将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2012年9月 6日 (木)

棋士21年目の本田二段が女流王座戦で里見四冠を破ってタイトル戦に初登場

棋士21年目の本田二段が女流王座戦で里見四冠を破ってタイトル戦に初登場

棋士21年目の本田二段が女流王座戦で里見四冠を破ってタイトル戦に初登場

第2期リコー杯女流王座戦の挑戦者決定戦(里見香奈女流四冠―本田小百合女流二段)が9月3日に東京の将棋会館で行われました。

私は当日に会館で用事があり、昼すぎに王座戦の控室に寄って戦況を見ました。一方が四間飛車に振っていて、てっきり里見側だと思ったら、何と里見は居飛車のほうでした。里見は初手に▲2六歩と指し、角換わり将棋から斜め棒銀で攻勢に出ると、本田が飛車を4筋に振って対抗する展開となりました。実戦例の多い戦型です。

里見四冠(20歳)は今年5月に女流棋界で2人目の四冠を獲得しました。この王座戦の挑戦で五冠をめざしています。今年度の成績は6勝0敗。通算成績は0.737。

本田二段(33歳)は目立った実績はありませんが、安定した成績を残しています。今年度の勝率は7割台と好調です。女流王座戦では伊藤沙恵(奨励会1級)、上田初美女王、中村真梨花女流二段らの挑戦者候補を連破して決勝に進みました。通算成績は0.513。
※両者の成績は本局までの時点。

里見と本田の実績を比較すると、明らかに里見のほうが勝ります。対戦成績も里見の6勝0敗で、いずれも里見の振り飛車、本田の居飛車という戦型でした。

振り飛車を武器にして勝ちまくっている里見が、挑戦権がかかる本局でなぜ居飛車を用いたのかはわかりません。もしかしたら所属する関西奨励会の対局では、たまに指しているのかもしれません。いずれにしても、私は里見がやはり勝つのだろうと予想して、用事のために控室を出ました。

それから数時間後、勝負は意外な結果となりました。本田が熱戦を制して里見を破り、棋士21年目にして初めてタイトル戦の挑戦者になったのです。

写真・上は、終局直後の光景。右が本田、左が里見。

棋譜を見ると、里見は不慣れな居飛車のためか、ぎこちない指し方に感じました。一方の本田は攻めと守りのバランスが良く、終盤では寄せを急いで少しもたつきましたが、最後は見事に寄せ切りました。

本田は終局後の記者会見で「予想外の戦型となって驚きましたが、落ち着いて指せたと思います。初めて大舞台に立てるのがうれしいです。精いっぱい頑張ります」と語りました。

加藤桃子女流王座(奨励会1級・17歳)に本田二段が挑戦するリコー杯女流王座戦5番勝負の第1局は、10月20日に中国・上海で行われます。日本と中国の関係が微妙な時期ですが、両国が将棋という文化を通じて親善交流することを願いたいものです。

写真・下は、1985年(昭和60年)の女流アマ名人戦・一般戦での成績優秀者。中央は、初参加で準優勝した6歳・小学1年の本田さんです。

本田さんはその後、1992年(平成4年)に佐瀬勇次名誉九段門下として女流棋士になりました。私の妹弟子にあたります。ただ以前は話をする機会がほとんどありませんでした。今年の春からは、本田さんが私の知り合いの人たちに指導将棋をすることになり、後の打ち上げで一緒にお酒を飲むことがあります。本田さんはお酒を楽しく飲みながら、アマの人たちに何かと気配りして、丁寧な指導ぶりとあいまって評判がとても良いです。

今年の春のマイナビ女子オープンでは、16歳の長谷川優貴二段が挑戦者になって話題になりました。その一方で、本田二段のような中堅棋士が活躍することは、タイトル戦になかなか登場できない女流棋士の励みになると思います。

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コメント

本田小百合女流二段が、かつて「水戸の天才少女」と呼ばれていたとは聞いていたのですが、具体的なことは存じませんでした。6歳=小1で、女流アマ名人戦で準優勝するとは、正しく天才少女と表現する以外ありませんね。田丸先生から27年も前の貴重なスクラップをお見せ頂き、なるほどと納得しました。

今期の本田さんは他棋戦でも活躍しておられ、今回、タイトル初挑戦の栄誉を得たのは長年の精進の現われでしょう。見応えのあるシリーズを将棋ファンに見せて頂けるものと期待しています。

投稿: オヤジ | 2012年9月 6日 (木) 23時54分

こんにちわ。本田女流、ついにタイトル戦ですか。おめでとうございます!巷は『里見挑戦、濃厚』という意識だったと思いますが、先の名人戦で森内名人が『直前の公式戦11連敗後の1勝』で名人戦に臨み、防衛されたように『事前が好調不調であっても、その日、そのとき、その勝負の結果は誰にも分からない』というのが私の持論です。ですから『本田女流挑戦もありえるか』という感じで見てました。先のマイナビ挑決・清水―長谷川戦の例もありますしね。
本田女流は昔、NHK将棋講座のアシスタントをされていて、講師は兄弟子の木村一基七段(当時)。数年後お二人とは『国際フォーラム』で一緒に写りました。
木村八段もタイトル戦に何回も出ている実力者なのに、いまだ戴冠に縁がない・・・
ぜひ本田女流にはがんばっていただき『本田女流王座』になってほしいですね。
応援しています。
暑い日が続きますが、田丸先生、体調にはお気をつけて。
対局ごとにブログお願いいたします

投稿: S.H | 2012年9月 7日 (金) 16時03分

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【リコー杯女流王座戦】 http://live.shogi.or.jp/joryu_ouza/ 女流界で最高賞金額である女流王座戦の挑戦者決定戦が行われました。 ここまで勝ち上がってきたのは、いまや19歳にて女流棋界の第一人者である里見女流四冠と、タイトル挑戦未経験の本田女流二段です。 奨励会在籍中の里見女流四冠ですが、奨励会の成績も好調で、最近9戦は7勝2敗です。今後7戦を5勝2敗で切り抜ければ二段に昇段します。達成できればもちろん女性として始めての快挙です。 女流棋戦と奨励会の掛け持ちは大変で... [続きを読む]

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