将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年8月24日 (火)

将棋人口、将棋資料、棋士志望などのコメントへの返事

「インターネットが発達して、タイトル戦の観戦にはとても良い環境になりました。ところで将棋人口は増えているのでしょうか?」とは『ムーミンパパ』さんのコメント(7月31日)。

政府系のある法人が約20年前に発表した将棋人口は1300万人で、近年は800万人に減っています。この人数の実態は、将棋を趣味にしている、テレビの将棋番組をたまに見る、ルール程度は知っているなど、将棋との関わりは多種多様です。したがって、将棋クラブに行って指したり、棋書を買って研究するコアの将棋ファンの割合は決して多くなく、さらに年々減少傾向にあるのは事実です。ただ趣味の多様化や経済不況の影響によって、お隣の囲碁界や出版・音楽・映像などの文化系分野も業績が次第に落ちていて、将棋界だけの問題ではないと思います。一方で明るい話もあります。子どもの将棋ファン、ネットで将棋を楽しむファンが増えているのです。将棋連盟は子どもへの普及、ネット関連の事業に力を入れており、それが将来に実を結ぶことを期待したいものです。

「田丸八段はいつもきちんと調べて書いていますが、いろいろな資料をどうやって手に入れたのでしょうか?」という内容のコメント(8月10日)は『五平餅』さん。

私が棋士になったのは38年前。それ以来、『将棋世界』『近代将棋』『将棋マガジン』『NHK講座』『将棋ジャーナル』など、今は廃刊となった雑誌も含めて、発行年月順に自宅の書庫に並べてすべて所蔵しています。だから資料を「手に入れた」というよりも「残して整理してある」のです。昔の資料を調べる場合は、故・山本武雄九段が著した『将棋百年』という本がとても役に立っています。どの世界でも、歴史を伝えることは大事です。私も、将棋界の歩みを検証した著作をいずれ書きたいと思っています。

「私の小学4年生の息子は将棋が好きで、近くの将棋会所に通って棋力は初段ぐらい。本人は羽生さんのようになると張り切っていますが、棋士になれるでしょうか? 具体的なことを教えてください」という内容のコメント(8月16日)は『野菜村から』さん。

私は小学6年生で将棋を覚えました。それに比べれば、小学4年生で初段とは大したものです。今後も上達することを期待しています。ただ棋士をめざすには、かなり強くならないと難しいです。具体的にいうと、2~3年以内に四、五段クラスの棋力をつけることです。その時点で本人の棋士志望の気持ちが強く、ご両親も賛成ならば、棋士養成機関である「奨励会」への入会試験を受けてみてください。

奨励会入会試験は毎年8月に行われ、全国から有望な小中学生が数多く受験します。じつは今年、四段の棋力があって小学生の全国大会で準優勝したKくんが私の弟子として受験しています。それだけの実績があっても、簡単に合格できないほどレベルが高いのが現状です。奨励会に入会できても、さらに厳しい勝負が続きます。

奨励会は6級から三段まで9ランクに分かれ(アマの段級とは違います)、規定の成績を収めると一歩ずつ段級が上がります。そして最後の難関の三段リーグ(半年ごと。今期上半期は32人)で2位以内に入れば、四段に昇段して晴れて棋士として認められます。卵が孵化するその確率は2割程度です。奨励会の話は、いずれまた取り上げます。

次回も、コメントへの返事。

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コメント

お返事有難うございました。畑から帰って来てブログを見てびっくり!本当に答えて頂けるのですね。感激です。奨励会に入会するのに試験があるとは知りませんでした。大変なんですね。家は地方ですので、交通費など悩みが多いようです。私としては農業を継いで欲しい気持ちもありますが、本人の夢をかなえてやりたい気持ちの方が強いです。たとえ夢で終わってしまっても、若い時期に全力で何かに打ち込んだ経験は、きっと役に立つと思います。また、コメントさせて頂きます。

投稿: 野菜村から | 2010年8月24日 (火) 20時37分

質問の答えを有難うございました。年々遊びが多様化する中で、将棋は頑張っている方だと思います。やはり日本人は勤勉で、頭を使うことが本質的に好きなのだと思います。将棋連盟も最近は危機感を持って普及に取り組まれているようなので、期待しています。
私の通う将棋道場の席主は、初めてのお客さんには必ず「人と指した事がありますか?」と聞きます。ちょっと不思議な感じがしましたが、最近ではあたりまえの質問に思えてきました。ネットで覚える人も多いのですね。初心者にはそれも有効だと思います。

投稿: ムーミンパパ | 2010年8月25日 (水) 17時36分

田丸先生こんにちは。
一将棋ファンにすぎませんが、昔将棋世界を毎月購入し、保管しておりました。しかし狭いマンション住まいのため10年分くらいの将棋世界を整理せざるをえませんでした。先生の2010年8月24日のブログで過去の将棋関連の雑誌等をすべて保管されていると知り、すばらしいことと思いました。
欧米では各種の本や新聞、雑誌等を図書館その他で保管し、今全く役に立たないと思われるものでも大切に残しております。
国際政治では70年前80年前のことが係争の案件になり、そのときほんとはどういう状況だったのか知ることが必要となることもあります。
将棋が国際政治に関係があるわけではありませんが、将来の子孫が将棋の歴史や戦法を研究するのに必要となることもあるでしょう。
将棋連盟では書物や新聞の保管をどうされているのか知りませんが、ぜひ過去の将棋関連の出版物が散逸しないように図書館を作り保管していただきたいと思います。
わたくしの実家にも金先生の古い駒落ちの戦法の本がありますが、あれなども今のままでは廃棄されるのかなと思います。
週刊将棋が休刊となるようですが、紙での保管が重要と思います。また電子化なども必要でしょう。
ぜひ将棋関連の出版物の保管を検討ねがいます。


投稿: 奥津 実 | 2015年12月30日 (水) 12時01分

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