36年前の11月17日の第1回「将棋の日」イベントは大相撲の会場で開催
将棋連盟は今から36年前に、11月17日を「将棋の日」と定めました。
江戸時代中期から毎年11月17日には、将棋の家元の棋士が江戸城内の御黒書院において、将軍の御前で将棋を披露するのが恒例となっていました。その「お城将棋」の式日にちなんで、将棋の記念日としたのです。
1975年(昭和50年)11月17日。第1回「将棋の日」イベントが東京・台東区の「蔵前国技館」で開催されました。当時は大相撲の本場所が開かれていたその会場で、将棋イベントが行われたのはもちろん初めてのことでした。
当日は青く澄みきった秋晴れでした。国技館の周囲は早くから長蛇の列ができ、開会時刻の午後3時には1万人を収容する館内は多くの将棋ファンで埋まりました。
写真は、会場の光景。矢倉と土俵が見えて大相撲の本場所と何ら変わりません。しかし、よく見ると土俵上の様子がちょっと違います。じつは将棋を指しているのです。
第1回将棋の日イベントでは、第1部が記念式典でした。木村義雄十四世名人の挨拶、中原誠王位の就位式、現役の名人経験者、九段の棋士の紹介(中原名人、大山康晴棋聖、塚田正夫九段、大野源一九段、二上達也九段、加藤一二三九段、内藤国雄九段。※欠席者は除く)などの式次第が土俵上で行われました。
第2部は記念対局。プロ・アマ混成のリレー対局が行われました。プロは二上九段、加藤九段、大内延介九段、有吉道夫八段。アマは75年のアマ名人戦、学生名人戦、高校選手権戦の優勝者、職団戦A級チームの主将。
そして超目玉企画が、中原十段に大山棋聖が挑戦しているタイトル戦の十段戦の対局でした。当日は第2局の1日目で、午後3時すぎに対局を中断すると、東京・広尾「羽沢ガーデン」から国技館に対局場を移したのです。それが写真の光景です。その詳しい話と土俵上での対局写真は、次回のブログで紹介します。
観衆は約8000人でした。入場無料とはいえ、平日の午後にそれだけ多くの人たちが集まったのはとても素晴らしいことでした。私は写真を撮っていて、将棋ファンの食い入るような視線が印象的でした。なお、4メートル四方の大盤が写真・右側に設置されました。
じつは、将棋の日の制定を最初に言い出したのは芹沢博文九段でした。芹沢は当時、連盟の広報担当のような仕事をしていて、将棋を世間に広めるにはどうしたらよいかと、いつも考えていました。将棋の日イベントでも、企画立案・外部との折衝・裏方の采配など、様々な面で尽力しました。NHKにもテレビ放送の件で交渉し、イベントの約1週間後には教育テレビで放送されました。芹沢という名プロデューサーがいたからこそ実現したイベントでした。
私は8月から10月にかけて、12月中旬に刊行する読み物主体の将棋の書籍の執筆に取り組んできました。その関係でブログの更新が遅れてしまいました。もう少しで通常のペースに戻りますので、ご理解のほどをお願いします。書籍の内容については、近いうちに紹介します。
次回も、第1回将棋の日イベント。
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コメント
こんばんは。すばらしい写真ですね!
重厚な雰囲気がとても印象的です。
将棋ファン歴が浅いものですから、今回のお話に関してはまったく知りませんでした。
たいへん興味深いです。
最近で言うと米長会長がさまざまな催しや試みを見せてくださっていて、
現代将棋界の「名プロデューサー」なのでしょうか・・・?
新書籍の発売がとても楽しみです!
もちろん、これからもブログ楽しみにしております。
がんばってください。
投稿: イトウ | 2011年11月16日 (水) 03時40分
こんにちは、石川梵です。
今日は久しぶりにお会いできて嬉しかったです。
ご紹介いただいたブログに早速アクセスしました。
読み応え充分で、吉永さんのお話しや、大山、升田両先生のツーショットなど、興味深く拝読しています。
また、お会いできる日を楽しみにしています。
投稿: 石川梵 | 2011年11月18日 (金) 01時20分