将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年8月27日 (金)

NHK杯戦DVD化、将棋連盟財政、棋士志望などのコメントへの返事

「NHK杯戦の対局のDVD化はできないのでしょうか。全局は無理にしても準決勝・決勝だけでも実現すれば、多くの将棋ファンが喜ぶと思います。時代を彩った棋士たちの将棋を残すことは意義があります」という内容のコメント(8月23日)は『手塚』さん。

通販カタログを見ると、有名な音楽・映画・落語などのCDやDVDが数多く載っています。その中にNHK杯戦の将棋名局集があってもいいですね。私も『手塚』さんの考えに同感です。生前の大山康晴、升田幸三、現役時代の中原誠、米長邦雄、五段時代に名人経験者を4連破した羽生善治、若手時代の谷川浩司、森内俊之、佐藤康光など、著名棋士のテレビ対局を通してその時代を振り返るというのは、とても興味深い企画だと思います。ただ現実問題として、そのDVD化が商売として成り立つかどうかです…。

「2009年度の将棋連盟の収支が9000万円超の赤字となったとのことですが、将来も大丈夫なのでしょうか」とは『深田有一』さんのコメント(8月18日)。

『深田有一』さんはある棋士と交流しているそうで、連盟の財政状況はその棋士から得た情報なのでしょう。確かに今年5月の連盟総会では、理事会は2009年度の本部会計が約1億円の赤字(正味財産の減少)になったと発表しました。私たち棋士にとって憂慮すべき問題ですが、将棋ファンの方にもご心配をかけたようです。現代は社会全体が経済不況によって萎縮していて、連盟がその影響を受けたのはしかたないと思います。ここで問題なのは、赤字の中身です。経営者が収入増に努力しないうえに、不適切な支出が多くて赤字となったら、放漫経営と批判されて当然でしょう。では、連盟の場合はどうだったか…。

連盟は2009年度、棋聖戦の契約金の減額、免状料の減収、書籍の在庫処分(出版事業を毎日コミュニケーションズに委託した事情)などの事由で赤字となりました。そのほかに、ネット関連事業や普及事業に初期投資しました。つまり社会の経済事情、事業の合理化、新事業への投資などによって赤字となったのです。将棋に例えると、積極的に攻めていって結果的に駒損したような一面があります。私は良質の赤字だったと思います。

また、文化庁が日本の伝統文化(将棋・囲碁・茶道・香道など6分野)を支援した事業では、連盟は「親子将棋教室」などの普及事業を全国的に展開し、6分野の中で最も活発でした。これが実績となって、今後も予算計上が期待できそうです。

小学4年生の息子さんが棋士志望という『野菜村から』さんは、「家は地方ですので、交通費など悩みが多いです。私としては農業を継いでほしいですが、本人の夢をかなえてやりたい気持ちのほうが強いです」とのコメント(8月24日)。

前回のコメント返事では、棋士になる道筋を簡単に説明しました。まず棋士養成機関「奨励会」を受験して入会することですが、地方在住だと月2回の対局日の交通費・宿泊費がかかります。東京(大阪)に出て本格的に修業すれば、生活費で経済的負担がさらに生じます。また、将棋と進学との兼ね合いも大事な問題となるでしょう。今週前半に行われた奨励会入会試験で、私の弟子(近藤祐大・12歳)が6級で合格しました。東京在住なので、今後は毎日のように奨励会員と指して腕を磨くことでしょう。地域差はどうしてもあります。

次回は、大激闘だった王位戦(深浦王位―広瀬六段)第5局。

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コメント

田丸先生、お弟子さんの奨励会合格、おめでとうございます!12歳で、もう本格的なプロ修行を始めるんですね。是非、頑張ってください。陰ながら応援しております。家の息子は地方でハンディが多くあると思いますが、新鮮でおいしい野菜を沢山食べさせてやります。(草食系男子になってしまうかな?)質問ですが、奨励会員というのは具体的にどういう立場なのでしょうか?アマチュアの大会にはもう出られないのでしょうか?

投稿: 野菜村から | 2010年8月27日 (金) 17時40分

田丸先生、こんにちは。

ジロウと申します、半年ほど前にもコメントをさせていただき、田丸先生から小生のそのコメントに対してもこのブログでご返信をいただき、大変感激いたしました。
本当にありがとうございます。

さて、連盟の赤字の件ですが、拝見しておりますと連盟はやっぱり考えが足りませんね。
その一つが、「全ての価値判断を将棋の勝敗のみでしか考えない。」 ことですね。

わかりやすく申し上げましょう。
NHK杯ですね。
天下のNHK杯でも、出場棋士を新聞棋戦と同じように、トーナメントい形式のみで決めてきますね。

その結果、一週間の疲れが抜けきらない日曜日の朝から、よくわからない棋士が、一手損角替わりとかヨコ歩取り8五飛とかの、アマチュアにはさして興味がない最先端先方で地味な局地戦を見せられる。

相当な将棋ファンでも、特に面白いと思うのでしょうか?

どうして、NHK杯には「ファン人気投票出場枠」がないんでしょうかね。

「加藤一二三先生 VS 神吉先生」 なんてカードを特別放送しようとか、会議で議論しないんでしょうか?

将棋連盟は相撲協会のような「変革なしのジリ貧」にならないように、祈るばかりです。

ジロウ

投稿: ジロウ | 2010年8月28日 (土) 23時51分

奨励会のことを説明されるなら同時に研修会も説明されたほうがいいように思いますが如何でしょうか。奨励会は相当高い棋力がないと入れませんが研修会で腕を磨いてから受験されるかたが今は多いので棋士志望の方の親御さんには必要な情報のように思います。

投稿: 田舎天狗 | 2010年8月29日 (日) 12時19分

田丸先生、早速コメントを取り上げていただきありがとうございます。たしかに採算がとれるかが一番の問題ですね。何らかの形で残していってほしいものですが。

投稿: 手塚 | 2010年8月30日 (月) 20時57分

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