将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年9月17日 (金)

東大法学部に在学中に棋士となった片上大輔六段

高校将棋の全国大会で活躍する学校は、麻布、開成、灘、筑波大付属高、各地の県立高校など、進学校が多いです。大学将棋においても、東京、一橋、慶応、早稲田、京都、北海道、東北、名古屋、九州など、一流といわれる大学の将棋部が強いです。それを実証するような出来事が10年前にありました。

2000年の春。奨励会の片上大輔三段(当時18歳)が何と東京大学・文科Ⅰ類に合格したのです。片上は広島県の生まれで、12歳のときに奨励会に入って棋士をめざしながら、地元の進学校の修道中・高に通いました。そして高校2年に校内の実力テストで文系のトップになったことから、東大進学を決めたそうです。

片上はその後、将棋の研究だけでなく受験勉強にも励み、2000年の正月から2ヶ月間は毎日10時間も猛勉強しました。そんな頑張りが実って、ついに東大合格を果たしたのです。受験の追い込み時期に行われた三段リーグ(99年秋~00年春)では10勝8敗の成績を挙げ、将棋と受験を見事に両立させました。

東大・文科Ⅰ類の学生といえば、いずれは法学部に在籍し、官僚をめざしたり一流企業に就職してエリートコースの人生が嘱望されます。それだけに、片上がどちらの道を歩んでいくのか注目されました。その片上は「棋士をめざす」と宣言し、大学に通いながら将棋修業を続けました。東大入学後の三段リーグでは、8勝10敗、11勝7敗、9勝9敗、9勝9敗、12勝6敗(次点)、10勝8敗、11勝7敗という成績で、後半の3期には昇段争いに加わりました。

そして2004年の春。片上は16勝2敗という抜群の成績を挙げ、四段昇段を決めました。三段リーグ在籍は10期、奨励会は10年6ヶ月での卒業でした。初の東大生棋士が誕生したので、記者会見が行われました。片上は質問に答えて、次のように語りました。

「過去に2回チャンスを逃したときは、勝負の世界に向いていないのかと、悩んだこともありました。学業との両立は大変ですが、大学生活が将棋にマイナスになるとは思っていません。ずっとプロ棋士の道しか考えてなかったので、官僚をめざそうと思ったことはありません。これからは、将棋で注目されるように頑張りたいです」

以前に「東大出の○○」(歌手・プロ野球選手・ボクサーなど)ということで注目された人がいました。それは、ひとつの「売り」になると同時に、何かにつけて「決まり文句」となり、当人にとって必ずしも良いとは限りません。片上が会見の最後に語った「将棋で注目されるように」の一言が、自身の心境をよく物語っています。

片上はエリートの象徴である東大法学部の学歴を封印して、将棋の道を邁進していきました。今年で棋士7年目の六段。竜王戦では6組、4組、3組で計3回も優勝し、上位の2組に在籍しています。今期C級1組順位戦では3勝1敗の成績で、有力な昇級候補です。「東大出の片上」という表現はもう使われないほど、棋士としての実績を確実に挙げています。

次回は、コメントへの返事。

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