8月9日の対局に負けて通算700敗を喫した田丸
私は8月9日、堀口弘治七段との対局(銀河戦予選)に負けました。その結果、棋士になってから通算700敗を喫しました(540勝。勝率は0.435)。
現役棋士で1103敗という最多敗戦記録を持つ加藤一二三九段(1312勝。勝率は0.543)のように、名人をはじめ多くのタイトルを獲得したり棋戦優勝があり、通算2400局以上の対局でいまだに勝ち越していれば、1000局以上の敗戦は偉大な「勲章」といえます。※記録は今年7月末日時点。以下も同じ。
そういえば野球界では、日米通算4000本のヒットを打った大記録をこのほど達成した大リーグ選手のイチロー(ヤンキース)は、「8000回もの悔しい思いもあります」と感想を謙虚に語りました。
私も「700局もの悔しい思いは、42年間の現役棋士生活の血と汗の記録です」と語りたいところですが、ここ10年間は坂道を転げるように黒星を重ねたにすぎません。
「通算勝率と順位戦のクラスは連動している」という説を以前から唱えたのは青野照市九段。順位戦で上位にいる棋士ほど勝率が高く、勝率が落ちていくとともに順位戦のクラスも下降するというのです。
今年度の順位戦で各棋士の通算勝率を見ると、森内俊之名人と10人のA級棋士のうち8人が6割台(羽生善治三冠は7割台)。B級1組は13人のうち7人が6割台(豊島将之七段は7割台)。ともかくB級2組以上で5割以下の棋士はいません。以前にB級2組以上にいて、現在はC級1組以下(またはフリークラスに所属)の棋士の中には、勝率がぎりぎり5割台もしくは4割台という例があります。青野説を証明するデータでした。
私は棋士25年目の1996年に、通算勝率が5割を切りました。しかし順位戦だけは妙に勝負強かったのです。所属したB級1組(計16期)では唯一の4割台の棋士として、99年に降級するまで踏ん張っていました。
現在、700敗以上の棋士は、加藤九段、内藤国雄九段(966敗)、桐山清澄九段(828敗)、森雞二九段(809敗)、谷川浩司九段(736敗)、田中魁秀九段(731敗)、田丸九段。この順番は、谷川を除いて、四段昇段順でもあります(160人以上の現役棋士の中で、田丸は7番目)。
私としては、こうなったら800敗をめざしたいところです。しかしタイトル戦に登場したり、王位戦・王将戦のリーグ戦に入らないと、年間の負け数には限度があります(フリークラス棋士は順位戦に参加できません)。
私は3年後、たぶん730敗台で引退となるでしょう。勝ち数については、できるだけ増やしたいと思ってはいますが…。
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コメント
700敗ですか!
知らぬ間にたくさん負け越されていますね(失礼・・・)
A級経験ありのベテラン棋士で600勝してない棋士は珍しいのではないでしょうか?
なんとなく思いつくのは木村義徳九段くらいかな。
勝率もひょっとしたらワーストでは?
ま~『意外性の男』田丸先生らしいといえばその通りですが(笑)
引退までにもう一回NHK杯に出場してくださいね、応援しています!
投稿: ホネツギマン | 2013年8月28日 (水) 22時05分
名前の挙がった700敗以上の棋士は全員九段。一ファンの私が書くまでもありませんが、ただ単に成績が悪いだけなら現役中に最高段位へ昇るのは到底不可能だと思います。
プロの評価の1つに「対局数」がありますが、黒星というより、それも含めた対局数をこれからも積み重ねていただきたいです。
投稿: tacotaco | 2013年8月30日 (金) 19時47分