将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年2月11日 (木)

元タイトル保持者でA級棋士の郷田真隆九段が遅刻で不戦敗

1月21日の竜王戦・森内俊之九段―郷田真隆九段戦は、郷田が寝坊で遅刻して不戦敗となりました。対局規定では遅刻時間の3倍が持ち時間から引かれ、持ち時間5時間の竜王戦は定刻の10時から1時間39分1秒を過ぎると時間切れです。実際には11時25分に、郷田から将棋連盟の事務局に「もう間に合いません」との連絡があったそうです。

新聞記事によると、郷田はライバル対決を意識しすぎて前夜に眠れず、明け方の4時にやっと寝ついたら深い眠りに入ってしまい、2つの目覚まし時計をかけておいても起きられなかったとのことてす。勝負の前夜に深酒や夜遊びをしたどこかの元力士とはまったく違うので、当日の状況には少しばかり酌量の余地があります。

しかし棋士にとって、対局は最大の公務です。どんな事情があるにせよ、遅刻による不戦敗は絶対にあってはならないことです。それでもたまに生じますが、郷田のように元タイトル保持者でA級棋士の例は記憶にありません。

連盟理事会はこの事態を重く見て、郷田に対して「対局料の不払い・手当の返納・ファンへの奉仕活動(1日)」などの処分を通告しました。3件のうち前2件は当然のことですが、ファンへの奉仕活動を付したのは「大岡裁き」だったと思います。将棋ファンが喜ぶとともに、郷田の過ちが解消されるなら、お互いに良かったとプラス思考になれます。

仲間内の話では、郷田はほかの待ち合わせでも遅れることがよくあったそうです。これを契機に、時間の観念をしっかり持ってほしいですね。それに「大事な人」とのデートに遅れたら、大変なことになるかもしれません。寝坊しても起こしてくれる「伴侶」を早く得ることが、再発防止の決め手でしょう…。そうなんです。同期の羽生善治、佐藤康光、森内、丸山忠久、藤井猛らは結婚しましたが、郷田はいまだに独身です。

相手の棋士が遅刻したとき、一方の棋士は「いったい何をしてるんでしょうか」とは『popoo』さんのコメント。遅刻した棋士が「ごめんなさい…はするんでしょうか」とは『友桃』さんのコメント。

相手の棋士が遅刻したとき、一方の棋士はたいがい気息を整えて盤の前で待ちます。ほかの対局を観戦したり、席を一時的に外すこともできます。ただ相手の棋士が来たとき、所在不明だと「遅刻」になりかねません。

どんなケースでも、遅刻した棋士が一方の棋士に謝罪するのは当然の礼儀です。問題なのは、遅刻した棋士が残り時間ぎりぎりで来た場合です。一方の棋士は「不戦勝」と思った矢先なので、心理的にかなり影響を受けます。私も若手棋士時代、相手の棋士が1時間半も遅刻し、何となく落ち着かない気持ちで指していると不利に陥りました。囲碁公式戦では最大1時間の遅刻で不戦敗となります。将棋公式戦もそれに倣うべきだと思います。

今週は10日~11日、静岡・掛川での王将戦(羽生善治王将―久保利明棋王)第3局の立会人を務めています。その勝負の模様は、次回のブログでお伝えします。

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コメント

コメントにお答えいただき、ありがとうございます。
そういえば、対局中に気分転換に他の対局を見に行くことはよくあるそうですね。
将棋会館での対局で中継があるとき「別室で対局中の○○が様子をうかがいに・・・」などというのを目にします。

投稿: popoo | 2010年2月12日 (金) 19時28分

>>郷田はライバル対決を意識しすぎて前夜に眠れず、明け方の4時にやっと寝ついたら深い眠りに入ってしまい、2つの目覚まし時計をかけておいても起きられなかったとのことてす。

これはとてもよく分かります。会社員生活でもあります。とても同情します。

投稿: みつば | 2010年2月26日 (金) 22時36分

このエントリから6年半後の今日、郷田先生がご結婚を発表されましたね。
ひょっとしてこの件で触発されたのでしょうか?…と言う事は無いと思いますが(笑)、おめでたいニュースはなによりですね。

投稿: 悪きゅうり | 2016年9月 1日 (木) 20時42分

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