将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年4月29日 (金)

里見香奈女流三冠の奨励会受験に関するコメントについて

里見香奈(女流三冠)が「奨励会」を受験する問題は、大いに関心を持たれたようです。このブログにも多くのコメントが寄せられました。その内容は賛否両論でした。

「今回の里見さんの件が、将棋界の女性普及の新たなヒントになればと思います。大事なのは里見さんを倒す少女を見つけ、育てていく環境づくりです」というコメント(4月22日)は《S.H》さん。「里見さんが以前に、男性棋士に勝てる棋士になりたい、と話したのを覚えていました。里見さんの挑戦は若い女流棋士(予備軍を含む)の発奮剤になると思います」という内容のコメント(同日)は《イトウ》さん。「里見さんのチャレンジ魂には敬服して応援しますが、相手の奨励会員には里見さんに勝ってその実力を見せてほしいです」というコメント(同日)は《関東のホークスファン》さん。

これらのコメントは里見の奨励会受験について、女性への将棋普及と実力向上、里見の後に続く女性への期待などの観点から、里見を理解して励ましています。ただ《関東のホークスファン》さんは、里見と対戦する奨励会員の気持ちも酌んでいます。

「里見さんはタイトルを返上し、女流棋戦を休んでから奨励会に入るべきだ。食えている奨励会員が生まれることになれば、奨励会全体の空気が悪くなる」というコメント(4月26日)は《ポチ》さん。「真摯に将棋に取り組んでいる男性奨励会員の将来に影響しないことを何よりも願います」というコメント(4月27日)は(shiromaru)さん。「里見さんに限らず、女流棋界と奨励会の掛け持ちを完全解禁したほうがよいと思います」というコメント(同日)は《スナック小島》さん。「特別優秀な人を特別扱いするのは仕方ないと思いますが、方法が間違っていたのではないでしょうか。里見さんは保持している3つの女流タイトル戦は失冠するまで参加し、ほかの棋戦は参加しない、というのが落としどころだったのでは…」というコメント(4月28日)は《二番隊隊長》さん。

これらのコメントのように、里見が奨励会に入会した場合に最も問題となるのは、将棋連盟から特例で認められた女流棋界との重籍です。女流棋士としても活動しながら脚光を浴びて高収入を得る里見に対して、将来の保証がない男性奨励会員は不公平感や不満を持ちかねません。女流棋界と重籍していない3人の女性奨励会員も複雑な思いでしょう。原則論でいえば、《ポチ》さんの説はもっともです。《二番隊隊長》さんの説は現実的な折衷案です。

里見とほかの奨励会員の間には、立場の違いによる疎外感が生じることも懸念されます。ただし盤上の勝負はまったく同等です。両者が力いっぱい戦っていくことで、同じ棋士をめざす仲間という気持ちはいずれ共有すると思います。

「里見さんが奨励会在籍中は女流棋戦から消えてしまうのでは、女流棋戦が成り立たなくなる。平たく言うと、スポンサー企業の了解を得られないという、連盟側の理由と思います。これはもっともでしょう。里見さんが出場しないのでは、女流棋戦を見る楽しみが大幅に減ってしまいます」というコメント(4月28日)は《オヤジ》さん。

連盟が里見の女流棋界と奨励会の重籍を特例で認めた背景には、経済基盤が決して十分とはいえない女流棋界の実情がありました。確かに《オヤジ》さんのコメントのとおりです。じつは、女流棋界と奨励会の重籍を初めて認めた30年前も同じような状況でした…。

「一番の問題になることは、里見さんが将棋連盟の正会員でありながら、奨励会員であることだと思います」というコメント(4月25日)は《popoo》さん。※今年4月に公益社団法人となった連盟は、四段以上・タイトル経験者の女流棋士を正会員とした。

以上のコメントのように、里見の奨励会受験に関する問題はなかなか複雑です。改めてブログのテーマとします。

次回(5月5日)は、現役棋士40年目を迎えた田丸の心境。

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コメント

正直「ルール」の問題ですからね。
(男性)奨励会員もかつては8連勝か12勝4敗でプロになれたわけで。

田丸先生の記事「将棋連盟の財政事情の影響を受けた四段昇段制度の変遷」http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-8fa4.html

投稿: popoo | 2011年5月 4日 (水) 22時33分

議論されるほど里見香奈の存在は大きいのだと思います。
ただ、私は思います。古い慣習やしきたりに拘っていたら、将棋は衰退の一途をたどると思います。彼女が男子と同様にチャレンジすることは、絶対に男子プロ(あえてこの表現を使います)のためになることを自覚するべきだと思います。過去の話やお茶くみの話、報酬の話など私にとってみたら、どうでもよいことに思えます。プロであるなら、プロを志そうとするものならば、彼女の存在、これからの将棋界の大きな存在になることを支援する人となってほしいものです。特例だから許せない、実力をつけてから、男子と同等の立場でなどというのは、あまりにもちっちゃい考えではないですか。
女性が男性と同等になるということは、選挙や労働や諸々のことを考えると、それ自体すでに大変なことなのです。
里見をどこか変だと思っている人、将棋が特別だと思っている人、私には不思議でなりません。里見香奈は時代が彼女の存在をよしとしたのだと思います。

投稿: 将棋太郎 | 2011年5月 4日 (水) 23時57分

失礼な表現だとは思いますが、成績優秀とは言えない女性2級会員と
2局指して現在1勝1敗。

次の4級会員との香落ち戦
勝てば1級合格
負けても2級は仮入会

連盟の事情もあるのだとは思いますが、これはいくらなんでも
人選や条件が公平でない気がします。

そもそも女流プロというのは一体なんなんでしょうか?
元々奨励会に属していながら退会して女流プロになり
タイトル戦で賞金をもらう。

本来プロを志してたはずが、いつしか目標がスリ変わり
エッセイなどで女流の待遇面の愚痴をこぼす。
正直こんな人までいる始末。

将棋の普及に女性の力が必要なのはわかります。
ですが、肝心の将棋に魅力を感じません。
対局料の不満などもよく耳にしますが
本当に人様からお金を頂けるような将棋が指せているのでしょうか?

投稿: 将棋愛好家 | 2011年5月 5日 (木) 22時51分

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