「棋士派遣」で行った青森はねぶた祭りの前夜祭で盛況
私は7月の末、将棋連盟が実施する「棋士派遣」の事業で青森市に行き、ある団体の将棋大会の審判と指導対局を務めました。
青森県は昔から将棋が盛んでした。中でも実業家で県内の支部長だった中戸俊洋さん(現・棋道師範)は、タイトル戦や女流棋戦の対局の誘致、数多くのプロ棋士の招聘、大山康晴十五世名人の記念館の建設、地元テレビ局でアマ棋戦の協賛、「将棋天国」という雑誌や詰将棋集の出版など、約35年前から私財を投じて将棋の普及に貢献してきました。
中戸さんは、とくに子どもたちへの普及活動に尽力しました。今でこそ全国各地には子どもたちへの普及を熱心に進める指導者は多いですが、その草分けとなったのが青森の中戸さんでした。現在は、その活動を引き継いだ人たちが頑張っています。
青森の将棋大会には、今年の夏の全国大会に青森代表で出場するという小学生と中学生が来たので指導対局をしました。飛車落ちは上手が勝ったのですが、平手はどちらも終盤で逆転負けし、彼らの勝負強さに驚きました。さらに同伴した両者の母親に2枚落ちで指導すると、基本がじつにしっかりしていてうまく負かされました。母子で将棋大会に参加するところに、青森の普及状況が象徴されています。
今年の名人戦は第4局で、弘前城築城400年を記念して県内の弘前市で行われました。また、青森県知事の三村申吾さんは熱心な将棋愛好家として知られています。今後も青森県は、将棋がますます盛んになるでしょう。
将棋大会の当日は、夏の恒例行事の「ねぶた祭り」の前夜祭で盛況でした。上の写真のように、木や竹で作った枠に武者、鬼面、守護神の絵を張った大型の山車灯篭が何台も街中を練り歩きます。夕方になると太鼓や鉦の音が響き渡り、法被を着た人たちが街に繰り出して「ラッセラー」の掛け声とともに踊っていました。
私は大きな祭(三社祭、祇園祭、七夕祭など)には、それほど興味はありませんでした。しかし鳴り物が響き渡ってくる現場にいると、体の中に熱いものが流れているような興奮を覚えました。その日は前夜祭なのでゆっくり見られましたが、祭の期間中は観衆であふれて歩けないほど混雑するそうです。
旅先での楽しみは郷土料理です。私は長い飲兵衛(のんべえ)生活の経験を生かし、初めての土地でも安くて美味しい店を見つけるのに長けています。青森でも店構えと看板を見て、ある店に目をつけて入ったら当たりでした。
青森の地酒は「豊盃」「田酒」「東北泉」「白神」「竜飛」などがあり、酒器に並々とついでくれました。魚は津軽湾や日本海で採れた天然のヒラメ、ボタン海老、黒メバル、ホタテ貝、ツブ貝の刺身などで、盛り合わせで980円の廉価でした。そして締めは大間崎の本マグロの鉄火巻。まさに至福のひとときを過ごしました。
私は青年時代、夏には毎年のように北海道に遊びに行きました。時間はたっぷりあったので飛行機には乗らず、東北本線(上野〜青森)・青函連絡船(青森〜函館)・函館本線(函館〜札幌)と、列車と船による長旅を楽しみました。青森は通過するだけでした。今年の夏に初めて訪れた青森では、ねぶた祭りの雰囲気を味わったり海の幸を賞味しました。
次回は、札幌での将棋まつり。
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