今年の将棋連盟総会は議事の模様を東京将棋記者会にすべて公開
公益社団法人・日本将棋連盟の今年の通常総会が6月8日に開かれました。会場は東京の将棋会館に隣接する「けんぽプラザ」3階の集会室。
写真・下は、壇上に並んだ理事会の面々。中央には、連盟会長の米長邦雄永世棋聖、専務理事の谷川浩司九段がいます。後列には、昨年の総会で選任された外部理事の杉田亮毅さん(日本経済新聞社前会長)、小林千寿さん(日本棋院常務理事)、渥美雅之さん(棋道師範)などがいます。
写真・上は、開会前の光景。中例の左側には、扇子を広げる羽生善治二冠がいます。その右側には、1人おいて森内俊之名人がいます。両者は総会の翌週に名人戦第6局で対戦し、森内が勝って名人位を防衛しました。羽生・森内の前列には、佐藤康光王将(中央)と渡辺明竜王(右)がいます。それにしても4人のタイトル保持者が座った位置は、それぞれ微妙な距離感を保っています。前列の左側は女流棋士の指定席で、清水市代女流六段(左)と甲斐智実女流四段が談笑しています。
総会は午後1時に開会しました。まず米長会長が挨拶し、次に会長から議長の指名(宮田利男七段、浦野真彦七段)、新四段の紹介(高見泰地四段、藤森哲也四段、斎藤慎太郎四段、八代弥四段)と続きました。
例年はその時点で、報道陣が退室します。しかし今年の総会では、東京将棋記者会(竜王戦、名人戦などの棋戦の担当記者が加盟)のかねてからの要望と、連盟が公益法人として運営の透明性を図るために、議事の模様を開会から閉会まですべて公開することにしたのです。
ただ正直なところ、連盟総会での話し合いの雰囲気は決して高尚とはいえません。時には個人的な欲望を丸出しにしたり、不平不満で怒号を飛ばす棋士もいます。そんな場を見られるのは恥ずかしい気がします。逆に言えば報道陣に公開することで、少しは穏やかになるかもしれないと、私はひそかに期待しました。
理事選任の議題では、新たに深浦康市九段、藤井猛九段、杉本昌隆七段の3人が非常勤理事に選ばれました。主な仕事は、タイトル戦の節目の対局(一方の棋士が勝つとタイトルを防衛または奪取)への出張です。従来は常勤理事が務めていましたが、仕事が重なったり対局場が遠方だと、かなり大変だったそうです。タイトル戦の対局には必ず立会人の棋士がいますが、棋戦主催者側は理事の同席も求めていました。そこで前記の3人の棋士が交代で理事として同席し、併せて解説もすることになったのです。
総会の議事は順調に進みました。しかし自由に質問できる最後の議題の「その他」では、一部の棋士が米長会長を辛辣に批判して、紛糾した事態になりました。ただそれらの意見は、将棋界の大本に関わる建設的な内容ではありませんでした。大方の棋士はそれがわかっているので、同調する動きは皆無でした。
やがて議長が事態を収拾するために発言を打ち切り、午後4時ごろに閉会となりました。総会後の記者会見で米長会長は「例年に比べて穏やかに治まった」と語りました。
私は、連盟の総会を傍聴した報道陣がどのように受け止めたのか、翌日の新聞が気になりました。しかし「大荒れの総会」というような記事は見かけませんでした。メディアは紙面に取り上げる内容ではないと判断したのでしょう。
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コメント
「一部の棋士が米長会長を辛辣に批判して、紛糾した事態になりました」については、報道を仕事にしているマスコミが「報道価値なし」と判断したのですから、田丸先生がブログで細部を説明なさる必要もないでしょう。
私としては
「連盟総会での話し合いの雰囲気は決して高尚とはいえません。時には個人的な欲望を丸出しにしたり、不平不満で怒号を飛ばす棋士もいます。そんな場を見られるのは恥ずかしい気がします。逆に言えば報道陣に公開することで、少しは穏やかになるかもしれないと、私はひそかに期待しました」
の方について、田丸先生のご著書なりブログなりでご解説頂ける日を気長にお待ちしております。
投稿: オヤジ | 2012年6月18日 (月) 12時21分