将棋連盟の運営、連盟会長の資格、総会の議題などのコメントへの返事
「新聞社の財政状況の悪化が死活問題となる将棋連盟は、経費の削減と新たな財源の発掘が不可欠かと思います。しかし棋士の人数が増えすぎても、経費削減のために成績不振の棋士の首を切ることは容易でないと思います。最近はニコニコ動画への配信や大和証券杯の棋戦など、将棋とインターネットの相性が良いです。連盟はその方面の新たなスポンサー探しに力を入れているのですか」という内容のコメント(5月30日)は《たまー》さん。
連盟の主要財源は、棋戦主催者の新聞社・テレビ局・企業・自治体から得る契約金です。中でも大手新聞社の契約金は、連盟の運営の根幹をなしています。それだけに、新聞社の財政が悪化すると影響を受けかねません。ただネット時代への移行、長期的な景気の落ち込みなどによって、新聞業界が将来に大きく変動するかもしれません。連盟はそうした事態に備えて、今から根本的な方策を考える必要があると思います。
今年4月の時点で、現役棋士の人数は163人でした(6人の引退内定者を含む)。10年前は147人、20年前は132人でした。毎年4人の新四段が生まれても、棋士の引退や死亡によって、現役棋士の人数はそれほど増えていません。とはいっても、売り上げが伸びない会社で従業員が増え続ければ、運営はいずれ厳しくなります。連盟もそれと同じです。今後は、棋士への処遇が重要問題になるでしょう。
正直なところ、「成績不振の棋士の首を切る」という言葉には、私自身がそんな立場なのでどきっとしました。まあ、実際に首を切られることはないでしょうが、経費節減策として待遇が下がる可能性はあります。たとえば、予選対局料が減ったり、女流オープン棋戦のように一般予選ではプロでも対局料が出ない、などの方式になるかもしれません。
インターネット関係の企業に、新たなスポンサーを求めることは確かに有力です。ただし既存の新聞社との関係のように、高額の契約金を継続的に得られるかどうかは不明です。連盟は近年、ネット関連の普及事業に取り組んでいます。成果が表れるまで年月がかかりますが、将来への投資として大事だと思います。
「田丸八段のブログや寄稿文を読むと、中立に冷静に物事を判断されています。個人的には、連盟の会長になってほしいですね。会長になるには、タイトル経験者じゃないと難しいのでしょうか」という内容のコメント(6月7日)は《よっしー》さん。
私に連盟の会長になってほしい、という《よっしー》さんの推挙には驚きました。また、その根拠という私への評価に感謝いたします。今年の連盟総会では、公益社団法人として初めての理事選挙(2年ごと)が行われ、棋士・女流棋士・連盟職員・外部の識者など、13人が理事に選ばれました。そして理事たちの互選によって、米長邦雄(永世棋聖)が会長に就任しました。つまり連盟の会長になるには、まず理事に選ばれることが条件なのです。
歴代の連盟会長には、塚田正夫(実力制第二代名人)、大山康晴(十五世名人)、中原誠(十六世名人)、二上達也(九段)、米長など、タイトル経験者が就任しました。それ以外では、加藤治郎(名誉九段)、原田泰夫(九段)、丸田祐三(九段)などが会長になりました。会長になる資格に、タイトル経験の実績は必要ありません。会長として必須のことは、展望をもって運営する、全体をまとめる、誠実な人柄だと思います。
「総会では招集通知に記載された以外の議題を審議してはいけないと、普通はなっています。13年前の連盟総会では、女流棋士にとっては重大な制度変更(奨励会と女流棋士の重籍の禁止)が正しいプロセスを経ずに決められたようで、法律家としては残念に思います」という内容のコメント(6月9日)は《tactless》さん。
6月9日のブログ「奨励会と女流棋士の重籍に関する経緯と問題点」のある内容について、法律家としての見解ですね。その件の詳しい話は、次回のブログで改めて伝えます。
次回も、コメントへの返事。
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コメント
田丸先生こんにちは。成績不振と謙遜されていますが、いままでの実績を考えれば、かなりのエリート棋士だと思います。いつまでも全盛期ではいられないのは誰も同じことです。その代わりに今は自発的にこのブログで将棋界を語り、読者の質問にも答えてくださり、十分に棋士としての務めを全うされていると思っています。おかげで将棋界の色々なことが分かりました。これからも楽しみに読ませて頂きますので、頑張ってください。梅雨時ですので、体調管理にお気をつけください。飲み過ぎませんように。(^0^)
投稿: フライドポテト | 2011年6月27日 (月) 17時08分