将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年7月19日 (火)

「なでしこジャパン」がサッカー女子W杯で世界一の栄冠!

サッカー女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で、日本(なでしこジャパン)が決勝でアメリカ(世界ランキング1位)を破り、世界一の栄冠に初めて輝きました。日本の大黒柱の沢穂希(MF=ミッドフィルダー)は、得点女王(5点)とMVPを獲得しました。

私は当初、W杯の開催さえ知らないほど関心が薄かったです。しかし、日本が準々決勝でドイツ(W杯で2連覇)に1―0で勝ったのをテレビでたまたま見て、急に「なでしこ」たちの奮戦ぶりに興味を抱きました。準決勝のスウェーデン戦(日本が3―1で勝利)、決勝のアメリカ戦は夜中の3時に起き、テレビの前にかじりついて熱戦を見守りました。

日本はアメリカに対して、過去の試合で21敗3分と勝ったことがありませんでした。ただ後がない1番勝負では、何が起きるかわからないものです。世界のメディアの多くは、ドイツ戦・スウェーデン戦での速いパス回しを評価し、日本の勝利を予想しました。ドイツ・ミュンヘンのあの「予言タコ」も、日本の勝利を予想したそうです。

日本―アメリカ戦は、体格と技術で勝るアメリカが猛然と攻め込み、日本は何度もピンチに見舞われました。しかし海堀あゆみ(GK=ゴールキーパー)の好セーブと、相手のシュートがゴールポストに当たる幸運もあって、前半は何とか0―0で折り返しました。しかし後半ではついに先制点を入れられ、1―1で追いついて突入した延長前半でも、ワンバック(FW=フォワード)の絶妙なヘディングシュートで先制されました。

日本は試合時間の切迫で次第に追い詰められましたが、「なでしこ」たちは最後まで諦めませんでした。そして延長後半12分に「奇跡」が起きました。宮間あや(MF)のコーナーキックを受けた沢が、土壇場で値千金の同点ゴールを放ったのでした。

私は沢のゴール場面をテレビで何度も見ましたが、当初は流れがよくわかりませんでした。新聞の写真を見ると、沢はアメリカ選手たちの白い壁(ユニフォームの色)に囲まれ、ゴールを見ることもできませんでした。しかし右足の外側に当てて右後方のゴールに向かって打つと、ボールは相手選手の体を触れてからネットを揺らしたのです。じつは沢の得意技で、身長が高い相手選手を避けるために、「ニア(低くて速いボール)で蹴るね」と言った宮間とのサインプレーだったそうです。それにしても、あの状況で冷静に決断し、沢がよくぞゴールを決めたものです。サッカーの神様が後押ししてくれたのかもしれません。

試合は2―2となって、PK(ペナルティ・キック)戦に持ち込まれました。その時点で「勝負あった」ともいえるでしょう。先制点を入れて負けたことがないアメリカは、重圧で追い込まれた気分でした。一方の「なでしこ」たちは、「日本が大変な状況で、サッカーができる喜びを感じています」という心境のままでした。選手たちに「のりさん」の愛称で呼ばれている佐々木則夫監督の笑顔も緊張感を解きほぐしました。そしてPK戦では両者の心持ちの違いがはっきり表れ、日本が3―1で勝って優勝を決めました。

3月の大地震以来、津波、原発事故、政治の迷走など、日本は暗い話ばかりでした。そんな状況で「なでしこジャパン」のW杯優勝は、国民(とくに被災地の人たち)に感動と勇気を与えたと思います。今後しばらくはフィーバーが続いて、「なでしこ」たちは持てはやされることでしょう。しかし、私は一過性の現象にしてほしくないと願っています。

歴史が浅い女子サッカーの世界は、経済面や環境面でまだ途上段階です。海外で活動するプロ選手でも年収は300~400万円程度で、ほかの仕事で生計を立てながらサッカーを続ける日本代表選手もいるそうです。野球やサッカーの男子プロ選手で、コンビニでバイトするような人はいません。将棋の女流棋士も経済面で決して豊かではありませんが、将棋を中心にした生活を送っています。サッカーの女子選手も、収入はそれほど高額でなくても、サッカーに打ち込める環境にしてほいと、関係者に臨みたいです。

次回は、森本レオさんと森田正光さんの将棋。

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