1月5日は東西の将棋会館で恒例の「指し初め式」
謹賀新年。本年も、このブログのご愛読をお願いします。新年に初めて行うことを「○○初め」「初○○」といいます。将棋の場合は「指し初め」です。
毎年1月5日、東西の将棋会館で恒例の「指し初め式」が行われます。東京ではそれに先立ち、11時から会館の向かい側の鳩森神社の将棋堂で「祈願祭」が行われ、神主が祝詞をあげて将棋界の発展を祈願します。境内に建造された将棋堂には駒形の碑が安置されていて、「家内安全」「祈 上達」などと書かれた絵馬が外側にかけられています。
余談ですが、1996年に棋士・羽生善治と女優・畠田理恵がこの鳩森神社で挙式しました。また、かつての人気ドラマ『ロングバケーション』で山口智子がキムタクに贈ったという守り札も、ここで発行されています。
祈願祭が終わると会館に移動し、1組の盤駒が中央に鎮座している対局室で、11時30分から指し初め式が始まります。出席者の顔触れは棋士、棋戦担当記者、観戦記者、棋士の知人など、主に将棋連盟の関係者。鳩森神社の神主、子ども将棋教室の会員が参加することもあります。
まず連盟会長(米長邦雄永世棋聖)が年賀の挨拶を述べます。そして出席者全員が1人1手ずつ、リレー形式で指し継いでいきます。指す順番、組合せ、上座下座など、とくに決まりはありません。盤の近くにいる人から順繰りに盤の前に座ります。したがって、タイトル保持者とその棋戦の担当記者、ベテラン棋士と小学生、女流棋士と神主など、普段は絶対にない対局光景が時に現れます。また、プロがアマに上座を譲ったりします。
出席者は、それぞれの思いを自分の1手に託します。アマの中には、責任感を感じて考え込んだり、緊張のあまりポカを指す人もいます。そんなときはベテラン棋士が「気楽に指しましょう」「その手は待ったですね」と声をかけ、一同の笑いを誘って和やかな雰囲気にします。
大阪の指し初め式では数面の盤が置かれ、出席者は「鶯の谷渡り」のように対局席を移しては何手も指します。いずれにしても出席者は多くて数十人なので、全員が指しても局面は中盤までしか進みません。切りの良いところでお開きにします。指し初め式では勝負をつけない決まりになっているのです。その後、別室に設けられた宴席で祝杯をあげます。
このように将棋界の指し初め式は、厳かな儀式というよりも、仲間内の懇親会という雰囲気です。いつも厳しい勝負に明け暮れているので、正月ぐらいは勝負を忘れて楽しく過ごそう、という長年の慣習によるものです。
なお1980年代のころ、東京の会館の最寄り駅である総武線・千駄ヶ谷駅の広場に大盤を水平に設置し、だれでも自由に参加できる指し初め式イベントが行われました。
次回は、最近のコメントへの返事。
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