さん(宮本武蔵)と高倉健さん(佐々木小次郎)の名前が映ると、場内に拍手が巻き起こった雰囲気を覚えていて何とも懐かしいです」という内容のコメント(11月24日)は《と金読者》さん。
11月に亡くなった俳優の高倉健さんが、棋士と交流があったり将棋を指したという話は今まで聞いたことがありません。映画の撮影現場では、役者やスタッフが待ち時間に将棋をよく指したそうです。もしかしたら、高倉健さんは将棋を指さなくても脇で眺めて、たまに軽口をたたくことがあったかもしれません(これは私の想像です)。50年前の将棋のテレビドラマで、丹波哲郎さんの対局姿(役は関根金次郎十三世名人)を見ました。高倉健さんも将棋を指したら、対局姿はさぞ格好よかったでしょうね。
私が新宿の伊勢丹の近くにある映画館で『宮本武蔵』の5部作を見たのは、1980年3月29日(土)だったことを当時の手帳で確認しました。その場に《と金読者》さんもいたのですね。私が最も感動したのは、武蔵が吉岡一門の73人の門弟たちとの果たし合いの前に武蔵を慕うお通(入江若葉)と再会したとき、「心の妻です」と言い残して独りで死地に臨んだ場面でした。
「『NHK将棋講座』の師弟(田丸九段・櫛田陽一六段)の話はいいですね。12月1日のブログで書かれている小池重明さんのプロ入りの道は、大山康晴十五世名人以下の棋士の反対で駄目だったようですが…」という内容のコメント(12月2日)は《千葉霞》さん。
アマ棋界のカリスマ的存在だった小池重明さん(元アマ名人)が、懇意にしていた松田茂役九段を通じてプロ入りを将棋連盟に願い出たことがあります。1983年1月の棋士会では、その問題が話し合われました。「タイトル保持者を次々と破るアマがいたら、連盟のほうからプロ入りをお願いするべきだ」という容認論、「特例を認めたら奨励会制度の根幹が崩れる」という否定論など、いろいろな意見が出ました。ただ全体に否定的な空気でした。小池さんが以前にプロ棋士に挑発的な態度をとったり、賭け将棋を指したことも、印象を悪くしました。結局、その問題は賛同を得られませんでした。松田九段の棋士たちへの根回しも十分ではなかったです。したがって、時の連盟会長の大山十五世名人が個人的に反対したことで、その問題が否定されたわけではありません。
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コメント
名誉称号の制度、田丸先生にご賛同を得て大変うれしく思います。ぜひ実現することを願っています。ちなみに囲碁の方では、資格があるのでしょうが現役でも名誉称号を名乗っています。趙治勲○○世本因坊(?)だったでしょうか。やはり全盛期を過ぎて九段だけではと思ったかどうかはわかりませんが、対局の字幕にそう出るのはいいですね。将棋界は引退後(大山先生は別でした)ですが、これも谷川さんは17世名人と名乗る方がいいと思います。大山先生は単に名人と呼ばれることも多かったです。将棋界の代名詞でもありました。二上九段も永世棋聖には惜しかったのでやはり名誉棋聖をと願うものです。段は結構我が佐瀬先生のように引退後でも八段、九段(名誉)となっておられます。お弟子さんをたくさん育てたという功績も普及への貢献になろうかと思いますので、関西の○○7段は早めの昇段を検討されることを期待したいです。
投稿: 田舎棋士 | 2014年12月19日 (金) 12時29分
こんにちわ
。先日の高倉さんへのコメントの応対ありがとうございました。・・・やはり聞いた事は無いのですね。あったら、将棋界にとっても大ニュースだったでしょうね。ちょっとさびしい
。ですが俳優さんの間ではよく将棋は流行っていたと言いますし、現在では『NHK・将棋フォーカス』の影響からか、若い俳優さんや女優さん、ついには若いタレントやアイドルまで興味を持ってい指しているとか
!!年末発売の『将棋世界2月号』にはアイドルグループ『乃木坂46』(AKBの対坑グループとか・・・)の一人・伊藤かりんさんが登場。将棋ファンもここまで来たか・・・と驚いています
。・・・《田舎棋士》さんの『名誉称号』、私も大賛成です。子供のころからA級九段棋士としてみてきた先生方は、もう『名誉十段』でも、誰も文句を言わないでしょう。塚田正夫先生が亡くなって30数年、『実力制二代名人』の称号も追贈されていますから、『名誉十段』は今後検討し、九段30年以上の棋士にに贈るべきだと思います。丸田・二上・加藤・有吉・内藤(敬称略)。この5御大こそふさわしいとも思いますが、皆様はいかがでしょうか
?(ちなみに来年は関根・大内、両先生が九段30年。再来年は勝浦先生)
投稿: S.H | 2014年12月21日 (日) 01時58分
今年の連盟のヒットに「将棋手帳」があります。2015用ですが、若草色でしょうか?畳柄のようないい雰囲気です。賛否はあるでしょうがいい感じと思いました。名誉称号もいい案ですね。、『実力制〇代名人』の称号は手帳では永世称号に入っていますが、名人経験者の中原さん、米長さん、と最近の丸山さん、谷川さん、佐藤さん、森内さん、羽生さんは頂いていませんね。永世名人の大山名人は頂いていますので、いずれは加藤九段も含めて贈られるのでしょうか。またお弟子さんをたくさん育てて将棋普及に貢献されている関西の七段の棋士とは糸谷竜王の師匠の森信雄先生でしょうか。他には渡辺明二冠の師匠の所司和晴先生も特別昇段にあたりそうです。ちなみに塚田先生の十段増位は亡くなられた時に仏前に掲げられたと読んだ記憶があります。加藤、有吉、内藤の各先生は1,000勝、大内、二上の各先生は800勝以上の堂々たる成績です。名誉称号はあげてほしいですね。関根先生、丸田先生は大重鎮、昔なら贈名人や贈王将あたりでしょうか。あの坂田三吉翁は贈名人、贈王将です。
