将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2011年1月28日 (金)

フリークラスから順位戦・C級2組に昇級した吉田正和四段

フリークラスに所属する吉田正和四段(25歳)が1月19日に伊藤博文六段との対局(竜王戦)に勝ちました。その結果、直近の通算成績が20勝10敗(0.667)となり、規定によってフリークラスから順位戦・C級2組への昇級が決まりました。今年の6月から始まる新年度の順位戦に参加できます。

吉田四段はアマ時代の2005年5月、朝日アマ名人戦の全国大会で優勝して天野高志さん(朝日アマ名人)に挑戦し、3番勝負で2勝1敗と勝ち越して最年少記録の19歳で朝日アマ名人になりました。その吉田は終局後の勝利者インタビューで、「タイトルに興味はないけど、自分の評価が上がるのはうれしい。今は自分より強いアマはいないと思っている」と語り、型破りのコメントで周囲を驚かせました。表彰式では、正面を向かずに顔を下げたままでした。こうした言動には訳がありました。

吉田は10代前半からアマ棋界で活躍し、主要アマ棋戦で準優勝を2回しました。しかし、なぜか奨励会入りを望みませんでした。その理由は不明でしたが、「アマ棋界にも強い人がおり、まずアマで1番になりたい」と語ったことがありました。やがて北陸で独り住まいをしていた18歳のとき、実戦相手が周囲にいない現実に気がつき、奨励会受験を決心したそうです。その後は、棋譜研究やネット対局に明け暮れて受験に備えました。05年はそうした状況だったので、前記のコメントを率直に述べたのでしょう。

吉田は05年9月、「奨励会初段入会試験」を受験しました。これは1997年に導入された制度(受験資格は満22歳以下で、主要アマ棋戦で優勝または準優勝)で、奨励会員と5戦して3勝すれば合格します。この制度で初の受験者となった吉田は入会試験に合格し、神吉宏充六段門下で奨励会に初段で入会しました。

吉田は入会後、07年の秋に始まった第42回三段リーグに参加して13勝5敗(次点)の成績を収め、翌年の第43回三段リーグでも同成績で次点となりました。三段リーグでは、1位と2位が四段に昇段できます。3位の次点を2回獲得すると、同じく四段に昇段できますが、順位戦に参加できずフリークラスの所属となります。この次点による四段昇段は本人の任意です。過去の例では、伊奈祐介(六段)が1998年にこの権利を行使して四段に昇段しました。伊藤真吾(四段)も07年に同じケースで四段に昇段しました。佐藤天彦(五段)は04年に権利を保留し、2年後の06年に正規のルートで四段に昇段しました。

吉田は2008年10月、「良い区切りで奨励会を卒業し、広い世界で活躍する夢を見たい」という思いから、フリークラスを選択して四段に昇段しました。難関の三段リーグにおいて、2期連続で次点の成績を残したのは実力のある証です。吉田が規定の成績を収めて、順位戦への昇級を果たす可能性は十分にありました。

しかし吉田は、1年目の08年度は5勝4敗、09年度は13勝11敗と勝ち星があまり伸びませんでした。10年度も出だしが1勝4敗と不振でした。しかし夏以降は、井上慶太八段、杉本昌隆七段、畠山鎮七段、山崎隆之七段らの上位棋士を破って勝ち星を積み重ね、今年の1月に規定の成績を収めて順位戦・C級2組に昇級しました。吉田は「2年は長かった」と語りましたが、昇級のハードルは決して低くないのが実情です。

次回は、フリークラス棋士の処遇と四段昇段制度の変遷。

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コメント

正直、フリークラス脱出の規定のうち、いいとこ取り30局で勝率65%以上、これ以外のものはあってないようなものだと感じます。
事実、吉田四段は王位戦ではフリークラスでありながらリーグ入りしていますよね。
タイトル戦挑戦でフリークラス脱出、これは65%と比べるとさすがに厳しいと感じました。
吉田四段の師匠である神吉七段も昨年銀河戦で決勝トーナメントに残ったので、全員参加の棋戦優勝で脱出、を個人的には期待してたんですが、やっぱり厳しいな、と感じました。

投稿: popoo | 2011年1月31日 (月) 22時50分

初段受験制度は大学生の強豪などに棋界入りの門戸を開いた制度の
ようにも思えるのですが吉田さん以外挑戦したという話を聞きません。
やはり世の中安定志向なのでしょうか?囲碁では学生名人からプロに
なった人も少しはいるようですね。

投稿: 田舎天狗 | 2011年2月 2日 (水) 12時48分

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