将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年7月13日 (火)

相撲界の不祥事について将棋連盟会長の米長邦雄が厳しく批判

相撲界が野球賭博の事件によって大揺れしています。日本相撲協会は、賭博に関わった親方や力士を処分したり、外部理事を理事長代行に据えたりして、7月の名古屋場所の開催を何とか実現できました。しかし、反社会勢力の暴力団との関係を根絶し、制度や体質を改めて一から出直す抜本的改革が必要です。相撲界が再生するには、これからが正念場だと思います。

それにしても、近年の相撲界はあまりにも多くの不祥事が続発しています。週刊誌の八百長疑惑報道、親方から力士への傷害致死、休場中の横綱が海外で不適切な行動、数人もの力士が大麻の所持と使用で解雇、横綱が暴行問題で引退、特別席で暴力団員が相撲観戦、そして今回の暴力団がらみの野球賭博。

世の中には種々のスポーツ・文化団体がありますが、これほど不祥事が続発している団体は相撲協会だけです。しかし協会を運営する理事会(理事長・武蔵川親方)は、問題が起きるたびに上辺だけを取り繕ったり、抜本的改革を先送りしたりして、自浄作用がまったく機能していません。

6月23日の朝日新聞・オピニオン欄では、日本将棋連盟会長の米長邦雄(永世棋聖)が野球賭博問題について、『協会理事長は潔く「投了」を』と題する意見を寄稿しました。米長は「名古屋場所の開催という次元でなく、団体の存続にかかわる問題である。私が最も問題だと思ったのは組織の責任の取り方だ」と、協会を厳しく批判しました。

米長は元横綱・朝青龍の引退問題を例に挙げ、次のように論じました。「大相撲は神事で、横綱は神の代理人である。その横綱に問題があったにせよ、結果として追放するがごとく処遇したのは、昔なら切腹ものである。将棋界でいえば、名人や竜王を追放するに等しく、私が理事長なら責任を取っただろう。それが日下開山(ひのしたかいさん。相撲、武芸で比類のないほど強いこと)への最低限の礼であろう」

竜王や名人のタイトルを持つ棋士が、相撲界で起きたような不祥事に関わることは想像すらしたくありません。実際に、絶対にないはずです。しかし万が一にもそんな事態になったら、当の棋士は厳罰を受け、連盟会長は責任を取って辞任するでしょう。連盟の主要事業である公式戦の開催にも、深刻な影響が出ると思います。

こうして重大な事態を想定してみると、相撲協会の一連の対応は危機意識がなさすぎると言わざるをえません。米長も「理事長は潔く身を引くことを勧めたい。それが協会を救う唯一絶対のことではないだろうか」と、最後に結びました。

将棋と相撲は、ともに日本の伝統的文化で庶民の間に根付いています。将棋連盟は社団法人、相撲協会は財団法人と、ともに公益法人です。連盟は棋士、協会は親方が運営していて、純血主義の運営形態も似ています。それだけに私たち棋士は、現在の協会がおかれている状況を、「対岸の火事」と見てはいけないと思います。

次回は、将棋連盟と相撲協会の比較について。

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コメント

田丸さんご無沙汰しています。
昔、将棋を教えていただいた、頭金クラブの中沢です。覚えていらっしゃいますか。
私定年致しまして、現在駒作りで生計を立てております。現在まで約120組の盛り上げ駒を作ってヤフオクに出品しています。
よろしかったら、上記HPを見ていただけると幸いです。
将棋をさすほうはからっきしだめですが、頑張って将棋に携わっております。
今後ますますのご繁栄をお祈りしております。
                            草々

投稿: 田丸さんご無沙汰しています。中沢です。 | 2010年7月16日 (金) 11時33分

田丸先生、いつもこのブログの更新を楽しみにしております。
故・山田道美九段については、「大山康晴の晩節」で一応存じてはおりましたが、田丸先生のブログで山田九段の写真を初めて見ることが出来ました。夭折しなかったら、その後の棋界の流れは大きく変わっていたでしょうね。
山田九段がもし健在であれば76歳、既に引退しているでしょうが、まだまだ元気なお歳です。山田九段についていろいろなお話を読ませて頂き有難うございました。

ところで、私も、米長会長が中心となって名人戦を毎日新聞から朝日新聞に移そうとした時の連盟の行動には正直眉を顰めました。

1) 当時の毎日新聞は、名人戦と王将戦と言う二つの棋戦を主催し、連盟からの契約金増額要請にもそれなりに応じていた様子であった。
毎日新聞は、読売・朝日の二大紙とは資金力に大差があるわけで、その中で将棋にお金をきちんと出してくれる「連盟の大事なスポンサー」であったはず。

2) 報道によると、連盟は朝日新聞に名人戦を「売る」ことでまず合意し、次いで毎日新聞に一方的に「名人戦の契約打ち切り」を告げたとされる。これは「恩義のある毎日に後ろ足で砂をかける」、毎日新聞に対して無礼極まる態度としか評せない。

3) タイトルホルダーを含む何人もの棋士が「毎日新聞に対する連盟執行部の態度は礼節を欠いている」と公に表明した。勇気のある行動と感心した。

4) 結局「名人戦は毎日と朝日の共催」となり「王将戦も存続」という、連盟にとっては具合の良い決着になったようだが、「連盟はゼニのためなら何でもする団体」という印象を世間に与えたことは確かである。
私も米長会長をそのように見ている。
同じ「棋士の団体」でも、囲碁の日本棋院、関西棋院は、このような「カネ目当てに長年のスポンサーに絶縁状を叩きつける」ような行為は一度もしていない筈。

田丸先生は、連盟に所属する棋士でおいでですから、この「事件」について発言なさるのは難しいと拝察しますが、私と同様に考えている将棋ファンは決して少なくないと思います。

投稿: オヤジ | 2010年7月22日 (木) 15時30分

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