投稿: 囲碁人 | 2014年12月21日 (日) 15時16分
森下先生の年末の電王戦のリベンジ戦があるとHPに出ています。どなたかのコメントに対局の場に継ぎ盤を置いて検討しながらリベンジするようなことが書かれていました。確かTVでも放送されていたように思いますが本当に脇に継ぎ盤を置いてプロの森下先生がコンピューターと対戦をされるのでしょうか?もしそうだとしたら信じられません。たとえ相手が機械でもそれはないのではないでしょうか。そこは頭の中で行うのがプロではないかと思うのが普通で常識ではないでしょうか。何かの間違いであればと願う次第です。
投稿: 千葉霞 | 2014年12月21日 (日) 15時33分
「継盤を使っての対局を提案し、再戦のチャンスが与えられた。森下九段が自ら考えたルールでツツカナに勝利することができるのか…」とニコニコのほうの案内に出ているので千葉霞さんのコメントには「いわれているようにやるようですよ」ですね。確か対局時間を長くしたとかは前回のお話でしたか。次は継ぎ盤ですね。別なコメントにもありましたが、携帯のCPU を持参された方がいいかも知れない。自分の指し手を入力して検討されるのはおなじですからね。継ぎ盤での「待った」「駒を自在に動かす」はアマチュアの詰将棋などのやり方ですね。無論強いアマは頭の中で詰将棋を解いていますが!私は独自ルールと称している継ぎ盤?はいいとは思えません。勝ち目が遠のく感じがしてきました。プロからも遠のくのでは?こういった意見は将棋ファンとしては少数派なのでしょうか。
投稿: 東京人 | 2014年12月21日 (日) 15時47分
小池重明氏のプロ入り問題に関しては、新幹線で大山会長とばったり会った時に「プロになりたいなら嘆願書を出してみればいい」と言われたのがきっかけだったと当時の将棋世界に書いてあったと思います。
会長に言われなければ嘆願書も出さなかったでしょうから、大山十五世名人が反対していたとはちょっと考えづらいです。
投稿: タイタン | 2014年12月24日 (水) 08時52分
名誉昇段や名誉称号は大変いいことのように思います。大豪とか九段だけでは物足りなさがありましたので、贈名人、名誉名人、贈王将、名誉王将まで広げて贈位されるのがファン心理です。名前が挙がっている先生方は大山先生の前後世代でしょうか。当時の活躍は丁度羽生さんを取り巻く世代のごとくです。もう少し当時の先生方の方が強かったかもしれません。二上、大内、有吉、西村とそうそうたる棋士連、この間にも失念しましたが多くいらしやいました。自ら一番弱いA級八段と称された木村八段も異色でした。個性ある棋士も輩出、その多くが今は普及で頑張っておられます。森けいじ先生も味わいのある先生です。それらの中から表彰していくのは大変でしょうがお名が挙がっている先生方は文句のないところでしょう。
小池さんはドキュメントでも放送されたことがありましたのでよく覚えている人も多いと思われます。最後の判断ではいわゆる「身持ち」、小池さんの身辺だったようにいわれていました。社会に認知された将棋棋士としての資質の評価だったようでした。瀬川さんや、今泉さんと志は同じだったでしょうが、行い面で対照的だったようです。今泉さんはとても立派です。将棋の神様は名人を選ぶだけではなく、将棋棋士も選ぶんだと痛感させられました。これは連盟のプロへのチャレンジを大きく改正されたことへも反映されています。小池さんは強かったが、将棋の神様に選ばれなかった棋士だったのではないでしょうか。
投稿: 古代子孫 | 2014年12月24日 (水) 12時18分
ツツカナとのリベンジ戦、分からぬでもないのですが?行う意味はあるのでしょうか。一番強いソフトでもないし、プロ棋士のすなわち森下九段のルールでやるのだということですね。付き合うソフトを開発された方も人間です。長時間は将棋指ではない分大変だろう!見守るだけとはいえお気の毒というより他ありません。新ルールは継ぎ盤を使うそうですが、これは将棋になるのですか?普段の対局では絶対されない(許されない?)こと、これ限りとはいえ無理がありますね。現実に今までのルールで勝たれている棋士もいる分けですから、仮に勝たれても無勝負ではないですか。人間的なミスを防ぐと言われたようですが、普段の対局でもそのミスが少ない方が勝ち名人などになっていくのではないでしょうか。「ミス、及ばない力量」の差を競うのがスポーツ、競い事ではないのではないでしょうか。今回のは「将棋道」といいますか、それを大きく外した「個人の復讐」的なものですね。リベンジ戦、まさにリターンマッチではない勝ちたい戦でしょうか。ルールを変えてやるほどのことではないといえます。お一方がリベンジ戦を行いましたが、負けた時と大して変わらないルールで勝たれました。恐らくプロ棋士がソフトと戦えば五分五分はいけるのではないでしょうか。そしてまた負けるのは互いに学習能力があるからです。今回の強行はそれを無視していますね。こうなったら勝たせるしかないとならないようにしなくてはいけません。プロがややインチキなルールですが、とにかく正々堂々やるしかないですね。年末でニコニコさん大喜びな企画ですね。正直(いままでも)残念な対局企画です。ソフト開発者さん情に流されず、一ひねりした方がいいかも。プロが勝つには相当な強さが必要です(勢い)。森下さんも頑張って戦ってください。
投稿: 将棋太郎 | 2014年12月26日 (金) 11時34分