将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2013年1月 8日 (火)

山田道美九段の評伝『熱血の棋士 山田道美伝』を刊行しました

山田道美九段の評伝『熱血の棋士山田道美伝』を刊行しました

謹賀新年。本年もこのブログのご愛読をよろしくお願いします。

昨年の10月以降、ブログの更新がすっかり滞ってしまいました。10月29日のブログの「追記」で伝えたように、私は夏の頃から書籍の執筆にずっと取り組んでいたので、ブログを書くことを休んでいました。その書籍が12月下旬に刊行されました。

写真は、私が著した『熱血の棋士 山田道美伝』の表紙。※日本将棋連盟刊。1575円。

皆さんは山田道美九段という棋士を知っていますか。大山康晴十五世名人がタイトルを独占して無敵を誇っていた1960年代に、名人戦や王将戦などのタイトル戦で大山に敢然と立ち向かい、壮烈な闘志と力あふれる戦いぶりで奮闘しました。また四間飛車に対して、▲5七銀左の形から▲3五歩△同歩▲4六銀と仕掛ける「山田定跡」を創案しました。

山田九段は理論家として知られ、序盤の研究に打ち込みました。そして大山打倒をめざして、親しい棋士たちと実戦主体の「研究会」を定期的に行いました。さらに奨励会員を集めて「山田教室」を開き、教えるというよりも一緒に勉強し合ったのです。その教室の一員が、奨励会の有段者だった私でした。

昔の将棋界では、序盤作戦の研究よりも中終盤の力が重要という風潮がありました。だから山田将棋は「形にとらわれた非力な将棋」と評価されませんでした。そんな時代に、対局で敵になりかねない棋士同士が共同で研究するのは珍しいことでした。ましてやA級棋士が奨励会員と一緒に研鑽するというのは前代未聞でした。

現代の棋士たちは、山田九段がかつて行った研究方法を取り入れています。まさに現代棋界の研究システムの先駆者といえます。

山田九段は3度目の挑戦の棋聖戦で大山を破り、念願の大山打倒とタイトル初獲得を果たしました。それから3年後の1970年(昭和45年)6月18日。「血小板減少性紫斑病」という奇病によって、36歳の若さでA級棋士のまま亡くなりました。ずっと生きていたら、その後も将棋界に大きな足跡を残したと思います。

私は「山田教室」の一員として、今までも何かにつけて山田九段のことを紹介してきました。そして山田九段の評伝を書く機会を得ると、山田の人生を改めて調べたり、関係者に会って取材しました。

本書では、人生に思い悩んだ青年時代、大山打倒に明け暮れた将棋一筋の生活、現代の棋士が見た山田将棋など、山田九段の棋士人生を書き著しました。ひたむきに生きた山田九段の生涯は、時代を超えてとても感動的です。ぜひ読んでいただきたいものです。

なお、青年時代に山田九段から影響を受け、タイトル戦で山田と対戦した中原誠十六世名人が本書の推薦者になってくれました。

では、ご愛読をよろしくお願いします。

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コメント

今日書店に行ったら書棚にありました。

サイン会とかを開催するのであればそこで購入したいと思っております。その節はこのブログで告知していただけるとありがたいです!

投稿: 名無し | 2013年1月 9日 (水) 22時39分

田丸先生が奨励会時代から私淑していたことを存じています。

それだけにこの1冊は感慨深く、ともすれば華やかなスター棋士に埋没しそうな山田九段が昭和将棋史から鮮やかに蘇ってきました。

特に「山田教室」を作って奨励会員と一緒に研鑽を積む第4章は、筆者ならではの記憶力、記録を元にした詳細な内容で、若き棋士たちの熱い青春が描かれています。

私事ですが、『現代将棋の急所』や対振り飛車急戦策「山田定跡」を、分からないながらも一生懸命勉強したことが懐かしく思い出されます。

満を持した初めての評伝、圧巻です。

投稿: 秋葉 均 | 2013年1月15日 (火) 08時59分

「山田道美伝」、刊行早々に購入、読破いたしました。田丸先生の、山田九段への哀惜の思いがあちこちから伝わってくる素晴らしい本ですね。当時の棋士の私生活がどうだったのかについても比較的多く記載されており、興味深かったです。

「将棋世界」の青野先生の連載にも、田丸先生と同じく山田九段の研究会に参加していた青野先生が「奨励会の例会を無断欠席して山田九段の葬儀に出席し、後できつく叱られた」とありましたね。

田丸先生によって、山田九段の詳細な伝記が後世に残るのはたいへん意義が大きいことと思います。


投稿: オヤジ | 2013年1月19日 (土) 19時40分

本屋で見たので少し目を通してみたのですが・・・。その内容の余りの厳しさに、すぐに挫折してしまいました。「豚に真珠」「猫に小判」を地でいく体たらくでした。

 もしも、わたしが「真珠」や「小判」の価値が理解できるようになったなら購入したいと思います。今のままでは「宝の持ち腐れ」もいいところなので、わたしごときに所有されては、本がかわいそうだと思います。内容は多分いい本だと思うのですが、「豚」「猫」たるわたしにはその価値がわかりません。その真価を分かる方に読んでいただくように切に願いをこめてコメントさせていただきます。

投稿: ayumi61 | 2013年2月20日 (水) 00時51分

ayumi61さん、こんにちは。
将棋関係の本というのは、比較的早く品切れになり、古本を探す以外なくなってしまいます。「分かるようになったら買いたいです」などと仰らずに、早めにお買いになった方が後悔がないと思いますよ。(*゚▽゚)ノ

投稿: ベアベア | 2013年3月 6日 (水) 19時11分

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