将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年6月17日 (金)

子どもの将棋ファンが増えている要因のひとつは教育熱心な母親の理解

将棋連盟はこの数年間、将棋の普及活動を全国的に展開し、とくに子どもへの普及に重点をおきました。その成果が次第に表れています。JT将棋日本シリーズの対局会場で開催される子ども大会の参加者は、10年前に比べて10倍に増えました。文部科学大臣杯、小学館・集英社杯、倉敷王将戦などの小学生大会も盛況です。将棋会館で行われる子ども教室は、応募者が定員を上回るほどの人気です。また、近年は女子が増えています。

私は、埼玉県さいたま市の公共団体が主催する子ども教室(毎年6月~7月の毎週土曜日)の監修を3年前から務めています。指導者(私のほかに野田沢彩乃女流1級、中村桃子女流1級、地元の普及指導員など)が充実しているうえに会費が安いので、いつも好評です。例年の参加者は約50人でしたが、今年は約100人と倍増しました。大震災や原発事故の影響でほかの教室の参加者はすべて減ったのに、将棋だけは増えたそうです。将棋は電気を使わないエコなゲームと、保護者に認識された理由もあったようです。

その将棋教室で見かける付き添いの保護者の約8割は母親です。話を聞いてみると、将棋は情操教育の面でとても良いと考えていました。将棋会館の道場で見かける保護者も、父親よりも母親のほうが目立ちます。将棋を指しているわが子を熱心に見ている母親の様子は、将棋が教育的に良いと認識しているように感じました。

子どもの将棋ファンが増えている要因のひとつは、教育熱心な母親の将棋への理解にあると思います。「モーニング」誌に連載中の将棋漫画『ひらけ駒!』にも、将棋に夢中になっている主人公の小学生《宝》をじっと見守る母親の姿と思いが描かれています。

5月31日に放送されたNHKの報道番組『クローズアップ現代』では、中国で関心が高まる日本の将棋、女流プロ棋戦に初参加した中国の少女、日本の子ども将棋ファンの増加、パソコンによる将棋レッスンなど、将棋界の新しい話題について紹介しました。

そのパソコンによる将棋レッスンの事業を始めたゲームソフトメーカーの女性担当者は、連盟の道場を初めて訪れたとき、子どもたちの生き生きとした姿を見て将棋の魅力を見直したそうです。将棋が始まると無言で集中する姿、形勢が苦しくてもゲームのようにリセットしない頑張り、将棋を通して自然に身につく礼儀、73歳の老人が5歳の子どもに負けて苦笑いするほほえましい光景、などです。なお近年のゲームソフト業界はヒット作が出ても何年かするとあきられ、今や街のゲームセンターは若い世代ではなく中高年の世代の溜まり場になっているそうです。

NHKの番組に出演した青野照市九段は、「将棋は答えのないゲームです。未知の局面や想定外の局面で、どう指すか考えることがポイントなんです。私はそれを《HOW力》(はう・りょく)と命名しました」と語りました。

将棋を指すことで、集中力が高まり、行儀が良くなり、ひいては勉強にも役立つ。そんな好循環によって、子どもの将棋ファンが増えていけば喜ばしいです。ただし、子どもたち全員が将棋をずっと愛好するとはかぎりません。

男子は受験、進学、就職、ほかの遊び、結婚、家庭の大黒柱、出世…。女子はファッション、ほかの趣味、仕事、恋愛、結婚、育児…。男女とも人生の様々なステップを歩んでいくうちに、大方の人はいつしか将棋から離れていくのが現実です。《S.H》さんのコメント(6月14日)にも同じような見方がありました。

しかし子ども時代に将棋を覚えておけば、ある時期に再開する(一例が親として子どもに将棋を教える)こともありえます。種をまいて地道に育てる、という普及を続けることがやはり大事です。

次回は、最終局までもつれ込んだ名人戦(羽生名人―森内九段)。

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コメント

こんにちわ。前回のコメント採用、ありがとうございますhappy01note
子供たちへの普及は、ホント大事です。
教育と言う一面もありますが、親になったときに子供に教える、プロになれなくても、将棋大会に参加する、もしくは子供教室で教える(私の知人で、20~30代そこそこでそうした若者はいます)等があります。
40年以上子供たちに将棋を教えている、ある指導者は『将棋は心の教育だ。将棋を覚えれば礼儀正しくなり、他の世代との交流(コミュニケーション)も覚えられ、人間の幅が広くなり、いい事尽くめだ』と述べていますし、その通りだとおもいます。

『ひらけ駒!』は、私も最近読みました。
『月下の棋士』『ハチワンダイバー』は、勝負に徹するあまり、『人間の負の感情』がモロに出ている漫画ですが、『ひらけ駒!』は、この20数年間出てきた将棋漫画には一切ない『テーマ』がありました。
それは『母親が将棋を覚え、興味を持ち、子供とともに成長していく』と言うものです。
これを描いた漫画家はホントに素晴らしい!
米長会長から『感謝状』を出させるべきでしょうsmile
世の中のお母さん方、必読です!!

投稿: S.H | 2011年6月17日 (金) 14時17分

>子ども時代に将棋を覚えておけば、ある時期に再開することも
去年、再開した30台です(笑
もともと縁台将棋レベルだったので10数年ぶりだとそりゃもうひどい目にあいました。

ところで、子供に対する普及については、結果が出ているように思えます。
でも、われわれみたいな、おっさんアマチュアへの普及はどうなんでしょう。
奨励会までいかずにやめてしまう子供たちのどれだけが将棋を続けてくれているのでしょう。
中学・高校の将棋部の数は全国でどれだけあるのでしょうか?

このままの方針で普及していけばよい、と楽観視はできないのではないでしょうか?

投稿: うへえ | 2011年6月21日 (火) 21時15分

いつも興味深く拝見さて頂いております。

私は小さい頃祖父とたまに将棋を指す程度でした。
中学入ってから将棋からは離れていましたが、大学三年だった一昨年に何気なくニコニコ動画で将棋と検索してからはまりました。

ただいつもコンピュータ相手に指していて何か物足りないです。
将棋会館などは行きづらいし、自分の周りには同じレベルの人がいないのでじっくりと人と指す機会がありません。
プロの方々のように一日かけてゆじっくり対局してみたいです。

最後に田丸先生と同郷ということもあり応援しています。
がんばってください!!

投稿: AKI | 2011年7月 1日 (金) 00時03分

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