将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2014年5月13日 (火)

名人戦(森内名人―羽生三冠) 第3局で田丸が「ニコニコ生放送」に出演

名人戦(森内名人―羽生三冠)<br />
 第3局で田丸が「ニコニコ生放送」に出演

名人戦(森内俊之名人―羽生善治三冠)第3局が5月8日・9日に佐賀県武雄市で行われました。私はその1日目の8日、「ニコニコ生放送」に解説者として出演しました(聞き手は山田久美女流三段)。

第1局と第2局の戦型は、いずれも相掛かりでした。第3局は、矢倉模様から後手番の羽生三冠が積極的に動くと、森内名人が反発して角交換を強要しました。

写真は、森内が▲8二角と打って▲9一角成で香を取ると、羽生が△2二玉と囲ったところです。

この局面は、昨年の竜王戦(渡辺明竜王―森内俊之名人)第3局の進行と同じでした。後手番の渡辺竜王が香損を平然と受けとめて玉を囲った指し方に、多くの棋士が驚きました。駒損をした場合、挽回するために通常は攻めるものだからです。渡辺―森内戦は激闘の末に渡辺が勝ちましたが、森内は何かの考えがあって再び指したようです。

じつは、私は昨年11月の竜王戦第3局でも「ニコニコ生放送」で解説者を務めました。それから半年後の放送でも、偶然にも中盤で同じ局面に進んだのです。

写真の局面で、森内は竜王戦では▲6八玉と上げました。名人戦では▲5八香と自陣に打って中央を守りました。森内はその手まで、消費時間は1時間も使っていません。どうやら事前に研究していたようです。また、実戦例が1局だけありました。

羽生は▲5八香の局面で129分も考えました。そして△8四角と中段に打ちました。桂に連絡しながら敵陣に利かした手ですが、効果的な攻め筋が見当たりません。ちなみに将棋ソフト『激指』も△8四角を有力手に挙げたそうです。

その後、羽生は穴熊に組み替えて玉の守りを固めました。そして森内の疑問手をついて攻め込むと、終盤の寄せ合いを制して勝ちました。すべての駒が働く見事な勝ち方でした。

羽生は第3局で森内に勝って3連勝し、4期ぶりの名人獲得まであと1勝としました。第4局は5月20日・21日に千葉駅成田市の「成田山 新勝寺」で行われます。

私は「ニコニコ生放送」の解説では、1日目は盤上の動きがあまりないことから、森内―羽生の名人戦での記録やエピソードなどを紹介しました。

森内と羽生が名人戦で4期連続で対戦したのは新記録。通算9期目は大山(康晴十五世名人)―升田(幸三実力制第四代名人)の対戦とタイ記録。過去8期の名人戦の勝負は森内の5勝(2奪取・3防衛)。名人戦での通算成績は羽生の26勝23敗。先手番の成績と勝率は34勝15敗(0・694)。戦型別の成績は森内から見て、矢倉(7勝6敗)・角換わり(3勝8敗)・横歩取り(5勝4敗)・相掛かり(3勝4敗)など。※いずれも今期名人戦第3局までの記録。

森内―羽生の名人戦でのエピソードについては、番組では過去8期ごとに8題の3択問題を出しました。その中から2題を紹介します。

【問題①】
1996年の名人戦第1局で、タイトル戦に初登場した森内の封じ手での行い。
A・封じ手時刻の直前に指した
B・封じ手時刻の1時間後に指した
C・立合人に封じ手の書き方を聞いた

【問題②】
2004年の名人戦第2局で、2年前から続いた記録が更新された。
A・先手番が10連勝
B・名人が10連勝
C・挑戦者が10連勝

問題①の正解はA。立合人が封じ手時刻になったことを対局者に伝えたとき、森内は「えっ、指すつもりでした」と異義を唱えて指しました。森内と記録係の時計は少し違っていたのです。立合人は2日目の開始時、「時間は記録係の時計を基準にする」と宣言しました。後日の話では、森内は慣れない封じ手を避けたかったそうです。
問題②の正解はC。02年は丸山忠久名人が森内に4連敗、03年は森内名人が羽生に4連敗しました。04,年は第3局で羽生名人が勝ち、名人の10連敗で止めました。

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コメント

田丸先生の将棋のエピソード談はいいですね。将棋新聞に連載されていたときにも大変面白く拝見していました。対局の解説をしながらのエピソード話は退屈しないので楽しかった。解説も将棋の次の展開ばかりでは「当たるも八卦的で」そうなるのか、いや?と疲れますね。「NHK」の解説でも同じことばかり話していて、藤井さん「分からない」の連発。指し手を当てろではないので、もっと楽しい解説をと願うばかりです。

