将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2012年3月26日 (月)

「順位戦」制度の問題点へのコメントについて

前回のブログで、5人もの全勝者が出た今期「順位戦」をテーマにしたところ、制度の問題点を指摘したコメントが多く寄せられました。

とくにC級2組では、菅井竜也五段が上位の順位で9勝1敗の好成績を挙げながら、3人の全勝者が出たために昇級できない結果となりました。

「菅井五段が哀れです。今後は、B級2組~C級1組で全勝者が2人、C級2組で全勝者が3人出た場合に限り、1敗の最上位者も昇級できる制度はいかがでしょうか」という内容のコメント(3月23日)は《S.H》さん。「昇級者を増やす、次点・2回で昇級できる、などの制度変更が必要な時期と思います」という内容のコメント(3月21日)は《masa》さん。

菅井五段が9勝1敗で昇級できなかったことについて、読売新聞の将棋欄で「順位戦の制度に問題がある」と論評されたそうです。もし《S.H》さんの案のような特例規定があれば、菅井は昇級できました。《masa》さんの案なら、次期順位戦では4位以内で昇級できます。

しかし、どんな制度でもいえることですが、「特例」はなるべく作らないほうが望ましいと思います。そもそも約65年の順位戦の歴史において、同じクラスの昇級者全員が全勝というケースは、今期が初めてでした。そんな稀有なケースのために、制度化する必要はないと思います。ただ降級条件を緩和した「降級点」の制度があるので、次点・2回で昇級という「昇級点」はあってもいいと思います。なお三段リーグでは、次点・2回でフリークラス編入の条件つきで四段に昇段できます。

「順位戦のC級2組の人数が多すぎる問題は、何とかしなければいけない時期にきているように思います」というコメント(3月25日)は《オヤジ》さん。「C級2組にしてもほかのクラスにしても、対戦相手の運・不運(抽選結果)が昇級に大きな影響を与えないシステムを希望します」というコメント(3月26日)は《masa》さん。

今期のC級2組の人数は、各クラスで最多の44人。昇級は約15倍の競争率です。確かに大世帯ゆえの厳しさがあります。毎年、4人の新四段が入ってきます(ほかにC級1組からの降級者)。一方で、C級2組からの降級者、フリークラスへの転出者、引退者などが出ていきますが、年間で4人より下回ります。入れ替えで前者が多ければ、人数が増えていくのはもとより明らかです。

しかし実際のところ、C級2組の人数は増えてないのです。20年前の第51期は55人でした。その後、54人、48人、50人、51人、49人、47人、45人、44人、42人、45人、44人、47人、45人、47人、45人、43人、44人、42人、44人(今期)と推移しています。

これらの数字を見てわかるように、C級2組の人数はむしろ減少傾向にあります。その原因は、厳しい勝負の結果、「負け組」の棋士が降級したり、フリークラス転出を余儀なくされる(田丸はその1人)ケースが意外と多かったからです。

C級2組の問題点は、とても複雑で深刻なものがあります。対戦相手の抽選のことも含めて、次回のテーマとします。

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コメント

いつも楽しく拝見しています。
全勝って珍しいのですね。A級は中原さん(8勝)、森内さんと羽生さん(9勝)というのは知っていましたが、下のクラスは知りませんでした。案外、B1組の全勝がA級より難しいような気がするのですが、どうなのでしょうか?

くじの運・不運は田丸先生のおっしゃる通り、ある程度は仕方ないと思います。
「今期当たった人は来期当らない」とか「同門対決はラスト・ラス前では当たらない」とか、このようなルールが有ったように記憶していますから。

C2組の棋士が増えていないことは知りませんでした。これからも興味深い記事を楽しみにしています。

投稿: ヨッシー | 2012年3月26日 (月) 17時57分

最近久々に将棋に興味を持ち直した初老のおっさんです。
真部さんの対中原3連勝(?)、全棋士中ただ1人の勝ち越しの頃が懐かしいですね。
田丸さんのブログも全部読ませていただきました。
将棋を指すより読み物の方が好きなので、
屋敷九段の19年や、深浦九段の二度にわたる4勝5敗の降級など興味深い事実を知りました。

さて順位戦の昇降級に関する制度ですが、単年度の9勝1敗や8勝2敗での頭跳ねでは運が悪かったね、
で済ませてきたように思います。そういう厳しさを乗り越えたり、つぶれたりした方を、奨励会時代を含めて、たくさん見聞して来たのでしょうから。
C2で9勝、C1以上なら8勝を挙げれば通常なら昇級できるにもかかわらず、2年連続8勝以上を挙げても昇級できないのでは制度がおかしいのではないかと思います。
そのクラスでは抜けた実力を備えた人を昇級させるのが目的の、制度・規定だと思うのですが。

