将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年6月23日 (木)

名人戦(羽生名人―森内九段)第7局で森内が勝って4期ぶり・通算6期の名人に

名人戦(羽生名人―森内九段)

第69期名人戦(羽生善治名人―森内俊之九段)第7局は6月21日・22日に山梨県甲府市で行われました。名人戦で3勝3敗となって最終局に持ち込まれた例は、過去に15回ありました。一方が3連勝から3連敗したケースは今期が初めてでした。上の写真は、NHKの中継画面(右が羽生、左が森内)。

昨年の名人戦は、羽生が挑戦者の三浦弘行八段に4連勝して防衛しました。名人就位式では、強い羽生を称えて「将棋界の白鵬のようだ」という祝辞がありました。ある関係者は「来年はできるだけ第7局までお願いしたい」と挨拶しました。近年は名人戦の対局場を公募で決めるのが通例で、準備万端を整えながら流れてしまった第5局以降の対局場側の事情を慮ったものでした。羽生は苦笑いしていましたが、今期名人戦で3連敗から3連勝して第7局を迎えるとは、本人も周囲も想像がつかないことでした。

今期名人戦で第1局から3連勝した森内は、第5局・第6局の対局場で「来てくれて、ありがたかったです」と言われ、何とも複雑な心境だったそうです。

タイトル戦の最終局では、改めて「振り駒」をして先手・後手を決めます。先手番になれば、作戦の選択権を持てる利点があります。今期名人戦は第6局までに、先手側が4勝2敗と勝ち越していました。

かつて羽生は最終局で先手番になることが多く、振り駒でも運が強いといわれました。しかしこの10年ほどの7番勝負の最終局では、羽生の先手番は12回のうち4回だけでした。2005年(平成17年)の名人戦(森内名人―羽生四冠)第7局でも森内が先手番となり、相矢倉の激闘の末に森内が勝って防衛しました。

今期名人戦の第7局は振り駒の結果、森内が先手番となりました。そして第1局・第5局と同様に、後手番の羽生が「横歩取り」に誘導する予想通りの戦型に進展しました。

羽生が△8五飛と中段飛車に構えると、森内は居玉のままで左右の桂を五段目に跳ねて攻め込み、1日目から激闘が繰り広げられました。最新の横歩取りに疎い私は「運命の一戦によくもこれほど大胆に…」と思いましたが、多くの棋士が公式戦で用いている「研究課題」とのことです。羽生と森内も実戦経験がありました。

それにしても、最近の一流棋士、若手棋士の対局には「その局面までA―B戦と同形」というケースが多いです。観戦記者も「その局面で①②③の手があり、勝率が高いのは①…」などと、パソコンの棋譜データを元にして書きます。あるベテラン棋士はそんな傾向について、「最近の棋士は研究会の将棋をなぞっているようだ」と批判気味に語りました。

現代の棋士たちは特定の戦型を、パソコンの棋譜データで調べたり、公式戦や研究会の実戦で経験を積みます。しかし、どんなに研究を深めても、どこかの局面で未知の領域に入ります。その後は各棋士の強さ、個性、表現力によって指し方が変わってきます。

名人戦第7局は、昨年の王将戦・羽生(先手)―深浦康市九段戦と途中まで同じ進展でしたが、後手の羽生が48手目に手を変えて未知の戦いとなりました。その後、森内は成銀で相手陣に迫り、控室の棋士たちが思いも寄らなかった▲4四角と切る強手を放ちました。羽生は懸命に防戦し、一時は持ち直したように思われました。しかし森内は落ち着いた指し方で優勢となり、123手で勝ちました。

本局は十八世名人(森内)と十九世名人(羽生)の対戦にふさわしい大熱戦でした。甲府市の対局場、主催新聞社、将棋会館などの解説会場はどこも大盛況だったそうです。

森内は4期ぶりに名人に返り咲き、名人在位は通算6期となりました。

次回は、コメントへの返事。

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コメント

こんにちは。名人戦終わりましたね。両先生方には『お疲れ様でした』としか言えませんcoldsweats01。それだけ中身の濃いシリーズだったと思います。
森内先生が3連勝した時点では『このまま羽生先生が土俵を割るわけがない。1勝か、もしくは2勝は返して、やはり森内先生返り咲きかな』と思っていましたが、素人の読みとは当たらないものですねcoldsweats01
羽生先生には残念な結果でしたが、これで将棋界は『先に3連勝しても安心できないムード』が徐々に濃くなってきている、と思います。
それにしても小学生のころから、デパートの大会に始まり、奨励会、島研、プロ棋戦・・・と30年以上のしのぎを削ってきた両雄、まさに『21世紀の将棋界・黄金カード』と呼べるでしょう。
次の両雄の対戦が楽しみです。
森内先生の、これからの時代作りの地固め、羽生先生の巻き返し、他の棋士の発奮を期待しています。
田丸先生も、暑い中大変ですが、がんばってくださいsmilerocknote

投稿: S.H | 2011年6月24日 (金) 16時17分

愛知県蒲郡西浦の銀波荘。こちらは囲碁将棋のタイトル戦のメッカ

その銀波荘の女将が中日新聞に「第6局や第7局を待つ気持ち」

タイトル戦は4勝/7対局、3勝/5対局で打ち切り

ゆえに6局や7局の旅館は対局があるかどうかわかっていないわけです

しかし準備はして棋士の対局を待っています。

女将「最終まで縺れ合いになることを正直祈って」

名人戦第7局は良かったですよ

※4連勝で名人。7対局で名人。実入りは異なりますか

投稿: 第7局の準備は | 2011年6月25日 (土) 15時02分

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受信: 2011年6月23日 (木) 17時51分