投稿: 古代子孫 | 2014年5月13日 (火) 14時35分

二日制タイトル戦一日目の解説はなかなか難しいと思います。手が動きませんから。田丸先生が登場なさる時はいつも楽しみに拝見しております。いろいろ下調べにご苦労がおありとは思いますが、次回も期待しております。

また、解説の中でも触れておられましたが、将棋世界の連載で「記録係問題」に焦点を当てて書かれたのはたいへん興味深く拝読しました。「公式戦の棋譜を正確に残していく」ことは連盟が将棋文化を守り発展させる上で欠かせないことと思います。元研修会員で今も記録を取っておられる平井さんのお話も興味深いものがありました。縁の下の力持ちに光を当てる田丸先生に敬服します。

投稿: オヤジ | 2014年5月13日 (火) 15時42分

ニコニコでの解説は田丸先生の真骨頂でした。若手棋士、女流のかけあい漫才も世代によっては受けるとは思いますが、漢字の間違い、物を知らない等は残念な時もあります。解説棋士の持ち味を出す進行をMCの女流には期待したいです。若手棋士には鋭い読みをできるだけ引き出し、ベテラン棋士からは将棋界の逸話を聞き出せるといいですね。下準備がないのかカンペやスタッフに向かっていろいろ大声で聞いていますね。これではプレミア料金は取れません。女流はもっと勉強を!ときついことをいいましょう。けっして花ではないことの自覚をもってください。期待しています。

投稿: 東京人 | 2014年5月14日 (水) 10時21分

ニコニコでの解説ご苦労様でした。ちょっと資料を手持ちだったのが気になりました。往年の名解説者の加藤治郎先生、原田康夫先生、石田先生にあと一歩というところでしょうか。現役棋士では解説名人はほとんどいません。将棋の手だけですと渡辺先生、森内先生、藤井先生、谷川先生、佐藤先生あたりでしょうか。もう少し年季が入ってくると自由に話せるのかも知れませんが、少しは面白いお話が混じるといいですね。まじめなのでしょうか。鈴木八段は一生懸命、生真面目そのもので「ほっと」はしますが今一歩ですね。師匠の大内先生を見習わなくてはいけません。大内先生も生真面目ながら名解説者の御一人です。ニコニコ(カドカワドワンゴ?)だけではなくて一般のTV(NHK以外)にも出られるキャラクターになれるといいですね。もっと真剣師の面を出しても?と思うこともありでしょう。COMに負け続けて将棋が世界一強い集団(本当の真剣師)がゆらいでいます。新手一生!マジック!不思議流!次は?名解説期待しています。

投稿: 千葉 霞 | 2014年5月16日 (金) 11時01分

田丸さんの解説はまあいい方だ。面白い。
ところで、将棋も商売だけど?「棋譜速報」「棋譜を見る」が有料なのが「名人戦」でありますな。これいうと全部の棋戦で有料視聴になりそうでまずいかもしれないが、朝日、毎日からたんまり契約金入るのに少し「しわい」なと思う。この辺は年金暮らしの楽しみにしているところなので「無料化」にならないだろうかご検討願います。ニコニコも「プレミア会員」で無料者を締め出すことが多い。角川から天才と呼ばれているニコニコの社長にしてはこれまた「しわい」若手社長ですな。田丸さんにというかこの場でしか連盟関係への提案が言える場所がないので申し訳ないとは思いつつ愚痴る始末。少し先生は太ったかな?少し運動か食事には気を付けてみてはどうでしょう。自分にも言っているつもりですわ。失礼しました。

投稿: 将棋九段 | 2014年5月17日 (土) 18時39分

女流問題、連盟のホームにいつまでも載せています。そろそろ和解できればいいのにと思います。清水さんタイトル奪取できるといいですね。清水さん、フリーの中井さんへはそろそろ「七段に推挙」される時期ではないでしょうか。あと若干名を昇段するべきでもあります。連盟女流、女子プロ協会、フリー、引退棋士(石橋さん)に対してです。推薦、推挙どういういうのかは分かりませんが、連盟からですから最高の権威、名誉であると思います。将棋の日あたりにではどうでしょうか。太っ腹の見せ所ではないでしょうか。女流の早急なる統一は無理でしょうが、今以上に親密な交流があってしかりです。ご考慮ください。

投稿: 東京散歩人 | 2014年5月19日 (月) 10時45分

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