NHK『クローズアップ現代』の番組が中国の張天天さんの将棋などを紹介
NHKの報道番組『クローズアップ現代』が5月31日の放送で、女流プロ棋戦に初めて参加した中国の少女の奮戦ぶり、日本の将棋への関心が高まる中国の様子、日本で増えている子どもの将棋ファン、パソコンによる将棋レッスンなど、将棋界の新しい話題について伝えました。司会者の国谷裕子アナウンサーは冒頭で、「大震災や原発事故の影響によって、多くの人たちが苦境に陥っている今の状況で、将棋は電気を使わないエコなゲームとして見直されています。苦しい形勢のときにどう立て直していくか、という点でも共通のものがあります」という内容の話をしました。
第1期「リコー杯女流王座戦」の1次予選が5月21日に都内で行われ、海外出場枠として中国の張天天(チャン・ティエンティエン)さんという12歳の少女が女流プロ棋戦に初めて参加しました。張さんの対戦相手は古河彩子女流二段。上の写真は、テレビで放送された対局光景(右が張、左が古河)。中央は中国・上海出身の奨励会員のツァン・シン6級(15歳)で、当日は通訳を務めました。
張さんは攻め将棋の棋風で、得意戦法は右四間飛車。相居飛車となった古河戦でも、右四間飛車・腰掛け銀という攻め味の強い戦法を用いました。ただ本格的な攻撃の前に桂頭を攻められ、無理攻めを誘われて駒損を重ねました。張さんは懸命に攻めてよく奮戦しましたが、古河に95手で完敗しました。張さんは「とても勉強になりました。攻めにいっても、前を前を読まれて押さえ込まれました。とくに角の使い方が印象に残りました。これからも将棋を続けていきます」と、局後に感想を語りました。
上海の許建東さんという方は約15年前から、日本の将棋を数多くの子どもたちに熱心に指導してきました。今では上海のほかに北京でも、授業の科目に将棋を取り入れた学校があります。そうした中から、昨年の奨励会入会試験で初めて合格したツァンくん、小学生大会で何度も優勝した張さんのような将棋の強い子どもたちが生まれています。
上海で日本の将棋が流行し始めた約15年前の中国は、現代のような経済発展はまだ途上段階でした。将棋を覚えることは、GNP(国内総生産)でアジア一の日本への憧れもあったと思います。しかし今は、将棋は学力を伸ばすことに役立つ知的ゲームと見られているようです。北京の学校で将棋を教える女性教師の方は、「生徒たちは将棋を始めてから、とくに数学の勉強ができるようになりました。将棋で考えることによって、勉強でも考えることが好きになったからです」と語りました。また、対局を始める際の「お願いします」、自分で負けを潔く認める「負けました」、勝者がそれに応じる「ありがとう」など、将棋で礼節を重んじることにも感心しているそうです。
スポーツの世界では、中国の選手たちの躍進ぶりがどの分野でも目覚ましいです。囲碁界は以前は日本が指導者的な立場でしたが、今は中国が(韓国も)日本を圧倒する強さを誇っています。では将棋界はどうなるのでしょうか…。何しろ人口が10億人以上の国なので、中国の「羽生善治」と呼ばれるような天才少年がいずれ出現するかもしれません。
NHKの番組は、日本で増えている子どもの将棋ファンのことも伝えました。一例が「JT将棋日本シリーズ」の対局会場で開催している子ども大会です。この10年間で参加者は10倍に増えました。昨年11月の大会(会場は東京体育館)には過去最多の2437人が参加しました。付き添いの保護者や関係者を含めると約6000人に達し、その光景はじつに壮観だったそうです。ほかにも文部科学大臣杯、小学館・集英社杯、倉敷王将戦などの小学生大会があり、いずれも盛況となっています。
次回も、NHKの番組で伝えられた将棋の魅力。
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コメント
こんにちわ。NHKの放送は見ていませんが、許先生の存在は昔から知ってまして、『国際フォーラム』などで会ったこともあります。
こうした傾向はいずれ来るな、と思ってました。
すでに囲碁界はそうなってますし、将棋界も外国人アマ強豪が存在していますから、外国人プロ将棋棋士誕生も夢では無いでしょう。
子供大会の盛況ぶりもよく、いい話が多い・・・・とは言えません。
インターネットで勉強している反面、道場や集会場が減り『人間VS人間のナマ対局の機会』が失われているのも事実ですし、また子供達も皆が皆、上を目指すわけではありません。
負ければ、優勝できなければ、やめていきます。
また、進学、就職、結婚で将棋から離れていくのもまた事実ですし、女の子たちも、はたして男ばかり、それもオジサンばかりの会場にて指し続けられるでしょうか?
年頃になれば、いろんな事(ファッション、芸能人等)に目が行き、これまた将棋から離れていきます。
将棋界は、それに負けない話題や魅力も生み出し、公表するべきなのです。
また、私たち男連中も子供や女の子を珍しがらずに、暖かく見守ってあげるのが『礼儀』でしょうね。
「どっから来たの?」
「次はワシと指そう」
などと言うオジサン、結構いますから(苦笑)。
常に3年後、5年後も想定して子供への普及と将棋教育を考える・・・それが今の将棋界の課題の一つと言えるでしょう。
投稿: S.H | 2011年6月14日 (火) 14時37分