将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年5月13日 (木)

名人戦(羽生名人―三浦八段)第3局は終盤で大波乱

名人戦第3局は終盤で大波乱

先週の6・7日、名人戦(羽生善治名人―三浦弘行八段)第3局が行われました。戦型は3局連続の「横歩取り」でした。盤勝負で一方が同じ手番のとき(例=第1局・第3局・第5局)、同一戦法を用いることはよくあります。ただ双方が先手・後手を入れ替えて同一戦法を採った例は珍しいです(相矢倉は除く)。

研究家の三浦は横歩取りを深く掘り下げていますが、羽生も横歩取りの実戦経験が豊富で得意としています。お互いに引くに引けない、という心境でしょう。

第3局は前2局とはまったく違った戦いでした。三浦の攻めを羽生が押さえ込む展開となりました。中盤では三浦の攻めがやや息切れ気味でした。羽生はじわじわと締めつけていき、そのまま押し切るかと思われました。しかし三浦は懸命に頑張りました。

名人戦第3局では、全国47都道府県で大盤解説会が開かれ、私は九州・熊本の会場に出向きました。

写真の大盤の局面(下側の先手が三浦、上側の後手が羽生)は、羽生の△4五角の飛車取りに対して、三浦が6八にいた銀を▲5七銀と上げて受けたところです。この手で▲4六飛と逃げると、△6六桂(▲同歩は△7八角成)の王手金取りを打たれて先手が負け筋です。私は▲5七銀を見て、「おっ」と思いました。苦しいながらも相手に決め手を与えない粘りで、三浦の勝負への執念を感じ取りました。勝負の夕方はまだわからないと思ったもので、実際に終盤で大波乱が起きました。

実戦は写真の局面から、△5六角▲同銀△4四桂▲1二角△2七歩▲3九銀△7六歩▲6五桂△7七歩成▲5三桂成△同銀▲4五角成と進み、三浦は一手違いの勝負形に持ち込みました。それでも三浦の負け筋でしたが、羽生が角打ちの王手に対して合駒の応手を誤って形勢が逆転し、三浦に勝ち筋が生じました。

しかし1分将棋の秒読みに追われている三浦は勝ち筋を逃し、自玉に詰めろをかけられた局面で投了しました。長い激闘を経て、精魂が尽きてしまったのです。相手玉への王手はしばらく続けられますが、「良い棋譜を残したい」と表明した三浦にとって、棋譜を汚すことになると思ったのでしょう。

感想戦終了後に盤側から、三浦が投了した局面でベタ金の連続王手で詰めろを防ぐ手段が指摘されました。秒読みの両対局者はまったく気付きませんでした。しかし、これはあくまでも結果論というもの。

これで名人戦は羽生の3連勝となり、三浦は角番に追い込まれました。三浦としては、第4局(18・19日)では開き直って指すしかありません。そして何とか1勝すれば、かすかな光明が射し込んできます。戦型は4局連続の横歩取りが予想されます。

次回は、コメントへの返事。

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