竜王戦7番勝負(渡辺竜王―羽生名人)は波乱含みの様相
第23期竜王戦7番勝負(渡辺明竜王―羽生善治名人)は10月から始まり、渡辺竜王がまず2連勝しました。渡辺は竜王戦で羽生(第21期・23期挑戦者)、森内俊之九段(第22期挑戦者)に対して3年越しに10連勝したわけで、竜王戦に強い本領を発揮しました。先週の第3局は羽生名人が勝ち、対戦成績は渡辺の2勝1敗となりました。渡辺が防衛して7連覇するのか、羽生が奪取して「永世七冠」の偉業を達成するのか、来週の第4局以降の戦いに目が離せません。
私が第1局の終盤戦をテレビで見ていて、「羽生がいよいよ寄せに入ったな…」と思っていたら、数手後に羽生が突然の投了をしたのには驚きました。対局場の控室でも大混乱になったそうです。ただ実際はその局面では、羽生はすでに勝ちにくい状況だったようです。第2局は羽生が指しやすい展開でしたが、大きな疑問手はなかったのに勝ち切れませんでした。第3局の終盤戦では渡辺の勝勢といわれましたが、はっきりした勝ち筋が意外となく、歩切れを補う羽生の冷静な好手によって流れが変わりました。
なお、羽生がこの数年間のタイトル戦で最初に2連敗したのは3例あります。2005年の王位戦・佐藤康光棋聖戦は、2勝3敗から2連勝して王位を防衛しました。07年の王位戦・深浦康市八段戦は、2連敗から3勝3敗と持ち直しましたが、第7局で敗れて王位を奪取されました。08年の棋聖戦・佐藤棋聖戦は、2連敗から3連勝して棋聖を奪取しました。
2年前の竜王戦は、羽生が3連勝した後に渡辺が4連勝し、将棋界で初めての大逆転ドラマが起きました。今年の竜王戦も、将棋の内容と結果を見ると波乱含みの様相です。
その竜王戦が行われている最中の11月上旬。ある女性週刊誌が「結婚15年目の夫婦すれ違い」というタイトルで、羽生夫妻の別居問題を報じました。記事によると、羽生夫人(元女優の畠田理恵さん)は今年の春に都内の自宅を出て、横浜市内のマンションで13歳の長女、11歳の次女と暮らしているそうです。その理由は、次女がフィギュアスケートを習っていて、早朝や深夜に行われる練習のためにスケートセンターの近くに移ったとのことでした。夫人は夫婦の不仲説については、明確に否定しました。
羽生が大事な竜王戦を戦っているとき、こんな記事が出たのは著名人ならではの定めともいえます。私は同情する半面、真相はいったいどうなのかとも思ってしまいました。
じつは先週12日の将棋連盟・臨時総会の場で、私は羽生とたまたま隣り合わせの席となりました。休憩のとき、ある先輩棋士が羽生に娘さんたちのことで話しかけたのを耳にしました。その話によると、フィギュアスケートの選手をめざしている次女の腕前は5級(1級から始まり最高位は7級)とのこと。将棋界の師弟関係と同じく、指導者を簡単に変えられないそうで、横浜に移ったのもそのためだったようです。羽生はそうした事情をにこやかな表情で話していました。週刊誌の記事の影響は心配ないと思います。
次回は、コメントへの返事。
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コメント
ホント、羽生名人と奥さん・お子さんの「別居」の報道は不愉快でしたね。
私は
「羽生名人はお金はいくらでもあるし、お子さんはまだ小さい。横浜のスケート場の近くにマンションを手配して引っ越すくらいは普通にあるだろう。名人の言う通り、『不仲説』はガセネタだな」
と感じました。
田丸先生のおかげでそのことを確信でき、嬉しく思います。
渡辺竜王と羽生名人、将棋界の頂点に立つ2人の、フルセットに持ち込む熱戦を期待しています!
投稿: オヤジ | 2010年11月16日 (火) 19時59分
竜王戦第三局に観戦しに行きました。大判開設会は非常に面白く勉強になりました。
羽生名人の△7五歩は観戦した人の最初は感触はあまり良くないというのが大半でしたが、結果的にはこれが良かった手でした。
実は11日(2日目)に会場に泊まっていて、翌日に羽生名人とお話しすることが出来ました。とてもオーラがある方でガチガチになりました。
△7五歩の場面を聞きましたがあの場面はこの手しかないということでした。これで、完全に吹っ切れたのと流れが変わったと思います。ここから4連勝もあるかもしれません。お話してそう思いました。しかしながら渡辺竜王を応援している人間としては複雑なものです。
自分自身は所司和晴先生にお世話になっておりますので、、、、、
投稿: 深田有一 | 2010年11月17日 (水) 12時50分