将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2013年5月13日 (月)

名人戦(森内名人―羽生三冠) 第3局で田丸が「ニコニコ生放送」の解説者に

名人戦(森内名人―羽生三冠)<br />
 第3局で田丸が「ニコニコ生放送」で解説

名人戦(森内名人―羽生三冠)<br />
 第3局で田丸が「ニコニコ生放送」で解説

第71期名人戦(森内俊之名人―羽生善治三冠)第3局・1日目の5月9日。私は「ニコニコ生放送」の将棋番組に出演し、解説者を初めて務めました。

写真・上は、大盤解説の光景。右は解説者の田丸、左は聞き手の本田小百合女流三段。

写真・下は、番組を放送したスタジオ。3台のテレビ画面には、対局中の盤面・放送中の画面・対局室が映し出されています。その手前側に、私たちがいます。

このスタジオは東京の将棋会館の5階にあります。以前は「銀河戦」の対局室や放送施設でしたが、2年前に新設された地下のスタジオに移ってからは、ニコニコ生放送の放送施設に変わりました。

ニコニコ生放送は2年前から大半のタイトル戦を中継しています。2日制の場合、1日目は対局開始の9時から夕方の封じ手まで、2日目は対局開始から終局まで、続けて生放送します。最近、NHKの衛星放送が午前中の名人戦番組をやめたのは、放送枠が2チャンネルに減った関係もありますが、ニコニコ生放送の影響もあったと思います。

ニコニコ生放送の将棋番組は、有料会員(月額・約500円)がパソコンや携帯電話などを通して視聴できます。非会員でも見られますが、視聴者が増えてくるとカットされます。

ニコニコ生放送の最大の特色は、解説者たちと視聴者が双方向の関係にあることです。解説者たちの話に反応した視聴者のコメントが放送画面にリアルタイムで流れていきます。私たちもそれを見て、話を進めていくのです。

視聴者に「形勢判断」「次の一手」のアンケートを募ったり(1分後に割合が画面に表示されます)、視聴者のメールによる質問に答えることもあります。そのほかに「解説者たちの昼食」の予想、「解説者たちの3時のおやつ」の紹介、「前回の解説者からの質問」への返事など、通常の将棋番組にはないコーナーがあります。ある意味では、一般の視聴者と共有しやすい話を取り上げているともいえます。

ちなみに、私と本田女流の昼食は「ビーフステーキ」、番組から出たおやつは「つぶ餡のもなか」、前回(第2局・2日目)の解説者の高橋道雄九段からのテニス上達法の質問には「私のテニスは将棋と同じように変則的で、実戦で鍛えています」と答えました。

ニコニコ生放送の視聴者は、コアの将棋ファンのほかに、将棋をあまり知らない一般の人たちが数多くいるそうです。だから正直に言うと、「緩くて何でもあり」という感じの番組になっています。私もラジオの深夜放送のディスクジョッキーになったような気分で、話を少し脱線させながら楽しくおしゃべりしました。

視聴者から「お互いにA級昇級がかかった21年前の順位戦(田丸八段―島朗七段)の対局の終盤」についての質問がくると、番組担当者の判断でその棋譜をすべて並べることになり、名人戦の番組なのに田丸が自戦解説をしました。その質問をした人は、「初手から並べていただけたのは望外の嬉しさでした。田丸九段の自戦解説は、本当に楽しく興味深かったです」(tacotacoさん)というコメントをこのブログに寄せました。

名人戦の1日目では、序盤で長考が相次ぐと、将棋の解説だけでは間が持てないことがあります。そこで私は事前に番組担当者に提案し、「名人戦の記録」「森内・羽生のエピソード」「名人戦の雑学」というテーマで、解説の合間に盤外の話もしました。それらを4択形式の問題にして、番組で視聴者から回答を募りました。その中から「名人戦の雑学」の問題を2問出します。4つのヒントから考えてください。※正解と解説は末尾。

【問題①】1949年の第8期名人戦(塚田正夫名人―木村義雄前名人)第5局が行われたかなり珍しい対局場。
A・上野公園。B・後楽園球場。C・明治神宮。D・皇居内。

【問題②】 1993年の第51期名人戦(中原誠名人―米長邦雄九段)で、7回目の挑戦で新名人に就いた米長が対局前に語った自身の心境を例えたもの。
A・月。B・菜の花。C・亀。D・阪神タイガース。

番組で出した問題はいずれも正解率が高く、視聴者の知識の豊かさに驚いたものです。私が解答を言う前に、コメントで説明する人もいました。盤外の話は好評だったようです。このブログにも、「ネタが豊富で楽しめました。何より準備がすばらしい! 視聴者アンケートの96%が《よかった》は、すごいことです」(K島さん)というコメントが寄せられました。

名人戦第3局は、羽生が森内に勝って1勝2敗としました。過去70期の名人戦では、2連敗した棋士が逆転勝ちしたのは6例だけです。はたして今期はどうなるでしょうか…。

【問題の正解と解説】
①は、D・皇居内。皇宮警察の武道場の「済寧館」が対局場になりました。昭和天皇や宮内庁の人たちが将棋を愛好したので実現しました。
②は、B・菜の花。「菜の花は董が立ってから花が咲く」という意味です。米長はその言葉どおりに、49歳11ヶ月の最年長記録で新名人に就きました。

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コメント

田丸先生こんにちは。2日制の対局の1日目の解説は難しいと思うのですが、そこを見越して話す材料をたくさん用意しておられたのですね。さすがです。今までに、ニコ生には多くの棋士が解説者として登場していますが、田丸先生の解説は群を抜いて面白く、耳を離せませんでした。

「済寧館での対局」については存じておりましたが、田丸先生が実際にその場に行った経験がおありとは驚きました。またニコ生に登場されるのを楽しみにしております。

投稿: オヤジ | 2013年5月14日 (火) 12時02分

田丸先生の名人戦解説を、私はニコニコ生放送ではなく、連盟の携帯サイトにある中継アプリで拝読しておりました。

私のようなズブシロの視点にも立った物腰柔らかい解説を大変楽しませていただきました。

話は変わりますが、竜王戦の6組昇級者決定戦で「田丸九段対植山七段」の対局が入りました。
田丸先生は九段になってから初の対局です。
また、植山七段は敗れたら規定により引退になります。

敗れたら引退になる境遇の対局相手を迎え撃つのは、2010年6月14日の対飯野健二七段(勝)・2012年6月5日の対櫛田陽一六段(負)以来3戦目ですが、まさか九段としての初対局がそのような形になるとは…。

田丸昇・獅子丸・ロン毛丸・ライオン丸先生が幸先いい九段棋士としての始まりを実現し、そして植山七段が悔いを残さずに引退できるよう、素晴らしい棋譜が完成することを心より願って止みません。

竜王戦での勇姿を、楽しみにお待ち申し上げております。

投稿: 柳 | 2013年5月16日 (木) 01時38分

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