将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年9月10日 (金)

「振り穴王子」こと広瀬章人新王位は23歳の早大生

王位戦7番勝負(深浦康市王位―広瀬章人六段)で、タイトル戦初挑戦の広瀬が王位戦3連覇の深浦を4勝2敗で見事に破り、広瀬新王位が誕生しました。

広瀬には「振り穴王子」の異名があり、振り飛車穴熊が得意戦法です。振り飛車穴熊というと、玉の守りを固めてから豪快に攻め込むイメージがあります。しかし広瀬の指し方はとても柔軟です。攻防のバランスを保ちながら、相手の攻めと自陣の守りとの距離感を測る感覚が優れています。そして機を見て寄せに転じると、一気呵成に寄せ切る終盤の強さが際立っています。その典型例が羽生善治名人との挑戦者決定戦で、一瞬の隙をついて居飛車穴熊の玉を寄せ切ったのは見事でした。王位戦リーグでも渡辺明竜王、木村一基八段らに振り飛車穴熊で勝ちました。

広瀬は深浦との王位戦で、振り飛車穴熊を合計6局(第5局・第6局の千日手局を含む)も用いました。振り飛車穴熊での戦績は第4局まで○●●でした。第5局では深浦の猛攻によって穴熊が落城寸前に陥りましたが、受けの好手を連発してしのいで千日手に持ち込んだことが、勝負の大きな分岐点になったと思います。第5局以降の振り飛車穴熊の戦績は△△○で、結果的に王位獲得への原動力となりました。

「今回は挑戦者の巧さが際立ったように思います。2局続けて千日手は珍しい」とは『五平餅』さんのコメント(9月2日)。「広瀬君の将来性を考えて、今回の将棋の内容を見て厳しい意見を述べたほうがいいですよ」とは『moge』さんのコメント(9月3日)。「第6局指し直し局は名勝負でした。今期は名人戦、棋聖戦が盛り上がりのないまま終わってしまったので、ようやくタイトル戦らしい勝負が堪能できました」とは『十字飛車』さんのコメント(9月3日)。

『五平餅』さんのコメントのように、広瀬は23歳と若いのに将棋の指し方は老練なところがあります。『moge』さんのコメントは、若いうちから勝負にこだわって穴熊を用いたり千日手も辞さないのは、大成しないのではないかという考えでしょうか。ただ『十字飛車』さんのコメントのように、今期王位戦はどの将棋も白熱した戦いとなり、最後までファンを沸かせました。広瀬将棋の強さが本物かどうかについては、他棋戦での活躍、来期王位戦の防衛戦の実績などによって、今後の評価が定まってくると思います。

広瀬は早稲田大学教育学部に在籍する大学生の顔も持っています。ただ5年前に棋士になって以来、年間平均で約40局の対局をこなしていて、学業に専念できない事情もあってか今年で6年生になるそうです。昔はクラブ活動などに熱心なあまり、8年生も珍しくなかったのが早大生です。広瀬が棋士と大学生の二足のわらじを履いて留年したのは、いたしかたないことでしょう。

じつは、早大出身者の棋士がなぜか多いのです。ざっと数えて10人ほどいます。奨励会で棋士をめざしながら受験勉強するのはかなり大変なはずですが、近年は「一芸入試」や「自己推薦」の手続きで入学するケースもあるようです。

次回は、棋士と学歴について。

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コメント

田丸先生質問に答えていただきありがとうございます。

>ある棋士と交流しているそうで、連盟の財政状況はその棋士から得た情報なのでしょう。

残念ながら違います。今回は政治家関係者から聞いたと書いておきます。多分その棋士はそっちには余り興味ないと思われます。(本はいっぱい書いておりますが。)


今期の広瀬先生は神がかっていました。多分今回は急逝された新井田さんが力を貸してくれたかもしれません。自分自身も今回広瀬先生には大変お世話になりまして第二局の前に一緒に写真を写させていただきました。

本当にありがたいことだと思います。


投稿: 深田有一 | 2010年9月11日 (土) 00時11分

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