将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年8月 7日 (日)

通算6期目の名人位を獲得した森内俊之名人の就位式

森内俊之名人の就位式

今年の名人戦は、永世名人の資格をともに有する森内俊之(十八世名人)と羽生善治(十九世名人)の対戦にふさわしい名勝負が繰り広げられ、挑戦者の森内が3連勝3連敗で迎えた第7局で羽生名人に勝って、通算6期目の名人位を獲得しました。

森内名人の就位式は7月29日に東京・目白の「椿山荘」で開かれました。名人戦を共催する毎日新聞社、朝日新聞社の両社長、将棋連盟会長(米長邦雄永世棋聖)らが挨拶し、祝辞は森内の知人の水津康夫さんが述べました。

じつは、森内は大のクイズ好きでした。子どものころは『アップダウンクイズ』『クイズダービー』などのクイズ番組をよく見ていました。18歳からは『アメリカ横断ウルトラクイズ』に毎年参加し、『アタック25』というクイズ番組に出たこともあります。そうした縁で知りあったのが、『史上最強のクイズ王決定戦』『クイズ・グランプリ』などのテレビ番組で何度も優勝経験がある「クイズ王」として知られた水津さんでした。

将棋愛好家でもある水津さんは、クイズ番組に出るときは棋士の扇子をいつも携帯しました。ある番組が水津さんの日常を紹介したとき、将棋会館で扇子を求める光景をテレビで見た森内は水津さんに手紙を書き、それがきっかけで親しくなりました。将棋雑誌で対談したこともあり、「何かを思い出すとき、すぐに辞書などで調べないで自分の頭で考えることを心がけています」(水津)、「将棋でも定跡や常識に頼らずに、自分で考えることが大事です」(森内)と語り、クイズと将棋には共通点があることで一致しました。

森内は「開幕前は大震災が起きて大変な状況でしたが、歴史と伝統がある名人戦にふさわしい対局をする気持ちで臨みました。3連勝しても簡単ではないと思っていました。最終局にもつれ込んであまり勝てる気はしませんでしたが、どんなに難しい状況でも打開する可能性があることを示せたと思います」と謝辞を述べました。

その森内には、名人戦の協賛社から本人の希望による「ストーブ」が贈られました。来春に始まる名人戦の防衛戦に備え、寒い冬の季節に風邪を引かないように、今のうちから環境を整えておきたい、という心構えなのかもしれません。

ところで連盟の米長会長は挨拶の中で、「来年の名人戦も森内さんと羽生さんの熱戦を期待しています」という新聞社の社長の挨拶に関連し、「来年の就位式にいるべきは毎日と朝日の両社長です」と、なかなか意味深長な言い方をしました。

2006年に起きた名人戦の契約問題では、連盟・毎日・朝日の三者間で大きく揺れました。そして名人戦は単独契約ではなく、毎日と朝日が共催する契約に落ち着きました。あれから5年たち、今期名人戦は5年契約の最終年となります。現在、連盟は毎日、朝日と次期以降の契約について話し合っています。連盟は基本的に現行の内容を希望しています。しかし現下の低迷している経済状況では、新聞社側の事情によって、交渉が円滑にまとまるかどうかは流動的なのです。米長の先の言葉は、それを暗示しているともいえます。なお来年の名人就位式は現契約の5年目で、新契約の1年目の就位式は再来年です。

来年の2012年には、将棋の名人制が始まってから400年目の節目を迎えます。江戸時代初期の慶長17年(1612年)、初代・大橋宗桂が一世名人に就いたといわれています。そういう記念すべき年に、名人戦の契約問題でもめることはできれば避けたいものです。

次回は、コメントへの返事。

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