将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2014年4月 5日 (土)

伊豆で行われた王将戦(渡辺王将―羽生三冠) 第7局で田丸が立合人

伊豆で行われた王将戦(<br />
 渡辺王将ー羽生三冠)<br />
 第7局で田丸が立合人

伊豆で行われた王将戦(<br />
 渡辺王将ー羽生三冠)<br />
 第7局で田丸が立合人

伊豆で行われた王将戦(<br />
 渡辺王将ー羽生三冠)<br />
 第7局で田丸が立合人

王将戦(渡辺明王将―羽生善治三冠)第7局が3月26日・27日に静岡県河津町「今井荘」で行われ、私こと田丸昇九段が立合人を務めました(副立合人は飯島栄治七段)。

写真・上は、対局光景。右が渡辺王将、左が羽生三冠。
写真・中は、対局番となった今井荘の外観。
写真・下は、伊豆半島の東側に広がる太平洋。部屋から一望できます。

王将戦は、渡辺王将が先に2連勝しましたが、羽生三冠が追いついて最終局に持ち込むました(勝敗は渡辺から見て〇〇●●〇●)。両者が7番勝負のタイトル戦で最終局を戦うのは、渡辺竜王が羽生名人に3連敗から4連勝して奇跡的な防衛を果たした2008年の竜王戦以来です。

7番勝負のタイトル戦の場合、5局目以降の対局場が準備万端整えて待っていても、勝敗によっては行われないことがあります。とくに第7局は確率が低いですが、実現すれば大いに注目されて盛り上ります。対局が行われない場合、対局場へのキャンセル料は支払われないそうです。その代わり、棋戦主催者が次期以降に第4局以前の対局場にして埋め合わせすることがあります。

私は第5局の後に、第7局の立合人を依頼されました。羽生三冠の巻き返しを信じて待っていたら、最後の大一番を見届けることになりました。

立合人の主な仕事は、対局前の盤駒の検分、対局開始の宣言、封じ手用紙の受け渡しと保管、記者への解説、大盤解説会に登場、局後の感想戦の仕切りなどがあります。対局中は写真・上のように、ほとんど席を外して控室にいます。立合人は何かの問題が起きたときに適切に対処するのが需要な役目で、何もなくて暇なほどいいのです。

対局者と関係者の一行は、対局前日の午後に東京駅で待ち合わせました。しかし羽生三冠は現れませんでした。私は次の横浜駅のホームで羽生の姿を見てほっとしました。羽生の自宅は東横線の沿線。渋谷から東京に行くよりも、横浜に行くほうが近いようです。

第7局では改めて振り駒をして、羽生三冠が先手番になりました。渡辺王将は後手番なら予定の作戦という中飛車に振りました。両者はともに穴熊の堅陣に玉を囲い、長期戦の展開が予想されました。しかし羽生が袖飛車で3筋から仕掛けると、渡辺は7筋と8筋の歩を突いて玉頭から攻め合いました。

棋戦担当者が気を遣うことのひとつは対局者の食事です。事前に希望や好みを聞いて食事を出します。1日目の昼食は、渡辺は「天ぷらうどん」、羽生は「わさび丼」でした。後者は、伊豆の名産の生わさびをすりおろし、かつお節と一緒にご飯にまぶすご当地グルメです。なお渡辺はわさびが苦手で、お寿司もさび抜きだそうです。

両対局者は対局前日の夕食は自室でとりましたが、1日目の夕食は関係者と一緒でした。中央に2人の立合人が座り、私の左は渡辺王将、飯島七段の右は羽生三冠と、対局者の席を左右に離すのが通例です。中央線・西荻窪に住んでいる渡辺と私は、よく利用する焼肉店やラーメン店の話で盛り上りました。羽生と飯島はゴルフの話をしていました。将棋の話は原則としてしません。しかし最後になって4月から始まる名人戦の話題に及んだとき、私は「あっ、まずい」と思いました。名人戦の挑戦者になった羽生。挑戦者を逃した渡辺。両者の立場は違います。やがて渡辺は「お先に」と席を立ちました。

渡辺王将が△7五歩と突いた手に、羽生三冠が▲同歩と取らなかったのが疑問手で、中盤では渡辺が有利な形勢となりました。羽生が7手かけて進んだ成銀と、渡辺がたった1手かけた金が交換された局面では、「割りの合わない交換だな」と思いました。

それから10手ほど進んだ局面で、お互いに金を打ち合う千日手模様の展開が予想されました。有利な渡辺王将が千日手にするとは思えませんが、立合人としてそんな事態も想定して、対局規定に目を通しました。千日手になった場合、1時間以内に指し直し、持ち時間は残り時間(2時間未満なら2時間に増やす)と定められていました。

しかし、それは杞憂でした。渡辺王将は激しい寄せ合いを制して勝ち、王将位を初防衛しました。

羽生三冠が7番勝負のタイトル戦で最終局を戦うのは18局目で、本局で10勝8敗の戦績となりました。羽生と互角に渡り合う相手ですから、そんなに勝てるわけがありません。ちなみに私が羽生のタイトル戦で立合人を務めたのは15局目で、本局で羽生の9勝6敗の戦績となりました。

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コメント

電王戦、森下ツツカナ戦はプロの負けでしたがよかったですね。やはりCOMは対森下モードでしたね。プロの方々は勘違いされてるのでは?COM相手ではなく、自分相手であるということです。データー化されたプロの棋譜をAIで戦ってくるのです。強くて当たり前です。どなたかもコメントされていましたが、羽生さん、森内さん、渡辺さんなどが相手なんです。そこを理解されないで「COMは強い」では一生勝てません。森下さんが言っていましたが、そばに盤駒を置いて検討しながら指したい。これだと間違いはなくなるでした。COMがあれこれ計算しているのと同じ原理ですね。いくらプロと言えども頭の中で1億手を読んでいるよりは、こちらの方が正直な意見ですね。番組コメントでもありましたが、COMの失敗を願うより、ヒューマンエラーをなくすためにも、森下さんの意見は大変いいと思います。先生はいかがでしょうか。ご検討ください。
先崎さんの九段昇段よかったです。先崎さんも先生も少し太りすぎに見えましたが、そろそろ高血圧、動脈硬化には気を付けてください。

投稿: 千葉霞 | 2014年4月 6日 (日) 17時06分

将棋名人戦が始まりました。が、ふと電王戦との比較になります。電王戦に負けない迫力が出るかどうかが注目です。囲碁もニュースターが出てきました注目です。囲碁もCOMソフトとの対戦は厳しそうですね。

投稿: 囲碁人 | 2014年4月 8日 (火) 12時04分

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