将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2012年6月23日 (土)

昨年の11月に東京・吉祥寺から移転して新規開店した「将棋サロン荻窪」

昨年11月に東京・吉祥寺から移転して新規開店した「荻窪将棋サロン」

昨年11月に東京・吉祥寺から移転して新規開店した「荻窪将棋サロン」

写真・上は、東京の中央線・荻窪駅の北口から徒歩1分のビルの2階にある「将棋サロン荻窪」の光景。経営者の新井敏男さんは、昨年の夏まで同じ沿線の吉祥寺駅前で「将棋サロン吉祥寺」を10年以上も開いていました。そして昨年の11月に荻窪に移転して新規開店しました。ゆったりとした30坪の広さと明るい照明で居心地が良く、将棋サロン吉祥寺の常連と女性を含む新しいファンが楽しそうに指しています。※電話は03-3220-5247

将棋サロン荻窪の師範は、将棋サロン吉祥寺で長年にわたって教えてきた谷川治恵女流五段。丁寧な指導ぶりはとても好評です。豊川孝弘七段もたまに指導しています。私も当サロンとは関係が深く、奨励会員の井出隼平三段(21歳)と近藤祐大4級(14歳)とは、新井さんの仲立ちで師弟の縁を結びました。

新井さんは子どもへの将棋普及に熱心で、春休みや夏休みに将棋大会を開くのが恒例でした。また、棋士をめざす奨励会員や女流棋士をめざす研修会員にも理解があります。彼らは毎日のように将棋サロン荻窪に集まり、仲間との実戦で腕を磨いています。私の弟子の井出は小学生時代から通い続け、今でも勉強の場にしています。そんな日々を送ってきたせいなのか、荻窪に移転するまでの休業期間に三段リーグで6連敗もしました。

写真・下の右は、私の友人であるお天気キャスターの森田正光さん。今年の春、将棋愛好家の森田さんを将棋サロン荻窪に誘いました。アマ三段の棋力がある森田さんは、普段はパソコンの将棋ソフトを相手に指しているそうです。久しぶりに人間と指した「生将棋」では、真剣な表情で盤に向かっていました。

昔の将棋雑誌を見ると、将棋クラブの広告が数多く載っていました。中でも東京・新宿の歌舞伎町にあった「新宿新宿センター」は、毎日500人もの将棋ファンが来てとても盛況でした。そんな光景を見て、自分で将棋クラブを開いた人もいました。

しかしその後、日本一といわれた新宿将棋センターでも入場者が次第に減っていき、数年前には経費節減のために西口に移転しました。そして将棋クラブ「経営の神様」と謳われた金田秀信さんが経営権を将棋連盟に譲渡し、現在は連盟の直営道場になっています。ほかの将棋クラブでも、経営難で閉店したり、赤字がずっと続く状況のようです。

将棋クラブの経営が苦しくなったのは、もちろん入場者が減ったからです。その原因は、将棋ファンの減少と高齢化、ネット将棋の普及、若い世代の将棋離れ、趣味の多様化、売り上げと見合わない高額家賃、景気の低迷などが考えられます。

私は東京の中央線沿線に長年にわたって在住しています。昔は新宿から下り方面に、新宿・大久保・東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪・吉祥寺・国分寺・立川・八王子などと、「各駅停車」みたいに将棋クラブがありました。

しかし昨年はじめには、中央線沿線の将棋クラブは新宿・吉祥寺・八王子の3店に減っていました。さらに夏には将棋サロン吉祥寺が経営難によって閉店しました。経営者の新井さんは当初、まったく辞めるつもりだったそうです。ただ改めて再考したり、再開を要望する声もあって、荻窪で新規開店することにしたのです。

現代ではネット上で将棋を指す人が増えています。しかし人間同士が頭を突き合わせて指すことも楽しいものです。ぜひ近くの将棋クラブに行って指し、将棋クラブが存続できるように協力をお願いします。

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コメント

3年ほど前ですが、自宅から自転車で10分ぐらいの所に将棋クラブが開業しました。
今まで電車に1時間のところまで通っていたので、近場にできて嬉しいなあ、と思っていたところ、わずか3ヶ月で閉店してしまいました。
確かに客入りが悪く、私が初めて行った時は平日の昼間ということもあり、対局相手がいないほどでした。
席主さんが電話で知り合いの方を呼んで対局したのを覚えています。

