渡辺明竜王に羽生善治名人が挑戦する竜王戦が開幕
第23期竜王戦7番勝負がいよいよ開幕しました。渡辺明竜王に対して、羽生善治名人が挑戦しています。渡辺が防衛すれば、最多記録の竜王7連覇を達成します。羽生が奪取すれば、竜王在位が通算7期となって「永世竜王」の称号を取得できます。
渡辺と羽生は2年前の竜王戦でも対戦しました。あのときは規定によって、渡辺が勝てば竜王連続5期、羽生が勝てば竜王通算7期で、ともに永世竜王がかかった勝負でした。結果は、羽生が3連勝した後に渡辺が4連勝して巻き返し、渡辺が奇跡的な逆転防衛を果たしました。囲碁のタイトル戦やプロ野球の日本シリーズでは、3連敗から4連勝した逆転劇は何度か例がありました。しかし将棋のタイトル戦では初めてのことでした。
将棋のタイトル戦は、竜王・名人・王将・王位・棋聖・王座・棋王など7棋戦あります。羽生は1996年2月に7タイトルをすべて制覇し、社会的にも大きく注目されました。その羽生は今期竜王戦で、さらなる大記録をめざしています。
タイトル戦で優勝回数を重ねると、永世竜王・永世名人・名誉王座などの称号を取得できます。その条件は通算10期、通算5期、連続5期など、棋戦ごとに定められています。タイトル獲得数が合計78期に達している羽生は、竜王戦以外のタイトル戦で永世称号をすでに取得していて、「永世六冠」となっています。そして今期竜王戦で勝てば、「永世七冠」が実現するのです。これは途方もない大記録です。
2年前の12月に、数多くの名曲を残した作曲家の故・遠藤実が「国民栄誉賞」を受賞しました。じつは羽生の永世七冠が実現していたら、羽生が同時受賞する話が水面下で進んでいたそうです。永世七冠とは、それほど偉大な実績なのです。羽生が今期竜王戦で勝てば、政府から特別に表彰されるだろうと私は期待しています。
渡辺と羽生は竜王戦7番勝負に臨んで、次のように語りました。
渡辺「羽生さんと指すときは、やはりほかの人とは違う意識があります。ただ戦術的にはほかの人と指すときと同じです。大きな舞台にふさわしい将棋を指して、期待に応えたいという責任感はあります」
羽生「積極的に動いていって、主導権を取ることが大事かなと思っています。それが大きな課題でありテーマになります。棋士になって25年という節目でもありますし、力一杯全力を尽くしたいです」
竜王戦第1局は10月14日・15日に長崎市で行われています。振り駒の結果、渡辺が先手番と決まりました。戦型は、後手番の羽生が誘導して「横歩取り」になりました。両者はともに実戦経験が豊富で、先手・後手のどちらでも指しています。なお2年前の竜王戦では、横歩取りは用いられませんでした。第1局は1日目から激しい戦いが始まっています。
今期も大熱戦の展開が予想される竜王戦に注目しましょう。
次回は、コンピューター将棋の歴史。
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