今年の将棋連盟総会の重要案件は「公益法人改革」
将棋連盟の通常総会が本日・26日に開催されます。国政でいえば国会の本会議で、重要案件の議決や理事選挙(2年ごと。今年は非改選)が行われます。出席資格者は206人の正会員(現役・退役の棋士。女流棋士は含まれない)。出席率は約8割と高く、東西の棋士が一堂に会する光景はなかなか壮観です。以前の会場は東京・将棋会館の大広間でしたが、棋士の人数が増えて手狭になったので、隣のビルの会議室を借りています。
開会は午後1時。冒頭で会長の米長邦雄永世棋聖が挨拶し、議長指名・新四段紹介・各部報告・質疑応答・重要案件の討議という手順で進行します。以前は非公開でしたが、今は開会から新四段紹介まで報道陣に公開しています。
企業の株主総会の中には、「シャンシャン総会」というような短時間で閉会する社もあります。しかし連盟の総会は時間をかけて議論します。約35年前の総会では、多くの重要案件があったうえに議論が白熱し、閉会が翌朝4時という「暁の総会」となりました。
当時は議長がいませんでした。みんなが勝手に話したり議論が脱線して「千日手」模様となり、収拾がつかない事態に陥って長引いたのです。また、実力社会なので上位棋士の威光が強く、「下位者は黙れ! 文句があるなら将棋で来い」と威張った棋士もいました。
今はかなり様変わりしています。指名された2人の棋士が議長として、議事を円滑に進行させ、挙手をした者にしか発言を認めません。粛々と進行して私語はほとんどなく、野次が乱れ飛ぶ国会よりもはるかに規則正しく紳士的です。以前と違って、上位棋士が睨みを利かすような空気はなく、下位棋士でも自由に意見を述べられます。
今年の総会では「公益法人改革」の制度が重要案件です。連盟は文部科学省の外郭団体・文化庁が所管する公益性が高い社団法人です。しかし政府が3年前に決定した前記の制度によって、すべての公益法人が数年以内に改めて申請することになりました。その内容で「公益法人」と「一般法人」に選別されます。公益法人の名の元に、不適切な事業をしたり私利を得る法人を整理する意図もあるのでしょう。
連盟は棋戦主催や普及事業などで将棋の普及を推進し、これまでに一定の成果を収めてきました。財務面は健全で借入金はなく、自主独立で運営してきたので、政府からの補助金を受けていません(天下りもありません)。
そうした体質の連盟が公益法人として申請して何ら問題がないと、私たち棋士は思っています。しかし公益法人に認可されるには、高いハードルがあります。とくに、特定の人(棋士)が利益を得ることはできません。もちろん対局料や賞金は認められますが、棋士が得ているそのほかの待遇や既得権が問題になりそうです。今年の総会では、それをどう調整するかで議論されます。各棋士の利害に関わることなので、簡単には決着しないと思います。
次回は、大盤解説会で行った九州・熊本での観光。
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コメント
棋士総会の歴史、興味深く拝読しました。
今年も穏やかに行われたようで、良かったですね。
その場に行ったら、息を吸うだけで将棋が強くなりそうです。
投稿: 五平餅 | 2010年5月28日 (金) 14時18分
日レス杯の問題が全くわからない…本当にLPSAが連盟の女流棋士の名を勝手に使ったのであれば、訴訟をもって戦うことの方が自然な流れです。会長と女流棋士が裏で組む事は普通に考えてあり得ないことだと思います。理事の方々どうしの話し合いを越え、女流棋士に被害が及ぶのであれば裁判所で結論を出すべきです。ネット上では会長が裏で手を回しているなど根も葉もない噂もあります。一定の結論を出さなければ、将棋ファンは離れていくことになると思います。
投稿: ケイ | 2010年5月29日 (土) 03時19分