そういう状況を鑑みるに、やはり同上経営というのは大変なんでしょうね。

投稿: 将棋中級者 | 2012年6月24日 (日) 09時58分

こんにちわ。私は大阪府民なので、東京、関東関連の将棋クラブ事情は分かりませんが、大阪では『棋友会将棋クラブ』というのが、大阪市蒲生(がもう・京橋の隣)にオープンしました。
私も行きましたが、元奨励会員の方がスタッフで、女性スタッフも多く、オープン記念イベントには谷川・東両御大(専務理事と常務理事)に村田女流(棋士会・副会長)まで呼ばれていましたので、お近くの方はどうぞ。

・・・しかし、写真を見ると女性も熱心に将棋対局にがんばっていますが、大阪ではありえない光景です。
大阪、いや西日本では女性は男性に混じって将棋を楽しむ事はありません。
男性を全く信用していないからです。
性犯罪(セクハラ、チカン、ストーカー等)を鵜呑みにしているからです。
関西会館での『関西女流アマチュア名人戦』は男性入室禁止ですし、秋には同所にて『関西女性ファンの集い』というイベントもありますが、ホント男性を避けて避けて避けまくった行為です。
『男と一緒にいたら何されるか分からない』
『ジロジロ見てくるし、息もくさいし、変に口出ししてくるし・・・』
『道場や連盟、イベント関係者の人もそんな男取り締まらないからとても不安。将棋はやめます』
過去に将棋をやめていった女性達から聞いた意見です。
だから西日本には女流棋士や女性アマ強豪が少ないのです。

入場者が減ったから道場経営が立ち行かなくなってきた、という意見もありますが、もう一つ『若い男女が道場、イベントに来なくなった、若い男女が来て、楽しめる、そうした環境がいまだできていない』というのも一つの原因だと思います。

長寿社会と言っても、人間の寿命には限界があります。

常連客の寿命が尽きたとき、果たして中年、若手、十代の若者達は道場、イベントに来るのでしょうか?
長くなりましたが、今回『将棋界の未来』について考えさせられました。

投稿: S.H | 2012年6月24日 (日) 23時13分

田丸八段こんにちは。

私は学生時代(20数年前)に吉祥寺将棋クラブでアルバイトをしておりました。今と違い、ネットもなければファミコンが出始めた頃ですから将棋を指す、と言えば人と決まっていた時代です。

手合い係としてお客様を見てきましたが、どんなに時代が進化?しても人と指す以上の事は得られないのではないか・・・と今でも思います。

礼に始まり礼に終わる、当たり前の事をネット将棋で育った方は一体、どれ位出来るのか疑問に思います。

中学生の頃には厳しい席主が居て態度が悪いと叱られましたし、また中学生に負けてもしっかりと頭を下げ[負けました]と言う大人には感銘を受け、将来はこんな大人になりたいな・・・と思ったものです。逆に無礼な大人は反面教師にしましたが(笑)

確かに道場に入るには勇気が要ると思います。経営も本当に大変と聞きます。

日本の素晴らしい文化である将棋を道場と言う血の通い合うフィルターの繁栄を願うばかりです。

投稿: 関東のホークスファン | 2012年6月25日 (月) 10時06分

私も中央線沿線に居ました。30年以上前のことです。
中野は、南川義一さんの道場があり、たしか当時奨励会6級の青年が住み込みで手合い係をやっていました。
阿佐ヶ谷の道場は、師範が大内延介六段でした。
ところで、高円寺に道場があった記憶がありません。何処にあったのでしょうか? もう少し後年になりますが、駅近の喫茶店で、森本レオさん、林葉直子さんと指したことがあります。

投稿: なべよ | 2012年6月26日 (火) 12時32分

岐阜在住ですが昔高円寺に住んでいて懐かしく感じます。
息子が通っている将棋道場の常連の子が昨年小学生名人になり関西奨励会に入りプロを目指しています(宮嶋健太4級)
私も飛車落ちでボロボロに負かされたものです。
将棋道場は底辺拡大になくてはならない存在でありその道場主さんも1回500円という経費を引いたら儲けはないだろう、という値段でされておられます。
地価の安い岐阜だからやっていけているわけで都市部では大変と思います。
本当に頭の下がる思いで私もネットをやめて道場に行こうと思います。

投稿: こうめい | 2012年6月29日 (金) 12時17分

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