将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年1月25日 (火)

反則が確認された場合の第三者の指摘について

「対局者が反則をした場合、将棋連盟の規則では第三者も反則を指摘できるとなっています。確かに泥棒を見たら通報するのが当然ですが、将棋は別だと思います。第三者が反則を指摘するのは、広い意味での助言にあたり、反則を指摘してはいけない、というのが私の考えです。相手の反則を見つけるのも、対局者の実力だと思います」

私の知り合いのKさんから、こんな内容の意見が届きました。Kさんはある県のアマ将棋団体の実行役員を務めています。実際に将棋大会で、反則をめぐるトラブルを経験したのかもしれません。公式アマ大会では、連盟が定めるプロ公式戦での「対局規定」が原則として適用されます。その第3章(対局の進行)の第8条には反則について記されていて、とくに重要なのが第2項・第3項・第5項です。

「両対局者が反則に気がつかずに対局を続行し、終局前に反則行為が確認された場合には、反則が行われた時点に戻して反則負けが成立する」(第2項)。「終局後は反則行為の有無にかかわらず、終了時の勝敗が優先する(投了の優先)」(第3項)。「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる」(第5項)。

つまり反則行為は、終局前に確認されたら「アウト」ですが、終局後なら「セーフ」になるわけです。そして対局者以外の第三者(立会人・記録係・観戦記者・棋戦関係者・観戦者など)が反則を指摘しても、助言にはあたりません。

プロ公式戦や公式アマ大会では棋譜を取るので、実際の盤面で反則行為が確認されなくても遡って確認できます。しかし発見されにくい反則だったり、秒読みが延々と続いている最中だと、対局者も記録係も終局まで反則に気がつかないケースもあるかもしれません。本来は終局後でも、反則負けを適用するべきだと思います。ただ持ち時間の少ない棋戦では、午前に1回戦、午後に2回戦と、同じ棋士が続けて対局することがあります。次の対局が行われているとき、反則をした棋士を替えさせるというのは現実的に難しいです。

Kさんは「第三者が、心情的に勝ってほしいと思う人の反則には黙認し、逆の場合は指摘するのではないかと」と心配していました。また心情的に公平な立場でも、「とても口に出せる状況ではない」という事態もありそうです。いずれにしても、第三者が反則を発見したのに指摘できないというのは、納得いかないと思います。

30年以上前の女流棋戦の対局で、対局者のAが盤面の駒を誤って駒台に落とし、それを気がつかないで「持ち駒」として盤面に打ったことがありました。対局者・記録係・観戦記者のだれもがわからずに進行し、しばらくたった時点で記録係が「あっ」と叫んで反則が確認されました。その記録係はAと同じ一門でしたが、棋士をめざす修業中の立場として、Aを利するために反則を見過ごすことは絶対にできなかったと思います。

現行の対局規定は1989年に制定されました。当時、反則行為があっても投了時の勝敗が優先する規定について、「劣勢なほうがわざと反則をするのではないか」と心配する声がありました。それから20年以上たった現在まで、棋士の良心にもとるそうした事例はもちろんありません。

次回は、フリークラスから昇級した吉田正和四段について。

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