将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2014年10月14日 (火)

母校の東京・荒川一中での「全校ハローワーク」で将棋の講座

母校の東京・荒川一中での「全校ハローワーク」で将棋の講座

母校の東京・荒川一中での「全校ハローワーク」で将棋の講座

母校の東京・荒川一中での「全校ハローワーク」で将棋の講座

9月上旬に東京・荒川区立第一中学校で「全校ハローワーク」が実施されました。様々な職業に就いている人たちが、その職業を選んだ理由、仕事の内容、喜びと苦労などを話して、中学校の生徒たちが自分の生き方を考えるきっかけとする、というのが趣旨です。この講座は毎年の行事で、私は昨年から参加しています。じつは、私は1966年(昭和41年)の春に荒川一中を卒業したOBでした。

写真・上は、荒川一中の校門と校舎。母校には懐かしい思い出がいろいろとあります。

当日は午前9時に体育館で全体会が行われました。全校の生徒たちの前で、28人の講師たちは壇上に並んで順番に自己紹介しました。私は「将棋棋士の田丸です。48年前にここで卒業式を迎えたみなさんの先輩です」と挨拶しました。

講師たちの職種は、医師・弁護士・公認会計士・銀行員・警察官・消防士・自衛隊員・新聞記者・書籍編集者・音楽家・声優・気象予報士・鉄道運転士・プロ野球選手・プロボクサー・テニスコーチ・ファッションデザイナー・美容師・調理師・ケーキソムリエ・介護福祉士・保育士・ガードマン・犬の訓練士など、多岐にわたっています。警察官と消防士らは制服姿で、調理師らは白い仕事着でした。なお荒川一中の卒業生は私だけです。

全体会の後、各講座は40分単位で3回行われました。生徒たちは10人ぐらいのグループに分かれ、3種類の講座を選んで受講しました。

写真・中は、将棋講座の会場となった2階の教室(田丸は右)。女子も何人かいました。

私は「小学6年のとき、ラジオで『王将』(歌・村田英雄)という歌謡曲を聴いて、将棋に興味を持ちました。そして中学2年のとき、棋士をめざして《奨励会》という将棋の専門学校に入りました。でも、これは特殊なケースです。みなさんは、進学していろいろな勉強や経験をしていくうちに、自分の将来を考えてください。将棋の修業では、負けたときや調子を落としたとき、どう頑張って持ち直すかがとても大事です。きっと受験勉強でも同じだと思います」という話から始めました。

生徒たちはメモを取って熱心に聴いていました。3年生の1人が進行役を務め、生徒たちが用意した質問を取り仕切りました。私の中学時代に比べて、全体に大人っぽい印象を受けました。私は将棋の歴史、対局の模様、研究の仕方、コンピューター将棋など、将棋の世界について説明しました。

この講座は将棋の指導はしませんが、盤と駒を持参しました。最後に「2人で戦った後、両方の駒が一緒に駒箱に入るのが将棋の文化です」という話を結びにしました。

3回の講座が終わると全体会が体育館で再び行われ、講師たちは生徒たちの拍手に送られて退場しました。その後、控室で「給食」が出ました。1ヵ所で料理をまとめて作って各学校に配達する「センター方式」もありますが、荒川一中は東京都から派遣された栄養士の献立による「手作り」の料理でした。

写真・下は、生徒たちの一番人気というキムチ炒飯(左)とワカメスープ、野菜の素揚げ、牛乳。とても美味しかったです。私の中学時代は給食がなく、昼食は弁当か購買部のパンでした。給食を食べたのは小学校以来で、51年ぶりのことでした。

私は小学5年から中学3年まで、東京・荒川区の南千住に住みました。少年時代は引っ込み思案だったので、いつも独りで遊んでいました。そんな性格のせいか、将棋は向いていたようです。覚えるとすぐに熱中し、近所の将棋クラブに通いました。そこでは賭け将棋がよく指されましたが、少年の私はただで教えてもらいました。やがて棋士になりたいと本気で思うようになりました。当時は北区の東十条に住んでいた佐瀬勇次先生(名誉九段)の家に押しかけ、弟子入りをお願いしたところ幸運にも許可されました。

私が翌年に奨励会に入れたとき、中学の担任の先生に「月2回の対局日が平日にあるので欠席させてください」と話すと、「とんでもない」と怒られました。当時の世間は将棋への理解があまりなく、「将棋指しは親の死に目にあえない」という迷信もありました。そんなとき、師匠の佐瀬は担任の先生に掛け合ってくれて何とか承諾を得ました。

私にとって、荒川にいた頃は人生の岐路となった時期でした。なお都電の荒川線で、始発の三ノ輪橋から1番目の停留所が私の母校の名前がついた「荒川一中前」です。

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コメント

NHKで放映していました「先輩によろしく」でしたか?母校の先輩が後輩のために授業をするというのがありました。今回の田丸先生(著名人)がやってきて授業をしてくれる、最高ですね。自分達が今通っている学校から著名人が出るということはなかなかないこと。将棋の九段の棋士がOB、これまたすごいことです。将棋の強い子には目標になりますね。

投稿: 田舎棋士 | 2014年10月16日 (木) 15時31分

課外授業はいいですね。悪いけれど学校の先生だけの授業では先が見えない、将来どうなるのだろうかと子供は思うのではないか。ノーベル賞受賞、宇宙飛行士などでも子供のころの思いが実現しているのがすごいです。脳外科医、俳優、芸人と皆子供の頃のなりたいとの思いを実現されているコメントがご本人からのお話に出ています(放送などで)。学校の先生を否定するものでは全くないのです。私も教師になると思ったくらいです。学校では基礎学問、社会ルール、人間関係を中心に指導されていますが、情報の氾濫している現実に子供たちがどれだけ希望を持って自分の将来を夢見れるかが難しいと思います。そんな中での様々な職にある先輩達の講演を聞けるのは大きな意義があると思います。どの職も大変厳しいものがありますが、現実に成功されている実物の人物に出会えるのは大きな収穫となるのではないでしょうか。

投稿: 千葉霞 | 2014年10月20日 (月) 10時58分

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