元奨励会員の記事、平手の指導対局、田丸―櫛田の師弟戦のコメントについて
私が『週刊将棋』で連載している「丸の眼」の記事では、今は作家、テレビ局員、カメラマン、ラーメン店主、マッサージ師、競馬ライターに転身して活躍している元奨励会員の人たちを紹介してきました。その人たちを取材して気がついた共通点は、奨励会で棋士をめざして修業した経験が社会に出てとても役立ったということでした。
「元奨励会員が第二の人生で輝ける話に、何かほっこりします」というコメント(4月9日)は《むら》さん。「私も若いころ、小説で生活する夢を追っかけていた時期がありました。棋士になる夢に挫折しながらも、輝いた人生を送っている元奨励会員のお話は励まされますね」という内容のコメント(同日)は《元作家志望》さん。
中でも家田健司さん(30歳・奨励会元3級)が2年前に東京・浅草橋で開いた、つけ麺ラーメン店『素家』(そや)に実際に食べに行き、その美味しさを絶賛するコメントが寄せられました。
「人柄の良さを反映した丁寧に作られたつけ麺は、リンゴ酢を絡めるとまた違った味わいで良かったです」というコメント(4月10日)は《関東のホークスファン》さん。「東京に行ったときは、何回か食べに行っています。旨いんですよ」というコメント(4月12日)は《深田有一》さん。「関西在住の私は、5月26日(土)に『将棋ペンクラブ交流会』が東京の将棋会館で行われるので、それに参加して翌日に行こうと思います」というコメント(4月9日)は《S.H》さん。なお『素家』の営業時間に注意してください。土曜日は午後3時までで、日曜日は定休日です。
「指導対局で平手を希望する人が増えているそうですが、これは驚きです。私は田丸八段に2枚落ち~飛香落ち~飛落ちで数十局ほど教えていただきました。私が棋士の方に胸を借りたのは、強くなりたいとの気持ちもありましたが、それ以上にプロの真髄や感覚に触れてみたいと思ったからです。上手の玉を追い詰めたとき、プロが発揮する受けの技とかわしのテクニックは絶妙でした。勝ち負けよりも、その感動こそが無上の幸福でした。平手ではその感動を味わえません」という内容のコメント(5月8日)は《ギタリスト》さん。
《ギタリスト》さんはプロのギター奏者・指導者で、いかにも芸術家らしい内容のコメントです。アマがプロに指導対局を受けるのは、強くなりたい、プロの奥儀に触れたい、普段の実戦に生かしたいなど、様々な目的があります。いずれにしてもアマは駒落ちで指導を受けるのが原則ですが、棋力向上につながることなら、私は平手の手合いも応じることにしています。ただ先日の「職団戦」での無料の指導対局では、平手は遠慮してほしい、というのが私の実感です。アマがプロに平手の指導対局を受けるのは棋力向上が目的で、そのために指導料(金額は問いません)を払うのが本来の形だと思います。
「田丸八段とお弟子さんの櫛田陽一六段との対局が決まりましたね。櫛田六段の『介錯』をすることになり、非常に複雑な心境だと思われます。正直な気持ちをお聞かせいただければ幸いです」というコメント(5月12日)は『popoo』さん。
竜王戦6組・昇級者決定戦の2回戦で、私と櫛田六段の対局が決まりました。師匠と弟子が公式戦で戦うというのは、個人競技の将棋界では決して珍しいことではありません。実際に私と櫛田の対戦は、過去に2局ありました。1993年のNHK杯戦、2009年の銀河戦で、いずれも櫛田が勝ちました。
将棋界では、弟子が師匠に勝つことを「恩を返す」といいます。師匠の指導と薫陶のおかげで、弟子はこれほど強くなりました、と感謝を表する意味です。しかし師匠が現役棋士であれば、負ければやはり悔しい思いをします。正直なところ、師弟戦の対局はしたくありません。しかも6月上旬に行われる3局目の師弟戦は、櫛田にとって(私にとっても)重要な対局になります。櫛田が負けると、現役引退に追い込まれるからです。
田丸―櫛田戦の師弟戦、引退規定については、次回のテーマとします。
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コメント
いつも楽しく拝読しております。
さて師弟戦ですが、田丸8段の文章を読んだだけでも弟子にたいする思いが伝わります。ましてや筆舌に尽くせない、二人だけの思いは私の想像以上のものと察します。
もの凄い運命のいたずらともとれますが個人的には双方にベストを尽くして頂きお二人にモヤモヤが残らない勝負を期待します!
正直に申し上げますと、私は櫛田四間飛車に憧れ(今も)振飛車党になりました。角交換型も良いですが職人の匂いがする櫛田将棋は学生時代から大好きです。
きっと携帯中継もあると思います!良い将棋を期待してやみません。
多少、本題から外れましたがお許し願えればと存じます。
投稿: 関東のホークスファン | 2012年5月15日 (火) 20時17分