将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年1月14日 (金)

「モーニング」誌の将棋漫画『ひらけ駒!』の第1話に田丸がなぜか登場

田丸が将棋漫画に登場

先週に発売された漫画誌「モーニング」(講談社)で、『ひらけ駒!』という将棋漫画の連載が始まりました。主人公は、将棋に熱中している小学生の《宝》と、その息子を暖かく見守る母親です。第1話では、親子が東京・千駄ヶ谷の将棋会館を初めて訪れます。

いつも安い駒で指している《宝》が、会館の売店にある高級な駒を見てほしがると、母親は「今度、《宝》が昇級したら、おじいちゃんに買ってもらうように頼んであげる」と励まします。そして会館を出るとき、白髪ロン毛の男性が後から歩いてきて、隣り合わせた親子に「にこっ」と微笑んで通り過ぎます(その誌面が上の写真)。親子は思わず顔を見合わせます。《宝》が「田丸昇八段だった…。本を持ってる…」と驚いたように言えば、母親は「優しそうな人だったねぇ」と印象を語ります。

じつは、私がその将棋漫画に出ることは、事前に何も知らされていませんでした。漫画誌を読んだ友人から聞いて初めて知りました。将棋を題材にした漫画なので、棋士が実名で出る場面はありそうです。しかし羽生善治(名人)や渡辺明(竜王)のような著名棋士ではなく、私のような地味な棋士が連載開始早々になぜ登場したのか、とても不思議に思いました。そこで、「モーニング」編集部に問い合わせてみました。

担当者の話によれば、作者の「南Q太」さん(女性の方です)は、将棋を習い始めた息子さんと将棋会館の道場に通っていたとき、実際に漫画のように、私と遭遇する場面を体験したそうです。そして、現役で活躍している棋士から優しく微笑んでくれたことに感銘を受け、棋士の礼儀正しさ、物腰の柔らかさ、所作の美しさなどをもっと多くの人に知ってほしい、という気持ちが将棋漫画を書くモチベーションになったとのことです。第1話に私が登場したのも、作者のそんな思いや前記の経緯が反映されたのでしょう。

私は将棋会館に行ったとき、道場に寄って対局光景を見るのを楽しみにしています。とくに、元気いっぱいの子どもの将棋が好きです。また、近年は子どもと同伴する母親たちの姿をよく見かけます。将棋が知的にも情操教育にも、とても良いものだと思ってくれているようです。私がそんな印象を日ごろから抱いていたので、会館で隣り合わせた親子に対して、自然に笑みがこぼれたのでしょう。私のふとした行為がきっかけで将棋漫画の連載が始まったとすれば、こんなうれしいことはありません。

作者の南さんはアラフォー世代の漫画家です。美大を卒業後、1992年から本格的に活動を始め、2005年には『さよならみどりちゃん』が映画化されました。自身のブログで将棋に熱中する息子さんの姿をたびたび紹介していて、将棋漫画の執筆はかねてからの願望だったようです。なおネットに載っている南さんの写真は、まさに《宝》の母親そのものの容姿です。

従来の将棋漫画は、棋士をめざす天才少年、伝説的な真剣師などがよく登場しました。この『ひらけ駒!』の主人公はごく普通の将棋好きの親子で、私はほのぼのとした情感に好感を持っています。今週に発売の第2話では、小学生大会に参加した《宝》と同行した母親が遠くから双眼鏡で戦いの様子を見て、一喜一憂する場面が描かれています。とにかく、今後の展開がとても楽しみです。

次回は、そのほかの将棋漫画について。

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コメント

こんにちは。
僕はそもそも漫画が大好きなので、
やはり大好きな将棋をモチーフにした漫画には特に興味を持っています。
全て、とは言えませんがだいたい読んでおります。
きっとそうした作品は将棋の普及に一役買ってるんでしょうね・・・
「ひらけ!駒」はこのブログで存在を知りました。チェックしておきます!

現在連載中の「ハチワンダイバー」や、「月下の棋士」が、
将棋漫画ではお気に入りです。
次回のブログも、楽しみにしております。(・∀・)

投稿: イトウ | 2011年1月14日 (金) 19時39分

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