将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年3月18日 (木)

「直木賞受賞式」で見かけた将棋と縁がある作家たち

2月の直木賞受賞式

私は2月19日に東京・日比谷の東京会館で開かれた「直木賞・芥川賞受賞式」に出席しました。今回の芥川賞は該当作がなく、直木賞は佐々木譲さんの『廃墟に乞う』、白石一文さんの『ほかならぬ人へ』の2作が受賞しました。

佐々木譲さんは私と同世代で、将棋が好きと聞いたので共通の知人に紹介してもらったことがあります。私が好きな作品は『ベルリン飛行指令』。戦時中に日本人パイロットが極秘指令で「零戦」に乗って同盟国のドイツへ向かう痛快な話です。最近は『警官の血』などの警官シリーズが人気作です。白石さんは父親の白石一郎さんに次いで父子二代の受賞。

写真は、選考委員を務めた作家たち。左から渡辺淳一さん、浅田次郎さん、北方謙三さん、阿刀田高さん、林真理子さん、宮部みゆきさん、山田詠美さん。じつに豪華な顔ぶれで、渡辺さん、浅田さん、北方さんの和服姿はまさに「文壇」という趣があります。欠席したほかの選考委員は、五木寛之さん、宮城谷昌光さん、村上龍さん、川上弘美さんなど。

私は以前に将棋のエッセイを文芸誌に連載していました。その関係でこうした文芸バーティーに出席することがたまにあり、将棋を愛好する作家と懇談するのが楽しみでした。

渡辺淳一さんは熱心な将棋愛好家で、文壇きっての強豪です。30年ほど前には将棋好きの編集者らを自宅に集めて将棋会をよく開き、私は若手棋士のころに何度も伺いました。渡辺さんは奇手やハッタリを用いない堅実な棋風です。どんなに不利でも勝負を捨てず、「さあ、醜くのたうちまくって死んでやるか」と言っては頑張り抜きます。こと将棋に関しては、安楽死や情死をテーマにした作家とは思えません。

バーティー会場で会った逢坂剛さん、船戸与一さんも将棋が好きです。逢坂さんは今年の正月にNHKで放送された『大逆転将棋』の番組に出演し、羽生善治名人に対して健闘しました。以前に文芸誌で『棋翁戦』という将棋バトルが企画されたときは、逢坂、船戸、夢枕獏さん、志水辰夫さん、黒川博行さんらの作家たちが参戦して盛り上がりました。

林真理子さん、宮部みゆきさんは、将棋雑誌で棋士と対談したことがあります。

林さんは直木賞を受賞した24年前、同じ山梨県生まれのよしみで米長邦雄(永世棋聖)と対談しました。林が「山梨に過ぎたるものは武田信玄と堀内恒夫(元巨人監督)と昔は言われましたが、今は信玄と米長邦雄ですね」と言えば、米長は「いや、今は林真理子とロス事件の三浦和義です」と応じ、とても和やかな雰囲気でした。

宮部さんは10年前、羽生善治と対談しました。じつは宮部の初期の作品に将棋の強い少年が出てくるので、私がパーティー会場でそのことについて話しかけてみると、宮部から「父親が大の将棋好きで、子どものころに姉と一緒に将棋を習いました」と、思いがけない返答を得ました。それがきっかけとなり、私が羽生・宮部の対談を設定したのです。

ほかの作家では、内田康夫さん、西村京太郎さんも将棋愛好家です。その話は、いずれまた…。

次回は、38年前の3月21日の田丸のデビュー対局。

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