将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2013年2月19日 (火)

将棋界の一門、正会員の女流棋士、師匠の佐瀬道場のコメントについて

今回は、昨年の8月から12月に寄せられたコメントについて紹介します。

「将棋界の一門の話をしていただけるとうれしいです」というコメント(8月5日)は《通行人》さん。

将棋界は相撲界や歌舞伎界などと同様に、「一門」という形態になっています。師匠―弟子の縦の関係、兄弟子―弟弟子の横の関係で構成され、枝分かれした棋士たちの系統を一体化したものが一門です。そうした一門の創始者は大正時代まで遡ります。最大の一門は関根金次郎十三世名人で、初代の関根から現代まで七代にわたり、棋士の総数は150人以上に達しています。木村義雄十四世名人、中原誠十六世名人、森内俊之名人、羽生善治三冠などの大棋士が生まれました。

ほかの一門には、木見金治郎九段(大山康晴十五世名人、升田幸三実力制第四代名人など50人以上)、川井房郷七段(米長邦雄永世棋聖、丸山忠久九段など約40人)、阪田三吉名人王将(内藤国雄九段、谷川浩司九段など約30人)などがあります。※カッコ内は一門の主な棋士。

以前の将棋界には徒弟制度がまだ残っていました。師匠は内弟子生活を送らせて、弟子を公私にわたって指導しました。また兄弟弟子同士で切磋琢磨して鍛え合いました。師弟の縦の関係、兄弟弟子の横の関係が濃厚でした。現代でも絆が深い師弟や兄弟弟子はいますが、一門の人間関係は次第に希薄になっているようです。師匠は弟子が奨励会に入会するときの「保証人」という名目的な関係も少なくありません。弟子の研究相手や私的な付き合いが必ずしも一門同士とは限りません。

以前の連盟理事選挙では、一門の棋士たちを組織票として出馬するケースが多かったですが、近年は若い世代の棋士が増えたこともあって、一門の集票力や影響力は少なくなっていると思います。

「女流棋士がタイトルを取ると、将棋連盟の総会に出る権利ができますよね。苦労して四段に昇段した棋士と女流棋士が同列に扱われるなんて、私には信じられません」というコメント(9月12日)は《ポーラ》さん。

将棋連盟は2年前に、内閣府から公益社団法人と認可されました。その際に実施された制度改革のひとつが、四段以上の女流棋士が連盟の正会員になることでした(現在では里見香奈女流三冠、清水市代女流六段など計10人)。公益性の高い団体として、男女間の差別があってはならないからです。その女流棋士たちは連盟の総会に出席し、谷川治恵女流五段は非常勤理事として連盟の運営に関わっています。

《ポーラ》さんは、私たち男性棋士と女流棋士が同列になったと思っていますが、女流棋士が男性棋士と同様に棋戦に参加して同じ待遇を受けるわけではありません。連盟の正会員として、普及活動などを一緒に推進していくのが主な趣旨です。

「米長永世棋聖、西村一義九段、田丸昇八段の兄弟弟子の3ショット写真(12月21日のブログを参照)を拝見し、東十条の佐瀬勇次名誉九段の道場で将棋を教えていただいたことを思い出しました。当時、田丸八段は17歳で、奨励会の1、2級だったと記憶しています。私が田丸八段に香落ちで指導を受けているときに、米長、西村のお二方は常連さんと指導対局を指していました」というコメント(12月21日)は《シリウス》さん。

私は1966年(昭和41年)から3年間、師匠の佐瀬名誉九段の自宅に住み込んで修業していました。17歳だったのは2年目で、奨励会の1級でした。師匠は週末に自宅で道場を開き、兄弟子の米長、西村はたまに来て指導対局をしました。私と香落ちで指したという《シリウス》さんのことは、残念ながら覚えていません。

師匠は当時、東京の京浜東北線・東十条駅の近くに住んでいて、私は兄弟子たちが内弟子生活をかつて送った2階の4畳半の部屋で寝起きしていました。以前の内弟子は家事の手伝いや子守で忙しかったそうですが、私の頃は朝の庭掃除と拭き掃除だけが日課でした。それ以外は将棋会館に出かけたり部屋で研究して、自由に過ごせました。師匠は私の部屋に来て将棋をよく教えてくれ、時には布団を持ち込んで一緒に寝たこともあります。3人の娘を持つ師匠は弟子に対して、ほしかった息子と過ごすような思いがあったのでしょう。

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コメント

田丸先生の兄弟子を追悼する、今月の「将棋世界」には感慨深いものがありました。

棋士達の中には、故人に対してあるがままの事実を、率直に語っている御仁もいて、それがかえって素晴らしく思いました。

ただ、故人の奨励会時代からのライバルであった、中原大内両氏の追悼文が無かったのは残念に思いました。50年以上の付き合いの中では、簡単には言い表す事のできない事もあるのでしょうが……


19日からの王将戦第四局中継ブログを、携帯電話で拝見していたのですが、写真や進行図(盤面)が何故か見れませんでした。何とかして頂ければ幸いです。

投稿: 秀甫 | 2013年2月20日 (水) 03時50分

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