将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2010年1月18日 (月)

本年最初の対局は「三間飛車」のスペシャリストに新手法で急戦

本年最初の対局は新手法で急戦
先週の1月13日、棋王戦で中田功七段と対局しました。中田七段は師の大山康晴十五世名人の将棋を受け継いで振り飛車一筋です。とくに「三間飛車」のスペシャリストとして知られていて、「コーヤン流」と呼ばれる軽快な駒さばきは定評があります。

現代の振り飛車対策は「居飛車穴熊」が定番の戦法です。しかし私は性に合わず、指したことはほとんどありません。以前は、「左美濃」を得意にしました。近年は、急戦で攻めたり、変形の相振り飛車に持ち込んだりします。これまでの中田戦では、三間飛車に対して急戦で攻めるパターンでしたが、巧みに応戦されてなかなかいまくいかず、かなり負け越しています。

なお、『ケイ』さんのコメントで「ポンポン桂」という戦法が紹介されました。これは私がよく用いる急戦の振り飛車対策で、いろいろと思い入れがある戦法です。具体的な指し方については、いずれブログのテーマに取り上げて解説します。

写真の局面は、先週の中田戦の序盤戦。先手(下側)が田丸、後手(上側)が中田、手番は田丸。私は4筋攻撃と9筋端攻めを併用させる新手法を試みました。

写真の局面で、普通に▲4五歩と仕掛けるのは、△同歩▲3三角成△同銀で攻めきれません。私は▲3五歩△同歩▲2四歩△同歩(△同角は▲4四角で良い)▲9五歩△同歩▲同香△同香▲3四歩と攻めました。9筋で歩を得て、角取りに打つ▲3四歩が狙いの一手。△2二角と逃げれば▲2四飛と進み、次に▲2三飛成が厳しいので先手が香損でも有利になります。

実戦は▲3四歩以下、△9八香成▲3三歩成△同銀▲4五歩△同歩▲2三角△3一飛▲4五角成と進みました。▲2三角では、▲4三角△3一飛▲2一角成△同飛▲3三角成と銀桂を取るのも有力な攻め筋で、次に▲9四桂の王手が生じます。当初はその予定でしたが、気にかかる手があって自重しました。

実戦はその後、一進一退の攻防が繰り広げられ、私は少し有利かと思っていました。しかし決めにいったつもりの手が、いつものように「暴発」になってしまい、本年最初の対局を勝利で飾ることはできませんでした。

写真の局面の陣形を作ってから、3筋・4筋・9筋を併用させる急戦は有力な手法だと思います。興味のある方はいちど試してみてください。

昨年の秋は、2ヵ月以上も対局がない時期がありました。しかし年明けの1月は、この中田戦に続いて、今週20日に竜王戦で土佐浩司七段、来週28日に王将戦で塚田泰明九段と、毎週のように対局があります。

次回は、竜王戦の土佐七段との対局。

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コメント

田丸流左玉というのがあるらしいですね。相振り飛車の戦法でしょうか?
相がかりの右玉みたいなものでしょうか?

居飛車穴熊ばかりの世の中になりましたね

投稿: わいるどる | 2010年1月18日 (月) 12時18分

これは面白い指し方ですね。対三間飛車の急戦では加藤流の三歩切り急戦が有名ですが、振り飛車側が先手ならば、9筋の歩を突き合わないほうが得だとわかってきて、今では容易ではないようですね。9筋を後手居飛車が突きこすと、手が遅れて高美濃▲3七桂型にされるのが気にくわない気がします。本局はそれの工夫策なのでしょうか?急戦は先達の先生方によって枯渇したものだと勝手に思っていましたが、まだまだ将棋には可能性があることを再度思い知らされました。本当にありがとうございます。田丸先生は述べられませんでしたが▲7七角が後の△9八香成を避けて重要な手ですね。

投稿: ケイ | 2010年1月18日 (月) 13時22分

田丸先生、新戦法のご紹介、ありがとうございます。結果は残念でしたが、次こそ勝って、認知される戦法に育ててください。
三間飛車を見て思ったのですが、振り飛車が得意だった真部九段が亡くなって、2年以上が経ちます。青野先生は、「才能がずばぬけていて、目標の存在だった。真部さんと田丸さんと淡路さんと私で順位戦でお互いに刺激を受けながら、A級まで昇級昇段していったのがいい思い出」と述べられていました。田丸先生は、(真部先生に)どのような感想をお持ちですか。
ブログの題材のネタが尽きたときは、とりあげていただければ有り難く存じます。

投稿: ソフトバンクファン | 2010年1月18日 (月) 14時43分

自分がテレビ将棋を見始めた頃、田丸先生をよく見てました。解説者が「攻めの田丸」と言っていて、カッコイいなと思った記憶があります。最近、また将棋を始めて、田丸先生や加藤先生が頑張っておられるようで、嬉しいです。活躍を期待してます。

投稿: ほたる | 2010年1月20日 (水) 22時56分

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