将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年11月12日 (金)

師匠の田丸、弟子の櫛田、井出、近藤が集まった「田丸一門会」

田丸一門会

11月7日に「田丸一門会」を東京・吉祥寺の中華料理店で久しぶりに開きました。写真は、師匠の私こと田丸昇八段(60歳・右から2人目)、1番弟子の櫛田陽一六段(45歳・同3人目)、2番弟子の井出隼平三段(19歳・同1人目)、9月に奨励会に入った3番弟子の近藤祐大6級(13歳・同4人目)です。そのほかに「吉祥寺将棋サロン」の席主の新井さん、吉祥寺将棋サロンで指導している女流棋士の谷川治恵四段、井出、近藤の親たちも出席しました。

1番弟子の櫛田は、私が27年前に奨励会への受験を強引に勧めました。櫛田は当時18歳で、将棋雑誌の企画で全国の名高い強豪アマたちと対戦して腕を磨き、プロ棋士に対しては敵愾心を燃やしました。アマ棋界の風雲児のような存在でした。その櫛田と縁あって知り合った私は、学校に行かず定職に就かない櫛田の将来を心配したのです。やがて櫛田は私の説得に応じて弟子になり、奨励会は3年4ヶ月で卒業しました。

その後の櫛田の棋士人生は、NHK杯戦に四段で優勝、生活が乱れて成績が低迷、フリークラスに転出と、様々なことがありました。今は将棋に打ち込んだ生活を送っていて、弟弟子の井出、近藤を熱心に指導して面倒を見ています。今期竜王戦(6組・昇級決定戦)では3局目の師弟対局が実現しそうでしたが、その前に私が負けてしまいました。

2番弟子の井出は、小学生時代から吉祥寺将棋サロンに通い、今も毎日のように顔を出しています。現代の奨励会員の勉強法は、研究会で実戦、1対1で指す「VS」、パソコンで棋譜検索など、若手棋士と変わりません。しかし井出は、そうした勉強法をほとんどしません。何でも、研究会などで日時を約束するのが嫌だというのです。そのかわり、吉祥寺将棋サロンで後輩の奨励会員、強豪アマと指しています。井出の父親のような存在の新井さんは、「将棋クラブで育った棋士も現れてほしい」と期待しています。

井出は奨励会の6級〜二段時代、普段の成績はそれほど良くないのに、昇級昇段のチャンスがくると、ほとんど逃しませんでした。その勝負強さは大したものです。しかし難関の三段リーグで、それだけでは昇段できません。もっと勉強する必要があるでしょう。

3番弟子の近藤は、同じ小金井市に住む谷川女流四段の紹介で弟子になりました。私は初対面のとき、技術的な指導はできないと伝えました。現代棋界は、師匠が弟子に教え込むのではなく、仲間の奨励会員と指して切磋琢磨する時代です。その意味では、奨励会員が何人も集まって指している吉祥寺将棋サロンは絶好の勉強場で、近藤も通っています。

近藤は奨励会に入って2ヶ月たち、まずまずの成績です。ただ一門会では、前日の例会で3連敗したので元気がありませんでした。私が「負けが込んだとき、どう立ち直るかが大事」と言うと、井出の父親は「うちなんか9連敗もした」と妙な慰め方をしました。

今や数多くの棋士、奨励会員を擁して隆盛している、所司(和晴七段)一門、森(信雄七段)一門と比べると、田丸一門はささやかな存在です。私は数年後には現役を退きます。それまでに一門から棋士が生まれてほしいと、願っています。

次回は、今期竜王戦の勝負と竜王戦の成り立ち。

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コメント

田丸先生のお弟子さんになれるのはとても幸運ですね。きっと、大きな棋士が育たれることと思います。 息子(浪人中)も将棋は趣味として田丸先生のほんも愛読させていただいます。
先生のご活躍もお祈りいたします。時節柄ご自愛ください。

投稿: 希 | 2010年11月13日 (土) 17時20分

一門会のご様子、拝見しました。「ささやかな存在」と謙遜されていますが、こじんまりとまとまっていて結束が固い感じがしました。奨励会のお二人が一日も早くプロ四段になれますよう、お祈り申し上げます。私の息子も万が一奨励会に入れましたら、田丸先生の弟子にして頂きたいと思っております。息子はこの頃伸び悩んでいて、以前のように昇級出来なくなりました。初段までは良いペースだったのですが、壁があるようで勉強法も良くわからないようです。櫛田先生に直接ご指導頂けるなんて、夢のようですね。皆さま、益々のご活躍を!

投稿: 野菜村から | 2010年11月13日 (土) 20時32分

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