将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年6月 1日 (水)

日本将棋連盟が公益社団法人となった経過とコメントへの返事

日本将棋連盟は「社団法人」(所管・文部科学省)でしたが、内閣府が推し進めている公益法人制度改革によって、公益法人・一般法人どちらかへの移行の選択を迫られていました。

内閣府に公益法人と認定されるには、主な事業を公益目的にする、運営が公正で透明性がある、特定の人(連盟は棋士)に特別な利益を与えない、男女の差別をしない、などの要件があります。認定されると社会的な信用が高まり、税制面で優遇されます。ただし、国から委託された第三者機関に事業内容を厳しくチェックされます。運営面で重大な不正を犯して公益法人を取り消された場合、公益目的の財産は国に没収されます。

一般法人は登記だけで簡単に設立できます。自由な事業活動が可能ですが、税制面の優遇は限定されます。

連盟は「公益社団法人」への移行をめざしました。外部の識者に理事として運営に参加してもらう、棋士に支給した「給料」と「賞与」などを廃止する、一定の条件で女流棋士を正会員にするなど、認定を得るための制度に変えたのです。

連盟は昨年11月の臨時総会で、公益社団法人に移行する議案を提出しました。その席上に、公益法人問題に詳しい大内隆美さん(あるシンクタンクの政策スタッフ)という女性が参考人として出席しました。総会の場に女性が入ったのは、連盟職員以外に初めてでした。

大内さんは、連盟が公益法人になると社会的に承認され、税制面で優遇されると説明しました。連盟の主要財源である棋戦契約金は、引き続いて非課税の扱いとなります。会社や個人からの寄付も集めやすくなります。大内さんは「たとえば会長の米長さん(邦雄永世棋聖)が自宅を売って得たお金を連盟に寄付した場合、公的な控除を受けられます」と具体例をあげました。

連盟は臨時総会でその議案を正式に決定しました。後日に認定申請書を内閣府に提出し、今年の3月に公益社団法人と認定されました。

「公益社団法人への移行にともなった新報酬体系では、棋士の給料の固定額は減ったのですか。その分で賞金・対局料が上がると、勝ち続ける棋士が潤うような仕組みとなるのでしょうか」という内容のコメント(5月17日)は《よっしー》さん。

連盟が棋士に毎月支給した給料は、順位戦の在籍クラスを基準にした対局料と、ほかの棋戦の契約金から充当した手当の合算でした。前者は対局の報酬なので認められましたが、後者は身分への支給なので認められませんでした。新体系では、後者が各棋戦の参稼報償金と普及活動の報酬に替わりました。多くの棋士がやや減収となりましたが、勝者が恵まれる勝負の世界にふさわしい制度に変わったと思います。なお来週発売の『週刊将棋』の「丸の眼」という欄で、田丸がこの問題を詳しく記述します。

「連盟が公益社団法人への移行に向けて、女流棋士を正会員にさせるとのことです(現時点でタイトル経験者、四段以上など10人)。その中に中井広恵(女流六段)、蛸島彰子(女流五段)の名前が見当たりません。どんな理由があるのでしょうか」という内容のコメント(3月9日)は《神山修》さん。

数年前に女流棋士の独立問題が起きました。その結果、連盟に残った棋士、連盟を離れて新設された「日本女子プロ将棋協会」(LPSA)に所属した棋士と、女流棋界は2団体に分かれました。今回の公益法人問題で生じた女流棋士の処遇は、あくまでも連盟内のことでした。別の団体にいる中井六段、蛸島五段が対象外だったのは妥当だと思います。じつは、私が聞いたその件に関連しそうな話では、連盟の理事がLPSAの女流棋士に対して連盟への復帰を内々に打診したところ、だれも承諾しなかったそうです。

次回(来週)は、女流棋士と奨励会の重籍問題。

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コメント

いつも分かりやすい記事を有難うございます。難しい話を易しく書くのは最も難易度が高いと思いますが、田丸先生は凄い!新聞記者に負けません。公益法人改革のお話、またユーモア溢れる棋士総会のお話など、楽しく拝読しました。                 昨日のNHKのクローズアップ現代で最近は将棋が見直されていて、将棋大会に出場するお子さんの人数が10年前の10倍になったと言っていました。考える力の付く将棋がもっともっと盛んになると良いですね。先生も貴重なスポークスマンとして、現役棋士としてまだまだ頑張ってください。応援しています。

投稿: フライドポテト | 2011年6月 1日 (水) 22時31分

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