将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2014年5月19日 (月)

タイトル戦の回数、トップ棋士のスピーチ、ニコニコ生放送のコメントについて

「升田―大山、大山―中原、中原―米長、谷川―羽生、羽生―佐藤康、森内―羽生のタイトル戦が、それぞれ何回あったか教えてください」というコメント(4月5日)は《さるさびる》さん。

前記の組合せのタイトル戦で、回数が多い順に紹介します。中原―米長・22回、谷川―羽生・22回、羽生―佐藤康・21回、升田―大山・20回、大山―中原・20回、森内―羽生・15回です。

中原―米長の対戦の内訳は、名人戦・6回、十段戦・6回、王位戦・4回、王将戦・3回、棋王戦・2回、棋聖戦・1回。米長は1993年、名人戦で中原に対して6回目の挑戦で破り、悲願の名人位に50歳で就きました。なお十段戦は竜王戦の前身棋戦です。

谷川―羽生の対戦の内訳は、王位戦・5回、王将戦・4回、棋聖戦・4回、竜王戦・3回、王座戦・3回、棋王戦・2回、名人戦・1回で、すべてのタイトル戦にわたっています。

羽生の「七冠制覇」がかかった1995年の王将戦は、3勝3敗の後の第7局が千日手になる歴史に残る死闘で、谷川が指し直し局に勝って羽生の七冠を阻止しました。そして翌年の96年、ほかのタイトルをすべて防衛して王将戦で再挑戦した羽生が、谷川を破って七冠制覇の大偉業を達成したのです。

升田―大山の時代はタイトル戦が三冠~五冠でした。それだけに20回という対戦数は、両者がいかに傑出していたかがわかります。

森内―羽生の対戦は、今年の6月から始まる棋聖戦を含めると16回ですが、いずれ22回を超えて新記録を作ることでしょう。

「羽生善治三冠のスピーチは『えー』『まあ』『その』などの不要な言葉が多すぎます。佐藤康光九段も渡辺明二冠も『まあ』が口癖になっています。トップ棋士は不快感のないスピーチを練習する必要があると思います。才能のある方々ですので、自覚と訓練で容易に習得できる技術と理解しています」というコメント(4月13日)は《シリウス》さん。同じような指摘のコメント(4月16日)が《東京人》さんからもありました。

私はタイトル戦の前夜祭や就位式の場で、羽生三冠のスピーチを何度も聞きました。簡潔なうえにつぼを心得ていて、さすがにトップ棋士だと感心しています。近年は講演や対談の機会が多いのも、話の中身が深くてわかりやすいからだと思います。だから羽生三冠の前記の口癖は、私はあまり気になりません。英語では「so、well、now」といった「つなぎ言葉」があるそうで、その一種と思っていいのではないでしょうか。もちろん不要な言葉を省けば、話はもっと格調が高くなりますが、いずれ本人が自覚することでしょう。

「『ニコニコ生放送』で田丸九段の将棋のエピソード談はいいですね。対局の解説をしながらの話は、退屈しないので楽しかった」というコメント(5月13日)は《古代子孫》さん。「2日制タイトル戦の1日目は、指し手が動きませんから解説がなかなか難しいと思います。田丸九段はいろいろ下調べにご苦労があると思いますが、次回も期待しております」というコメント(同日)は《オヤジ》さん。「『ニコニコ生放送』の解説で田丸九段が資料を手持ちだったのが気になりました」というコメント(5月16日)は《千葉霞》さん。

私は先日の名人戦(森内俊之名人―羽生善治三冠)第3局の1日目に『ニコニコ生放送』で解説者を務めました。対局者が長考して指し手が止まったときには、森内―羽生の名人戦の記録やエピソードなどを紹介しました。解説の合間に盤外の話をするのは、食事の後のデザートのようなもので気楽に聞けると思います。今年の名人戦のキャッチフレーズは「伝説を超えろ!」なので、大山―升田の名人戦でのエピソードも折り込みました。

資料の収集は2日ほどかかりましたが、将棋の歴史やエピソードを調べるのは好きなので、まったく苦になりません。そんなことをするのは棋士の中では自分だけだと思うと、張り合いがあります。資料を手に持って話すことが少しありました。できれば避けたかったのですが、資料が多かったので覚えきれず、内容を正確に伝えるためにそのようにしました。

今後も将棋界の「語り部」として、様々な形で歴史やエピソードを伝えていきたいと思っています。

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コメント

田丸先生「羽生三冠のしゃべり方までへの?」ご回答ありがとうございます。タイトル戦の数まで回答させるのは疑問です。連盟のホームの記録あたりでご覧くださいですね。それにしても名解説のコメントは同感です。今後もお願いしたいと思います。

投稿: 東京人 | 2014年5月20日 (火) 07時58分

田丸先生のブログ更新を楽しみにしているものです。

陣屋のカレーはタイトル戦専用メニューで一般客は口にすることができないと聞いたことがあります。
連盟で陣屋のレトルトカレーをぜひ作ってほしいです。
陣屋のタイトル戦をモバイルで観戦しながら対局者や関係者と同じカレーを自宅で食べる…。自分も検討室に一緒にいるような気分になれそうです。

投稿: SASA | 2014年5月20日 (火) 13時39分

名人戦4局が始まった。そんな忙しい中コメントの回答ご苦労さんでした。解説の面白さは田丸九段が受け継いでいる。原田先生の域まではいきそうですな。余談が主題を上回る中に主題をまた活かしていくその折込が様になってきました。期待大ですな。

投稿: 将棋九段 | 2014年5月21日 (水) 15時16分

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