1)C1C2では、2年連続8勝以上は昇級、という規定を加えてはいかがでしょうか。

または昇降級枠を機械的に決定するには次のような方法はいかがでしょう。
2-1)B2からC2まで各クラスの人数を10で割って四捨五入した数字を昇級枠。
   25人から34人までなら昇級は3人。約10人に1人は昇級。
2-2)B1の降級枠はB2の昇級枠と同じで、年度始めに決まる。
   B1の13人定員12局は固定なのでしょうから降級枠は最大4に設定。毎月1局の意味は薄れているのだから12人11局の総当りでもいいように思いますが。
   昇級、残留、降級のバランスが取れていればよい。女流名人位戦B級の入れ替わりは、激しすぎる。
2-3)降級点はクラス人員を5で割って余りを切り上げ。
   26人から30人までなら降級点は6人。ほぼ、1人ふやすということですね。
2-4)B2からC2までで、人員の逆転が生じた時点で見直す。

以上、業界の外にいるおっさんの思いつき、妄想、チラウラかな。

投稿: ことぶき | 2012年3月26日 (月) 22時30分

初めて投稿します。
棋界の裏話等が面白くたまに来て読ませて頂いております。

順位戦はいろいろ議論がありますね。

しかし、各クラスの人数がそれほど変化していない、ということは、現在の昇降級枠が絶妙なバランスを保っている、という証拠なのでしょう(フリークラスへの転出も加味してのバランスだと思いますけど)。
従って昇降級枠を変えるとなると、人数のバランスが崩壊する危険性が高いと思います。

あと、システムを色々複雑にすると、棋士達だけでなくファンのほうも理解できなくなるおそれがあり、それこそファン離れの危険があると思います。

問題はありますけど、今の順位戦のシステムはシンプルかつ少々厳しめでちょうどいい気がします。ベストではないけどベターかと。
一時の勢いで一気にあがれるよりも、本当の実力者だけがあがれるシステムのほうがやるようも見る方も良いのではないでしょうか。

最後に、読売の順位戦批評ですが、読売は順位戦のライバル?である竜王戦の主催紙であるので少々色眼鏡を掛けてみる必要があると思ってます(順位戦が問題⇒竜王戦のシステムがすばらしい、という裏の意図?)。問題があるのは確かなんですけどね。

乱文失礼しました。

投稿: 通行人 | 2012年3月26日 (月) 23時29分

順位戦ですが、
C2組で全勝者が4人以上出た場合はどうなるのでしょうか。
4人目以降は、たとえ全勝でも昇級できないとなると、
いくら勝っても初めから昇級できないシステムとなり問題だと思います。
見解を記してもらえれば幸いです。

投稿: むら | 2012年3月27日 (火) 09時55分

田丸先生、コメントを頂き有難うございます。

「しかし実際のところ、C級2組の人数は増えてないのです。20年前の第51期は55人でした。その後、54人、48人、50人、51人、49人、47人、45人、44人、42人、45人、44人、47人、45人、47人、45人、43人、44人、42人、44人(今期)と推移しています。」

え!そうなんですか!
人数の推移の確認もせずに、至らぬことを申し上げてしまい、穴があったら入りたい…

「C級2組の問題点は、とても複雑で深刻なものがあります。対戦相手の抽選のことも含めて、次回のテーマとします。」

ありがとうございます。次回の更新が楽しみです。

投稿: オヤジ | 2012年3月28日 (水) 21時26分

こんにちわ。先生コメントありがとうございます。
ただ、私の意見は後もあって『昇級後はそのクラスの一番下、B2・C1なら降級点棋士より下、B1なら張り出し扱い、そして降級者、降級点者は通常より1名増加』でして、これなら『特例昇級なんていいな~』とはいかないと思うのですがcoldsweats01。先生は、特例は作らないほうが望ましいとおっしゃいますが、今回こうした事態が起きた事は事実です。確かに稀有なケースですが、今後も起こらないとはいえません。極端な話、来期も全勝者3名出て1敗者1人なら「以前こうした事態が起きていたのに、何の議論も対処もしていないのか。将棋界は同じ失敗・問題をまた繰り返しているのか」と、言われかねません。
世間は『過ぎたこと』を、よくほじくり返すものですからcoldsweats02
会社・企業では、こうなると一大事で大打撃ですcoldsweats01
あさってで新年度。順位戦が始まるまで2ヶ月の間、連盟内で討論・議論し、改良されることを期待します。
今回は生意気な言い方になりましたが、『将棋界の未来』のため論じました。ご容赦お願いいたしますweep

投稿: S.H | 2012年3月30日 (金) 16時22分

私個人としては、現状のままで良いと思います。頭ハネ等の不運があろうが、本当に力のある人は必ず上がって行くと思います。

投稿: 馬が舞う | 2012年3月30日 (金) 19時28分

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