将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年8月 6日 (金)

引退に該当しても所定の成績で棋戦に参加できる制度が発効

前期順位戦で有吉道夫九段(当時74歳)はC級2組から降級、年齢規定によって引退となりました。しかしNHK杯戦では予選で3連勝して本戦に出場したので、さらに勝ち続けて優勝したらどうなるのか、という問題が生じました。実際に有吉は1981年に優勝しています。また優勝したら、次期のNHK杯戦にむろん出場できるはずです。しかし1回戦で敗れ、残っていたほかの棋戦も敗れたので、5月24日付で引退が決まりました。

NHKテレビは昨年から、引退の瀬戸際にいる有吉の対局と将棋人生について、ニュース番組などで何回か取り上げてきました。7月には『クローズアップ現代』の番組でも特集しました。そんな影響もあってか、順位戦だけの成績で棋士生命が左右されることを疑問視する声が上がりました。とくに竜王戦を主催する読売新聞社は、竜王戦で実績を挙げれば現役を続けられる制度を要望しました。

将棋連盟は、引退に該当しても所定の実績で棋戦に参加できる制度が7月9日付で発効したことを発表しました。竜王戦は4組以上に在籍、5組在籍者は2期だけ参加。王位戦、王将戦はリーグ残留者。王座戦、棋王戦、棋聖戦、朝日杯、NHK杯はベスト4。銀河戦は優勝か準優勝。以上の実績を挙げれば、棋戦ごとに参加できます。そして対局がすべて終わった時点で引退となります。

この制度の対象者は、順位戦でC級2組から降級した60歳以上の棋士、順位戦で同じく降級して60歳になったフリークラス棋士、順位戦で同じく降級して10年たったフリークラス棋士など。いずれも従来は、その時点で引退となりました。自身の意思でフリークラスに転出した棋士(現在、田丸を含めて18人)には適用されません。

現実的に最も可能性があるのは竜王戦での実績です。4組以上の在籍者は、数年以上は持つでしょう。5組在籍者は、2期以内に4組に昇級すればさらに延長し、1期目に6組に降級すれば2期目はありません。来年以降は、竜王戦だけ毎年対局する棋士が出てくるかもしれません。

将棋界では長年にわたって、順位戦での成績が棋士生命、ランク、対局料、昇段などの基準になってきました。7月に制定された引退規定は、ほかの棋戦の実績を重視するとともに、順位戦偏重を改めたもので、私は大いに評価しています。

それにしても、1人のベテラン棋士の引退問題が社会的にも注目され、その余波によって順位戦を主とした引退規定が改定されたのは、画期的な出来事だったと思います。

順位戦は発足から60年以上たち、現代では様々な問題点を抱えています。しかし勝負の世界らしい「信賞必罰」の厳しい制度として、多くの将棋ファンから注目を集めてきたことは事実です。とくに引退に関係する降級制度は、お隣の囲碁界にはないものです。

次回は、順位戦の歴史と降級制度の変遷。

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コメント

棋士にとって現役引退は、大きな転機だと思います。7月に新しく制定された規定は全棋戦の成績を考慮に入れた優れものだと思います。
有吉先生、大内先生、お疲れ様でした。
田丸八段もなるべく長く現役で活躍してください。先生の独創的な将棋が拝見したいです。NHK杯戦にも出てください!

投稿: ムーミンパパ | 2010年8月 8日 (日) 16時50分

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